トラベルテック(TravelTech・観光DX)業界転職完全ガイド【2026年最新】市場規模・企業別年収相場・職種別スキル・未経験からのなり方・キャリアパスを高野秀敏が徹底解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、7社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。165社上場支援実績あり。バングラデシュで不動産会社、商業銀行の設立からの株主、渋谷のバーのオーナーなど。

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職を約25年サポートしているキープレイヤーズの高野です。

今回は、日本でいま最も分かりやすく伸びている産業のひとつ、「トラベルテック(TravelTech/観光DX)業界」への転職ガイドをまとめました。

この記事はもともと、訪日外国人旅行者向け観光プラットフォーム「WAmazing」を運営するWAmazing株式会社と、代表取締役CEOの加藤史子さんを紹介する記事でした。加藤さんは慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、1998年にリクルートへ入社。「じゃらんnet」などネットの新規事業立ち上げを担当し、じゃらんリサーチセンターでスノーレジャー再興に取り組んだのち、2016年7月にWAmazingを創業された方です。空港での無料SIM配布を入口に、宿泊・交通・アクティビティ・免税ショッピングまでを一気通貫でつなぐという発想は、当時としてはかなり尖っていました。

その後、業界の景色は大きく変わりました。WAmazing自身も、2025年8月1日にチェンジホールディングス(東証プライム・3962)と組んで新会社「株式会社Onwords(オンワーズ)」を設立し、「地域観光DX事業」と「訪日マーケティングパートナー事業」の2事業を同社へ譲渡しています。Onwordsの代表取締役社長には成澤豪さんが就任し、加藤さんは取締役副社長として参画。単独のスタートアップが全部を抱える時代から、大手の資本・地方創生ネットワークと組んで観光DXをスケールさせる時代へ移ったことを象徴する動きだと私は見ています。

そこで本記事は、1社の紹介ではなくトラベルテック業界全体の転職ガイドとして全面的に書き直しました。市場環境、8カテゴリーの全体像、企業タイプ別の年収、職種別のスキル、未経験からの参入ルート、年代別戦略、失敗パターンとFAQまで、まとめて解説します。

目次

トラベルテックとは — 「旅マエ・旅ナカ・旅アト」をソフトウェアで作り直す領域

トラベルテック(TravelTech)は、Travel × Technologyの略で、旅行・観光・宿泊・交通・体験にまつわる予約、決済、送客、施設オペレーション、地域マーケティングを、SaaS・AI・データでつくり直すプロダクト群の総称です。「観光DX」「宿泊DX」「インバウンドDX」もほぼ同義で使われます。

面接の場で「観光業界に興味があります」と言われたとき、実際には8つ近いまったく違うカテゴリーのどれかを指しています。OTA(オンライン旅行代理店)で働くのと、ホテル向けSaaSのカスタマーサクセスをやるのとでは、必要なスキルも年収レンジもキャリアの伸び方も別物です。まずは全体像を掴んでください。

なお、鉄道・バス・タクシーといった移動そのものの領域はモビリティテック(MaaS・自動運転・EV)業界の転職ガイド、宿泊施設の不動産開発・運用側は不動産テック(PropTech)業界の転職ガイド、飲食店のオペレーションDXはリテールテック(RetailTech)業界の転職ガイドで詳しく扱っています。本記事は「旅行者の体験を軸にした事業」が対象です。

