ARR(Annual Recurring Revenue)とは?MRRと同様にSaaSビジネスで重要な指標についてご紹介

コラム          
       
       
     

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

最近、SaaSビジネスを展開するスタートアップ、ベンチャーに転職したいという方からの相談が特に増えています。

ARRはSaaS企業への転職やサブスクリプションビジネスの導入を考えている方は、理解しておくべき指標です。この記事ではARRの持つ意味や算出・計算方法、上場企業のARRの例をご紹介します。

ARRとは?

ARR(Annual Recurring Revenue)とは年間経常収益のこと

ARRとは「Annual Recurring Revenue」の略であり、日本語で直訳すると「年次 繰り返し 収益」となります。

つまり毎年決まって得られる収益のことであり、日本語では「年間定額収益」または「年間経常収益」と呼ばれることが多いですね。

一般的にSaaSビジネスで用いられることが多く、ARRの推移を把握することでビジネスの成長性を確認することができます。

同様の指標で、月間の定額収益を表す、MRR(Monthly Recurring Revenue)があります。MRRについては、こちらの記事で紹介しています。

MRRとは?サブスクリプションビジネスにおいて欠かせない指標とその計算式について徹底解説!

医療におけるARRと関係はない

医療の世界で、絶対リスク減少率(absolute risk reduction)がARRと略されることがあります。これは治療薬と偽薬(プラセボ)においてリスクがどれほど減少されるかを算出する数値です。そのため、ビジネスにおけるARRとは関係のない指標となります。

今回の記事ではビジネスで多用される(Annual Recurring Revenue)についてご紹介します。

ARRの計算・算出方法

ARRはMRR、つまり月間計上収益を×12することで算出することができます。

MRRは一般的に下記の4つに分類されます。

・新規契約 MRR(新規顧客から得られるMRR)
・アップグレード MRR(前月からプランを拡大した顧客から得られるMRR)
・ダウングレード MRR(前月からプランを縮小した損失分のMRR)
・解約 MRR(その月に解約した顧客から発生した損失分のMRR)

上記4つのもとに、MRRは以下の計算式で算出します。

MRR=「前月のMRR + 新規契約 MRR + アップグレード MRR – ダウングレード MRR – 解約 MRR」

SaaSビジネスでどのように用いられ、計算しているのか

SaaSのようなサブスクリプションビジネスにおいては、ARR(MRR)は最も基本的かつ重要なKPI となっています。サブスクリプションビジネスの特徴は、毎月定額で収益が上がることですから、もちろん重要ですよね。

みなさんもよく利用しているであろうサービスで例えると、Netflixなどの定額制動画視聴サービスを想像するとわかりやすいのではないでしょうか。

新規契約MRR, 解約 MRRはわかりやすいですよね。新しく登録や解約があれば、そのまま反映されます。

アップグレード MRR, ダウングレード MRRについては、Netflixに新しく登録する際に利用するユーザー数、画質などで、いくつかのプランに分かれていたことを覚えていますでしょうか。このプランをアップグレード、またはダウングレードした登録者、解約した登録者をもとにARR(MRR)は計算されます。

これらを足し引きすることで、年間あるいは月間で上げられる収益が分かりますよね。

新規契約MRR+アップグレードMRR>解約MRR+ダウングレードMRR

つまり「MRRの増加がMRRの減少よりも大きく」なった状態をネガティブチャーンといい、売上を拡大できていることになります。

非常にシンプルな指標なのですが、このように、ARR(MRR)はビジネスの成長性を示しており、企業価値評価のベースとなっています。

上場企業におけるARRランキングTOP10

未上場企業の場合、ARRやMRR、チャーンレート、ダウンセルが公開されているケースは少ないので、上場企業におけるARRランキングをまとめてみました。

企業名 IR資料 ARR 時価総額(*)
サイボウズ 2020年12月期第1四半期 152.2億円(*) 1709.4億円
Sansan 2020年5月期 第3四半期 135.0億円(*) 1340.5億円
ラクス 2020年3月期通期 100.7億円 1620.1億円
インフォマート 2020年12月期第1四半期 87.2億円(*) 1896.4億円
ユーザベース 2020年12月期第1四半期 86.4億円(*) 706.2億円
マネーフォワード 2020年11月期第1四半期 78.7億円 1415.7億円
freee 2020年6月期第2四半期 70.5億円 2297.7億円
オロ 2020年12月期第1四半期 50.4億円(*) 427.1億円
エス・エム・エス 2020年3月期通期 48.9億円 2000.0億円
HENNGE 2020年9月期第2四半期 35.7億円(*) 727.9億円

(*時価総額は2020年7月2日終値ベースの数値)
(*四半期決算を参考にしたものは、四半期RR×4もしくはMRR×12で算出、季節要因などで変動あり)

各企業、全社での数値となっているので、時価総額と比例しているわけではありません。ご注意くださいませ。

他にも、例えばLTV/CACが3を超えているか、といった基準もサブスクリプションビジネスでは重要になります。各種数値や指標については、それぞれ以下の記事でご紹介していますので、ぜひご覧くださいませ。

ユニットエコノミクスとは?SaaSビジネスを理解する上で重要な用語/計算式を徹底解説!

CAC(Customer Acquisition Cost)とは?重要なマーケティング用語を徹底解説!

ARPU(Average Revenue Per User)とは?SaaSビジネスの業績を正しく把握するために徹底解説!

 

NRRとは?SaaS/サブスクリプションビジネスを理解する上で欠かせない用語を徹底解説

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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