この記事の要点:CHRO(最高人事責任者)は人事部長の延長ではなく、事業戦略から逆算して組織を設計する経営者。採用は組織が50人を超える前後が目安。年収目安は現金800万〜2500万円+ストックオプション。
「人事責任者を採用したい」という相談は増え続けています。ですが断言します。「採用ができる人」を探している限り、CHRO採用は失敗します。キープレイヤーズ代表の高野秀敏です。CHROの役割、採用のタイミング、年収相場を企業側・個人側の両方に向けて解説します。
結論:CHROと人事部長は別の職業
- 人事部長:採用・労務・制度運用を回す実行の責任者
- CHRO:事業戦略から逆算し、どんな組織と人材ポートフォリオが必要かを設計する経営者
採用人数を追うのが人事部長、事業が勝つ組織を逆算するのがCHRO。この一線を越えられるかがすべてです。
CHRO(最高人事責任者)とは
CHRO(Chief Human Resource Officer)とは、人と組織の最高責任者です。採用だけでなく、組織設計、評価・報酬制度、カルチャー、幹部の育成と後継者計画までを担います。スタートアップでは、組織が急拡大する局面で「人が増えたのに生産性が下がる」問題を防ぐ役割が求められます。
【企業向け】CHRO採用のタイミングとポイント
目安は組織が50人を超える前後です。この規模を超えると、社長が全員を見るのが物理的に不可能になり、評価やカルチャーが崩れ始めます。採用のポイントは3つ。
- 事業を語れる人を採る:人事施策を事業の言葉で説明できるか
- 経営会議に入れる権限を渡す:人事が後工程になると機能しない
- 社長と価値観が合うかを見る:カルチャーの最終責任者は社長、CHROはその具現化役
実在のCHROに学ぶキャリア【実例】
「人事一本ではなく、事業側の経験が効く」ことを最も体現しているのが、サイバーエージェントの曽山哲人氏(常務執行役員CHO)です。
- 1998年に伊勢丹に入社し、紳士服販売とECサイト立ち上げを経験
- 1999年、社員約20名のサイバーエージェントにインターネット広告の営業として入社
- その後営業部門の統括を担当
- 2005年、人事本部の立ち上げに伴い人事本部長に就任
- 2008年から取締役を6年、その後執行役員を経て、2020年より常務執行役員CHO
注目すべきは、曽山氏は人事からキャリアを始めていないことです。販売と広告営業で現場を知り、営業部門を統括するマネジメントを経てから、人事のトップになっています。
事業を知っているから、人事施策を事業の言葉で語れる。これがCHROの本質です。拜擢を軸にした同社の人事制度が機能するのも、事業現場の感覚を持った人が設計しているからだと思います。
今人事にいる方にとってもこの道筋は示唆的です。人事の専門性を深めるだけでなく、事業の数字と現場を理解することが、CHROへの距離を縮めます。
(役職はサイバーエージェント公式ページにもとづき2026年7月時点)
もう一人、対照的なキャリアを歩んでいるのが木下達夫氏(パナソニック ホールディングス 執行役員 グループCHRO)です。
- 1996年 P&Gジャパンに入社し、採用・HRBPを経験
- 2001年より日本GEで金融部門人事部長、アジア太平洋地域の組織人材開発責任者、事業部人事責任者などを歴任
- 2018年 メルカリに執行役員CHROとして参画(急拡大するスタートアップの組織づくり)
- 2024年 パナソニックホールディングスに入社し、グループCHROに就任
木下氏は人事一本でキャリアを積み上げたプロフェッショナル型です。しかも外資→スタートアップ→日本の大企業と、規模もカルチャーも全く違う環境を横断しています。
この2人を並べると、CHROの本質が見えてきます。曽山氏は事業側から、木下氏は人事専門から。入り口は正反対です。
つまりCHROになるための正しい経歴は存在しません。共通するのは、どちらも人事を制度の運用ではなく事業を勝たせる手段として扱っていることです。人事出身なら事業の数字を、事業出身なら人と組織の原理を。足りない側を埋めにいった人がCHROになっています。
(木下氏の経歴は日経BP・電波新聞等の報道にもとづき2026年7月時点)
さらにもう3つ目の入り口を示しているのが、マネーフォワードの石原千亜希氏(取締役執行役員 グループCHO / DEI担当)です。
