この記事の要点:CMO(最高マーケティング責任者)は広告を回す人ではなく、売れる仕組みを作る人。BtoBとBtoCで必要な型が全く違います。年収目安は現金900万〜2800万円+ストックオプション。
CMO採用の相談で最も多い失敗が、「有名なマーケターを採ったのに数字が動かない」です。キープレイヤーズ代表の高野秀敏です。原因は能力ではなく、型のミスマッチにあります。
結論:CMOは広告の人ではない
- 広告運用の人:施策を回してCPAを改善する実行者
- CMO:価格・プロダクト・チャネルまで含めて売れる仕組みを設計する経営者
施策を回すのがマーケター、事業の勝ち筋を設計するのがCMO。
CMO(最高マーケティング責任者)とは
CMO(Chief Marketing Officer)とは、マーケティング戦略の最高責任者です。広告運用だけでなく、ブランド、プロダクトマーケティング、価格戦略、販売チャネルの設計までを担い、事業の売上に直接責任を持ちます。
BtoBとBtoCで必要なCMOは全く違う
- BtoB SaaS型:リード獲得から商談・受注までを数字でつなぎ、営業と一体で動かせる人
- BtoC型:ブランドとUXを含めて市場を作り、LTVを伸ばす人
この2つを取り違えると、どんなに優秀な人を採っても成果は出ません。自社がどちらかを先に言語化してください。
著名CMOのキャリアに学ぶ【実例】
日本を代表するCMOの経歴を見ると、共通するパターンと意外な共通点が見えてきます。
足立光氏(ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター兼CMO)
- 1990年 一橋大学商学部を卒業し、P&Gジャパンのマーケティング部に入社
- ブーズ・アレン・ハミルトン、ローランドベルガーでコンサルを経験
- シュワルツコフヘンケル代表取締役社長を務める
- 日本マクドナルドCMOとしてV字回復を牽引
- ナイアンティックアジア太平洋プロダクトマーケティングシニアディレクターを経て現職
音部大輔氏(クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役)
- 日米P&Gで17年間、ブランドマネジャー・マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、パンパース等を担当
- 帰国後はダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などでマーケティング担当副社長やCMOを歴任
- 2018年に独立し、ブランド構築とマーケティング組織支援の専門会社を設立
- パーセプションフロー・モデルの考案者として知られる
山代真啟氏(GrowthCamp 代表/元メルカリマーケティング責任者)
- 2007年 P&G Japanに入社し、マーケティング本部でパンパースやパンテーンのブランドマネジャーを務める
- 2017年 メルカリに入社。マス広告からデジタルまで、IPOまでのマーケティング全般を統括
- 2018年からメルペイのグロース責任者として事業立ち上げに従事
- 2020年 GrowthCampを創業し、スタートアップのグロース支援を行う
3人に共通するのはP&G。でもそれは前の時代の話です
足立氏、音部氏、山代氏。三人ともP&G出身です。これは偶然ではありません。
かつてはCMO採用といえば、とにかくP&G出身者が求められました。理由ははっきりしています。
- 地頭が良く、リーダーシップがある
- ブランドマネジメントのメソッドを体系的に持っている
- テレビを中心とした獲得マーケティングに強い
マス広告で一気に認知を取り、ブランドを立ち上げる。これが勝ち筋だった時代には、P&Gの型を持つ人が圧倒的に強かったのです。山代氏がメルカリのIPOまでをマス広告からデジタルまで統括したのは、まさにその代表例です。
オフライン獲得チャネルを使いこなせるかも問われてきた
もう一つ、この時代のCMOに求められたのがテレビ以外のオフライン獲得チャネルを使いこなす力です。スタートアップの現場では、特に次のチャネルが重視されてきました。
- タクシー広告:経営層・決裁者に届くためBtoB SaaSとの相性が抜群。一気に認知を取る定番手法に
- ポスティング:エリアを絞って篤く打てる。地域密着サービスやBtoCではCPAが合うケースも多い
- アドトラック:話題性を作り、SNSでの拡散とセットで効かせる
- 交通広告・屋外広告:採用広告としても機能する
これらはいくら使ってどれだけ戻ったかを見にくいのが難しさです。デジタル広告のようにクリック単位で追えないため、指名検索の伸びや流入の変化から効果を推し量る設計力が必要になります。ここを回せるかどうかが、CMOの実力差が出るポイントでした。
この力は今も有効です。特にタクシー広告はBtoB SaaSの定番手法として定着しています。ただしオフラインを回せるだけでは、やはり不十分になってきました。
しかし今、求められるものが変わっています