2026年のトラベルテック市場環境 — 数字がはっきり味方している珍しい業界

転職先の業界を選ぶとき、私はいつも「追い風が数字で確認できるか」を見ます。トラベルテックは、この点でいま最も分かりやすい業界のひとつです。

指標 数値 出典・注記
2025年の訪日外客数 約4,268万人(前年比15.8%増・過去最高) 日本政府観光局(JNTO)推計値。2024年の約3,687万人を約580万人上回る
2025年の訪日外国人旅行消費額 約9.5兆円(過去最高) 観光庁 速報値。2012年の1.1兆円から13年で約8.6倍
訪日客1人あたり旅行支出 約22.9万円 宿泊・飲食・交通のサービス費が約7割。「モノ消費→コト消費」への構造転換
政府目標(2030年) 訪日客6,000万人・消費額15兆円・単価25万円 第5次「観光立国推進基本計画」(2026年3月27日 閣議決定)で据え置き継続
観光の経済波及効果 約19兆円規模 第5次観光立国推進基本計画 概要より
世界の旅行テクノロジー市場 2026年時点で約121億ドル → 2035年 約233億ドル 海外調査会社の推計。調査機関により定義・数値に幅がある点は要注意

ここで大事なのは、政府目標が「人数」だけでなく「単価」に踏み込んだことです。4,268万人が6,000万人になるだけなら、現場は人手不足で先に潰れます。だから第5次計画では、高付加価値化と観光DX、そして深刻な人材不足への対応が明確に課題として挙げられました。「人を増やさずに売上と単価を上げる」——これはそのままトラベルテックの事業テーマです。政策が業界の追い風になっている、というより、政策が業界の事業計画書になっているような状態です。

一方で率直に申し上げると、この業界は外部環境に振られやすいという弱点があります。感染症、為替、国際情勢、災害——コロナ禍でこの業界の会社が何を経験したかは、みなさんもご記憶のとおりです。第5次計画がわざわざ「リスクに対する強靱性の確保」を掲げているのは、その反省があるからです。伸びている業界ですが、ノーリスクではありません。この点は後述の失敗パターンでも触れます。

トラベルテック業界の8カテゴリーと主要プレイヤー

私が現場で見ている限り、トラベルテックは大きく次の8領域に分かれます。

カテゴリー 主なプレイヤー 顧客 市場フェーズ
①OTA・旅行予約プラットフォーム 令和トラベル(NEWT)、楽天トラベル、リクルート(じゃらん)、エアトリ、HIS・JTBのオンライン部隊 個人旅行者(C向け) 再編・海外旅行回復フェーズ
②宿泊施設向けSaaS(PMS・予約エンジン) tripla(東証グロース・5136)、TableCheck、ダイナテック、手間いらず ホテル・旅館 成長中(人手不足で導入加速)
③インバウンド・訪日特化 WAmazing、Onwords(チェンジHD系)、Payke、Kotozna 訪日客・小売・自治体 急拡大(過去最高更新中)
④体験・アクティビティ予約 アソビュー、そとあそび、ベルトラ レジャー施設・体験事業者 成長中(コト消費シフトの本命)
⑤観光地域DX・DMO支援 Onwords、ナビタイムジャパン、ジョルダン、地域商社系 自治体・DMO・観光協会 政策連動(補助金依存に注意)
⑥送迎・二次交通 NearMe、WILLER、各社シャトル事業 旅行者・空港・宿泊施設 実証→収益化の移行期
⑦次世代宿泊・住まいの再定義 NOT A HOTEL、Unito、address、住箱系 富裕層・多拠点生活者 高付加価値化の最先端
⑧決済・免税・多言語オペレーション 免税SaaS各社、多言語接客ツール、Kotozna、翻訳AI各社 小売・宿泊・飲食 制度変更で需要変動(要ウォッチ)

ポイント:①④⑦は「旅行者に直接届くC向けプロダクト」、②⑤⑧は「事業者に売るB向けSaaS」です。この2つは求められる人材像がまるで違います。C向けはグロース・CRM・ブランドの感覚、B向けは業務理解と導入支援の泥臭さ。どちらを目指すかを先に決めてから活動してください。