- 2012年 有限責任監査法人トーマツに入所、2015年に会計士登録
- 2016年 マネーフォワードに入社し、IPO準備等に携わる
- 上場後は経営企画部長・IR責任者として、海外公募増資、東証一部への市場変更、サステナビリティプロジェクトの立ち上げに従事
- 2021年 人事に主務を移し、People Forward本部長として人事制度改定プロジェクト等を主導
- 2023年 CHOに就任
石原氏は会計士→IPO準備→経営企画・IR→人事トップという、財務・経営企画を軋にしたキャリアです。
3人から見えるCHROへの3つの道
- 事業・営業から:曽山氏(サイバーエージェント)
- 人事専門から:木下氏(パナソニックHD)
- 財務・経営企画から:石原氏(マネーフォワード)
入り口はバラバラ。でも到達点は同じです。三人に共通するのは、経営の言葉(数字・事業・投資家)を話せることです。だから人事施策がコストではなく投資として経営会議を通ります。
もし今人事以外の職種にいてCHROを目指したいなら、その経験はハンディではなく武器です。逆に人事一本の方は、事業と数字を語れるようになることが最短距離になります。
(役職はマネーフォワード公式ページにもとづき2026年7月時点)
【最新】CTOがCHROになる時代が来た
2026年、さらに象徴的な人事がありました。メルカリの木村俊也氏が、CTO(最高技術責任者)からCHRO(最高人事責任者)兼CAIO(最高AI責任者)に就任したのです(2026年6月1日付、CTO職は7月に後任へ引継)。
- 2007年 ミクシィに入社し、レコメンデーションエンジンやデータ活用に従事
- 2017年 メルカリへ。AI研究開発組織R4Dの設立を担当
- その後AIと検索エンジン領域のエンジニア組織を立ち上げDirectorを務める
- 2022年以降 プラットフォーム開発やCTO職を歴任
- 2026年6月 CHRO兼CAIOに就任
この人事の狙いは明快です。メルカリはHR for an AI-Native Companyを掲げ、働き方・意思決定と承認プロセス・組織構造・リソース配分をAI前提で再設計する方針を示しています。つまりAI戦略と人事戦略を一体で設計するために、技術トップを人事トップに置いたということです。
これはCHROという職の定義が変わる前兆だと思います。人事の専門性だけでなく、AIで業務と組織をどう再設計するかが問われる時代に入りつつあります。人事にいる方は、AIをツールの導入ではなく組織設計の前提として語れるかが、今後の分かれ目になります。
(2026年6月発表の報道にもとづく)
【個人向け】CHROになるには
人事一本でのキャリアだけでは、CHROには届きにくいのが現実です。強いのは事業側の経験を持つ人。営業や事業開発を経て人事に転じた人、コンサルで組織変革を手がけた人などです。今人事にいるなら、事業計画と予算を読めるようになることが第一歩です。
自分は狙えるのか、今何を経験すべきか。ここは一人で考えても答えが出にくい部分です。市場でどう見られているかを知るだけでも、次の一手が変わります。キャリアの壁打ちもお気軽にどうぞ。
CHROの年収相場(目安)
- シード〜シリーズA:現金年収 800万〜1400万円+SO
- シリーズB〜C:1200万〜2000万円+SO
- レイター〜上場:1800万〜2500万円超+SO
当社の支援実績にもとづく目安です。他のCxOの年収はCxO年収相場まとめをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
CHROと人事部長の違いは?
人事部長は採用や労務を回す実行の責任者、CHROは事業戦略から逆算して組織を設計する経営者です。
CHROはいつ採用すべき?
組織が50人を超える前後が目安です。社長が全員を見れなくなり、評価やカルチャーが崩れ始めるタイミングです。
人事経験がないとCHROにはなれない?
そんなことはありません。営業や事業開発を経てCHROになる人も多く、事業を理解していることがむしろ強みになります。
まとめ:CHROは人事の専門家ではなく経営者
採用ができる人ではなく、事業から組織を逆算できる人。これがCHRO採用・転職の唯一の基準です。
キープレイヤーズはスタートアップのCHRO・人事責任者の採用支援と転職支援の両方を手がけています。お気軽にご相談ください。