現代のCMOには、よりAI力が必要になってきています。
AI検索の普及で検索流入は減り、順位を取るからAIに引用されるへとルールが変わりました。さらに広告運用そのものがAIによる自動最適化へ移行し、人間が手で回す領域は確実に狭まっています。
つまり、これからのCMOには従来の力に加えて次が問われます。
- AIを前提にマーケティング組織と業務を再設計できるか
- AIに選ばれる情報設計(LLMO・GEO)を描けるか
- データとAIで顧客体験そのものを変えられるか
テレビで認知を取る力だけでは、もう差別化できません。逆に言えば、P&G出身でなくても、デジタルやAI領域で事業を伸ばした実績があればCMO候補になれる時代です。出身企業ではなく、今の市場のルールで成果を出せるかで選ぶべきです。
時代が変わっても変わらない共通点
どちらもP&G出身です。日本のCMO人材にはP&Gやユニリーバなどの外資消費財(FMCG)出身が非常に多いのが特徴です。ブランドマネジメントの型を体系的に学べる環境があるからです。
ただしもっと重要な共通点は、二人とも広告運用の専門家としてではなく、事業を再生・拡大させる立場で評価されてきたことです。足立氏は社長経験を持ち、音部氏はマーケティング担当副社長として経営に関与しています。
つまりCMOはマーケティングの上がりポジションではなく、経営の一角です。目指す方は、施策の実績だけでなくP/Lを動かした経験を作ってください。
(経歴は各種公開情報にもとづき2026年7月時点)
【企業向け】CMO採用のポイント
CMOは業務委託・顧問から始めやすいポジションです。週敥1〜2で戦略を見てもらい、成果と相性を確かめてからフルタイム化する形が現実的です。また、プロダクトや価格に口を出せる権限を渡さないと、CMOは広告担当になってしまいます。
自社に合うCMOの型が分からないというご相談は非常に多いです。キープレイヤーズでは、ビジネスモデルとフェーズを伺った上でどんな型のCMOを探すべきかの壁打ちから対応しています。採用にお困りの経営者はお気軽にご相談ください。
【個人向け】CMOになるには
広告運用の実績だけではCMOにはなれません。問われるのはP/Lを読めることと、価格・プロダクトに踏み込んだ経験。今マーケターなら、CPAだけでなくLTVと粗利を語れるようになることが第一歩です。
【2026年の最新動向】AI検索がCMOの仕事を変えている
今、CMOの職域で最も大きな変化が起きているのがAI検索への対応です。ChatGPTやGoogleのAI回答の普及で、ユーザーはリンクを探すのではなくAIから答えを受け取る行動に変わりました。
これにより、検索エンジン経由のサイト流入は最大27%前後減少するとも予測されています(いわゆるゼロクリック検索)。従来のSEOだけでは集客を維持できなくなりつつあります。
CMOに求められる新しい視点
- 検索順位ではなくAIに選ばれる情報設計(LLMO・GEOと呼ばれる領域)
- 流入数ではなく流入の質とコンバージョンへの評価軸の移行
- 信頼性と一次情報:AIに引用されるのは独自のデータや実例を持つコンテンツ
- 構造化データなどAIが理解しやすい形式での情報提供
つまりCMOの仕事は、広告をどう出すかから、自社の知見をどうAIに引用させるかへと拡張しています。広告予算を回すだけの人では、この変化に対応できません。
採用する企業側は、CMO候補にAI検索に対してどんな打ち手を考えますかと聞いてみてください。この一問で、従来型かアップデートされているかがはっきり分かります。マーケターの方は、この領域の実績を作れば希少価値が一気に上がるタイミングです。
(各種市場報道・予測にもとづき2026年7月時点)
自分はCMOを狙えるのか、今何を経験すべきか。ここは一人で考えても答えが出にくい部分です。市場でどう見られているかを知るだけでも次の一手が変わります。キャリアの壁打ちもお気軽にご相談ください。
CMOの年収相場(目安)
- シード〜シリーズA:現金年収 900万〜1500万円+SO
- シリーズB〜C:1300万〜2200万円+SO
- レイター〜上場:1800万〜2800万円超+SO
当社の支援実績にもとづく目安です。他のCxOの年収はCxO年収相場まとめをご覧ください。
よくある質問(FAQ)
CMOとマーケティング部長の違いは?
部長は施策を回す実行者、CMOは価格やプロダクトを含めて売れる仕組みを設計し、売上に責任を持つ経営者です。
BtoBとBtoCでCMOは違いますか?
全く違います。BtoBは営業と連動したリード設計、BtoCはブランドとLTV設計が中心で、取り違えると成果が出ません。
CMOは業務委託でもいい?
はい。週敥1〜2の顧問から始め、成果と相性を確かめてからフルタイム化するのが現実的です。
まとめ:CMO採用は型の見極めがすべて
有名なマーケターを探すのではなく、自社のビジネスモデルに合う型を探す。これがCMO採用成功の唯一の鍵です。
キープレイヤーズはスタートアップのCMO・マーケティング責任者の採用支援と転職支援の両方を手がけています。お気軽にご相談ください。