①OTA・旅行予約プラットフォーム — 海外旅行の回復と「アプリ化」の競争

この領域でいま最も注目度が高いのは、2021年4月創業の令和トラベルです。代表の篠塚孝哉さんは、2013年に高級宿泊予約「Relux」をロコパートナーズで立ち上げ、2017年にKDDIグループへ売却したという実績を持つシリアルアントレプレナー。令和トラベルは2022年6月に海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」をローンチし、2024年9月にはシリーズAで約48億円を調達しています。海外旅行という、コロナ禍で最も打撃を受けた領域に、あえてソフトウェアで殴り込んだ格好です。

この領域で評価されるのは、「旅行商品の在庫と価格の複雑さ」を理解したうえでプロダクトを作れる人です。航空券とホテルを組み合わせた瞬間、仕入れ・為替・キャンセル規定・法令(旅行業法)が絡んできます。ここを甘く見たエンジニアやPdMは、必ずどこかで詰まります。

②宿泊施設向けSaaS — 上場企業も出てきた、B向けの本命

tripla(トリプラ)は、宿泊施設向けのAIチャットボットと予約エンジンから始まり、2022年11月に東証グロース市場へ上場しました。トラベルテックのB向けSaaSで上場企業が出たことは、この領域の意味を変えたと思っています。「観光=低収益」というイメージが強かったところに、SaaSのビジネスモデルが成立することを証明したからです。

ホテル・旅館は、いま構造的に人が採れません。フロント、予約管理、レベニューマネジメント、清掃手配——ここを1人あたりの生産性で解くしかない状況です。だからこの領域のSaaSは、景気に関係なく売れます。私が転職相談を受けるときに「安定して伸びるところがいい」と言われたら、まずこのカテゴリーを勧めます。

③インバウンド・訪日特化 — 単独スタートアップから「大手との合弁」へ

冒頭で触れたWAmazingとOnwordsの動きが、この領域の現在地をよく表しています。WAmazingは訪日客向けに、空港での無料SIM配布を入口として、宿泊(WAmazing Stay)、スノーアクティビティ(WAmazing Snow)、免税ショッピング(WAmazing Shop)、交通チケット(WAmazing Transport)などを提供し、年間アプリユーザー500万人規模まで広げてきました。資金調達も、2022年12月のシリーズC 1stクローズ約3.7億円、2023年12月の約14億円などを重ね、累計で約45億円規模に達しています。

そのうえで、行政支援ノウハウや購買・行動データを扱う2事業をチェンジホールディングスとの新会社Onwordsに移した。「B向け・自治体向けの事業は、地方創生のネットワークを持つ上場企業と組んだほうが速い」という判断です。転職者目線で言えば、この領域は「独立系スタートアップ」と「大手系の合弁・子会社」の2つの働き方が併存するようになった、ということです。前者はストックオプションを含めたアップサイド、後者は安定と資本力。どちらが自分に合うかを考えてください。ストックオプションの評価方法はストックオプション(SO)完全ガイドで詳しく解説しています。

④体験・アクティビティ予約 — 「コト消費」シフトの直撃を受ける本命領域

アソビューは、レジャー予約「アソビュー!」とアウトドア体験予約「そとあそび」を運営し、累計調達額は約88億円規模。代表の山野智久さんはリクルート出身で、観光・レジャー産業向けのバーティカルSaaSによるDX推進を掲げています。2026年2月にはGlobalTixとの提携でインバウンド送客を強化するなど、国内レジャー×訪日客の掛け算に動いています。

先ほどの統計を思い出してください。訪日客1人あたり支出22.9万円のうち約7割がサービス費で、「買い物中心」から「滞在・体験型」へ明確にシフトしています。この構造変化を最も直接的に取りにいっているのがこのカテゴリーです。

⑥⑦送迎・次世代宿泊 — 高付加価値化のフロンティア

NearMe(ニアミー)は、AIによる相乗り最適化で空港送迎などのドアツードア移動を提供しています。二次交通(空港・駅から目的地までの移動)は、地方への旅行者分散を進めるうえで日本観光最大のボトルネックのひとつで、政策的にも注目されている領域です。

NOT A HOTELは、別荘とホテルの中間を再定義するプロダクトで、「1人あたり単価25万円」という政府目標のさらに上を狙う高付加価値の象徴的存在です。この領域は不動産・建築の知見が効くため、施工管理・建設DX(ConTech)転職ガイドで扱う領域とも人材が行き来します。

企業タイプ別 × キャリアレベル別の年収レンジ

「観光業界は給料が安い」という先入観を持っている方が多いのですが、トラベルテックは「観光業界」ではなく「観光に売るIT業界」です。年収の水準はSaaS業界に近くなります。私が実際に見ているレンジは次のとおりです。

企業タイプ ジュニア(〜3年) ミドル(3〜8年) マネージャー・リード
上場トラベルテックSaaS(tripla等) 400〜550万円 550〜800万円 800〜1,200万円
大型調達済みスタートアップ(令和トラベル・アソビュー等) 420〜580万円 600〜900万円 900〜1,400万円+SO
シード〜シリーズAの観光スタートアップ 350〜500万円 500〜700万円 700〜1,100万円+SO厚め
大手系合弁・子会社(Onwords等) 400〜550万円 550〜800万円 800〜1,100万円
大手旅行会社・鉄道系のDX部門 400〜520万円 550〜750万円 800〜1,100万円

※各社の求人票、私が支援した実際のオファー、公開情報をもとにした2026年7月時点の目安です。ストックオプションは含みません。

正直に申し上げると、同じスキルなら、金融向けSaaSやAI企業のほうが年収は高く出ます。トラベルテックは顧客(ホテル・自治体・観光事業者)の支払い能力に上限があるため、単価が跳ねにくい。ここを分かったうえで入るかどうかが分かれ目です。詳しい年収の考え方は年収・手取りガイドベンチャー企業の年収相場を併せてご覧ください。

職種別 — 仕事内容・必要スキル・年収相場

職種 この業界での主な仕事 必要スキル 年収相場
プロダクトマネージャー(PdM) 予約導線・在庫連携・多言語対応の設計 旅行商品の在庫/料金構造の理解、多言語UX 700〜1,300万円
バックエンドエンジニア 予約エンジン、GDS/サプライヤーAPI連携 Go/Java/Ruby、決済・在庫の整合性設計 550〜1,100万円
フロントエンド/モバイル 予約アプリ、多言語UI、オフライン対応 React/Next.js、Swift/Kotlin、i18n 500〜1,000万円
データアナリスト/DS 需要予測、レベニューマネジメント、送客分析 SQL、Python、価格弾力性の理解 550〜1,100万円
フィールドセールス/AE ホテル・旅館・自治体への導入提案 業務理解、現場の稟議プロセス把握 500〜1,000万円(インセンティブ込)
カスタマーサクセス 導入後の運用定着、稼働率・単価改善の伴走 宿泊/レジャーの現場オペ理解 450〜850万円
マーケター/グロース 訪日客の獲得、多言語SEO、越境広告 多言語マーケ、LTV/CAC設計 500〜1,000万円
事業開発(BizDev) 航空・鉄道・自治体・OTAとのアライアンス 交渉力、旅行業法・約款の基礎知識 600〜1,200万円
地域プロデューサー/DMO支援 自治体案件の企画・商品造成・受入環境整備 行政調整、補助金スキームの理解 450〜850万円
多言語CS・翻訳スペシャリスト 訪日客サポート、多言語コンテンツ運用 中国語/英語/韓国語+CS実務 380〜700万円
CxO(COO・CFO・CMO) 資金調達、上場準備、事業ポートフォリオ再編 経営経験、M&A/資本提携の実務 1,000〜2,000万円+SO

職種ごとの詳細は、プロダクトマネージャー(PdM/PM)転職完全ガイドバックエンドエンジニア転職完全ガイドデータアナリスト転職完全ガイドカスタマーサクセス転職完全ガイド事業開発(BizDev)転職完全ガイドもご覧ください。CxOポジションを狙う方はCXO転職ガイドが参考になります。

未経験からトラベルテックに入る5つのルート

この業界の面白いところは、「旅行が好き」ではなく「旅行業界の現場を知っている」ことが最大の武器になる点です。ホテルのフロント、旅行代理店のカウンター、航空会社の地上職、レジャー施設の運営——こうした経験は、SaaS側に回った瞬間に希少価値に変わります。

ルート 元の職種 入りやすいポジション 必要な準備
①現場出身ルート ホテル・旅館・旅行会社・航空・レジャー施設 カスタマーサクセス、フィールドセールス、地域プロデューサー 自分が回していた業務のKPI・工数を数字で語れるようにする
②SaaS横スライドルート 他業界のSaaS営業・CS・PdM AE、CS、PdM 宿泊・レジャーの業界構造を3社分ヒアリングして理解する
③エンジニアルート Web系開発 バックエンド、モバイル、SRE 決済・在庫の整合性、多言語対応の設計経験を棚卸し
④語学・海外経験ルート 商社、海外駐在、留学、翻訳 多言語CS、越境マーケ、海外アライアンス 語学+ビジネススキルの掛け算にする(語学単体では弱い)
⑤公共・地域ルート 自治体職員、地銀、地域商社、コンサル DMO支援、地域プロデューサー、公共向けBizDev 補助金・観光施策の知識を強みとして言語化する

なお、⑤の入口として戦略・総合コンサル出身の方も増えています。観光庁や自治体の観光施策案件を手がけた経験があると、DMO支援やBizDevで即戦力になります。ポストコンサルのキャリア選択肢全体はコンサルからの転職 完全ガイドに整理しました。

とくに①は強いです。私が支援した中でも、旅館の予約担当をされていた30代の方が宿泊SaaSのカスタマーサクセスに移り、2年でチームリーダーになったケースがあります。「レベニューマネジメントの何が難しいか」を体で知っている人は、資料を作らせても、顧客と話させても、まったく説得力が違いました。異業種からの転職の考え方は異業界・異業種転職完全ガイドも参考にしてください。

実際にあった転職事例 — 現場出身者はこう強い

守秘義務の範囲で、私が実際に支援した/近くで見てきたケースを3つ紹介します。

事例1:旅館の予約担当(30代前半)→ 宿泊SaaSのカスタマーサクセス

地方の旅館で予約管理とレベニューマネジメントを担当していた方です。ITの実務経験はゼロ。それでも宿泊施設向けSaaSに採用されました。理由は明快で、「繁忙期に予約を止める判断をどうやっていたか」を数字で語れたからです。導入先の旅館が何に困っているかを、資料を読まなくても分かる。入社2年でチームリーダーになり、年収は420万円から580万円になりました。

事例2:SaaS営業(20代後半)→ 観光系スタートアップの事業開発

人材系SaaSで法人営業をしていた方が、観光領域のスタートアップにBizDevとして移ったケースです。この方は選考前に、実際に3つの宿泊施設と1つの自治体観光課にアポを取って話を聞きに行っていました。面接でその内容を話したところ、その場で「うちの営業資料を書き直してほしい」と言われたそうです。年収は横ばいでしたが、ストックオプションと事業責任者ポジションを得ています。

事例3:大手旅行会社の法人営業(40代)→ 大手系合弁会社の事業責任者

大手旅行会社で自治体・企業向けの法人営業を15年やってきた方です。40代でスタートアップへというご相談でしたが、私からお勧めしたのは大手資本が入った合弁会社でした。行政の稟議プロセスと観光施策の知識、そして地方自治体の人脈がそのまま資産になる場所だったからです。年収は780万円から900万円に上がりました。40代でこの上がり方をするのは、業界知識が希少だからです。

3つに共通しているのは、「旅行が好き」ではなく「旅行業界の何が難しいかを知っている」ことが評価された点です。ここを言語化できるかどうかが、この業界の転職の勝負どころだと思ってください。

トラベルテックに向いている人・向いていない人

向いている人 向いていない人
現場のオペレーションを想像しながら仕事ができる プロダクトの画面だけを見て仕事をしたい
外部環境の変動を織り込んで動ける(危機耐性がある) 安定した右肩上がりの環境しか経験したくない
顧客の支払い能力に上限がある前提で、生産性を上げる工夫ができる 単価の高い顧客に大型提案するスタイルしか得意でない
多言語・多文化のユーザーを相手にすることを楽しめる 国内の均質なユーザーだけを想定したい
自治体・行政のスピード感にも付き合える 意思決定が遅い相手にストレスを強く感じる
「旅が好き」を動機の中心に置いていない 好きを仕事にしたい気持ちが先行している

最後の行は誤解されやすいので補足します。旅が好きなことは何も悪くありません。ただ、好きが動機の中心にあると、実際の仕事(顧客のExcelを直す、自治体の稟議を待つ、深夜の障害対応)とのギャップで折れる方が多いのです。面接でも「旅行が好きだから」だけでは、まず通りません。

年代別のトラベルテック転職戦略

20代 — 現場経験を「業界知識」に変換する絶好期

ホテルや旅行会社にいる20代の方は、いま動くと非常に有利です。業界のオペレーションを知っていて、かつテックへの学習コストが低い。私が見ている限り、この掛け算が最も評価されるのが20代です。逆に、いきなりPdMを狙うのは無理があります。まずはCSやセールスで入り、プロダクトに近づく順番が現実的です。20代のベンチャー転職完全ガイドも併せてどうぞ。

30代 — 「業界 × 職能」の掛け算で単価を上げる

30代は、業界知識と職能の両方を持っている人が最も強い年代です。「宿泊業界を知っているPdM」「観光領域のデータ分析ができる人」は、そもそも母数が少ない。ここで一気にポジションを上げられます。30代からのベンチャー転職完全ガイドを参考に、自分の掛け算を整理してください。

40代 — 経営・アライアンス・地域ネットワークで勝負

40代は、実務プレイヤーとしてよりも、事業責任者・アライアンス責任者としての採用が増えます。航空・鉄道・自治体・大手旅行会社とのネットワークを持っている方は、それ自体が資産です。40代のベンチャー・スタートアップ転職ガイドもご覧ください。

50代以降 — 顧問・社外役員・地域プロデューサーという選択肢

50代の方は、常勤ポジションだけを探すと選択肢が狭まります。この業界は自治体・DMOとの案件が多く、行政や大手企業での経験がそのまま効くため、顧問・アドバイザー・地域プロデューサーという形で関わる道が現実的です。50代のベンチャー・スタートアップ転職完全ガイドで詳しく解説しています。年代別の全体像は年齢別転職ガイドにまとめました。

トラベルテック転職でよくある失敗パターン7選

  1. 「旅行が好き」を志望動機の中心に置いてしまう — 事業課題を語れないと、ほぼ確実に落ちます。
  2. 外部環境リスクを見ないで入る — 感染症・為替・国際情勢で一気に景色が変わる業界です。会社のキャッシュランウェイは必ず確認してください。
  3. 補助金依存のビジネスモデルを見抜けない — 自治体向け事業は、政策が変われば売上が消えることがあります。売上に占める補助金・公共案件の比率は面接で聞くべきです。
  4. インバウンド一本足の会社に、分散なしで飛び込む — 訪日客は特定国の情勢に左右されます。国内需要とのバランスを見てください。
  5. C向けの華やかさだけでOTAを志望する — 実際の仕事は仕入れ・在庫・キャンセル規定という地味な世界です。
  6. 年収を他業界SaaSと同水準で期待してしまう — 顧客の支払い能力に上限がある構造を理解しないと、オファーの段階で揉めます。
  7. 企業の資本構成の変化を確認しない — WAmazingとOnwordsの例のように、事業譲渡や資本提携で組織が動きます。入社前に直近2年の資本・組織変更を調べてください。

失敗の一般論はベンチャー転職の失敗・後悔ガイドベンチャー転職が失敗に終わる人の共通点にまとめています。企業の見極め方はベンチャー企業の選び方・見極め方が実務的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 旅行業界の経験がなくてもトラベルテックに転職できますか?

できます。とくにエンジニア、データ、SaaS営業の経験者は歓迎されます。ただし「宿泊施設の1日のオペレーションを説明できるか」は面接で見られます。事前に知り合いのホテル勤務者に1時間話を聞くだけでも、面接の解像度がまるで変わります。

Q2. 旅行業務取扱管理者の資格は必要ですか?

OTAや旅行商品を自社で組成する会社では評価されますが、SaaS側では必須ではありません。資格より、旅行業法上「何ができて何ができないか」を理解しているかのほうが重要です。

Q3. 英語や中国語はどのくらい必要ですか?

インバウンド特化企業や多言語CSでは実務レベルが求められます。一方、宿泊SaaSの国内営業では不要です。語学単体を武器にすると単価が上がりにくいので、語学+職能の掛け算にしてください。

Q4. コロナ禍のようなことがまた起きたら、この業界は危険では?

正直に言えば、リスクはあります。ただ、コロナ禍を生き延びた会社は、事業ポートフォリオを分散させ、キャッシュ管理を厳格にしました。「あの時期に何をして、どう耐えたか」を面接で聞いてください。その答えの質が、その会社の経営力そのものです。

Q5. 年収は下がりますか?

大手旅行会社・航空会社から移る場合は、一時的に横ばいか微減になることがあります。一方で、SaaS側はストックオプションや昇給スピードでの回収余地があります。スタートアップ転職で年収は下がる?で構造的に整理しています。

Q6. インバウンドと国内旅行、どちらに強い会社を選ぶべきですか?

両方の収益源を持っている会社が理想です。訪日客4,268万人という数字は魅力的ですが、単一市場依存は必ずリスクになります。売上構成比を必ず確認してください。

Q7. 転職エージェントはどう使えばいいですか?

トラベルテックは求人数が多い領域ではないため、大手総合型だけでは案件が出てきません。業界の経営者と直接つながっているエージェントを併用してください。選び方は転職エージェントの選び方 完全ガイドにまとめています。面接準備はベンチャー転職の面接対策をどうぞ。

まとめ — トラベルテックは「政策・人手不足・単価向上」の三重の追い風

最後に要点を整理します。

  • 2025年の訪日客は約4,268万人、消費額は約9.5兆円でいずれも過去最高。2030年には6,000万人・15兆円という国の目標が据え置かれた
  • 第5次観光立国推進基本計画(2026年3月27日閣議決定)は、高付加価値化・観光DX・人材不足対応を明確な課題として掲げている。政策がそのまま業界の事業テーマになっている
  • ホテル・旅館は構造的に人が採れない。だから宿泊SaaSは景気に左右されにくく、triplaのような上場企業も生まれた
  • WAmazingとチェンジホールディングスによるOnwords設立(2025年8月)のように、単独スタートアップから大手との合弁へ、業界の勝ち方が変わってきている
  • 一方で外部環境リスクと顧客の支払い能力の上限は現実。年収期待と会社選びは、この2点を織り込んで判断すべきです

私は約25年、ベンチャー・スタートアップの転職支援をしてきました。トラベルテックは「好きだから」で入って苦労する人と、「現場を知っているから」で入って一気に伸びる人の差がはっきり出る業界です。ホテル、旅行会社、航空、レジャー施設——どこの出身でも、現場を知っているというだけで価値があります。逆に、旅行への憧れだけで入ると、必ずどこかでギャップに当たります。

キープレイヤーズでは、トラベルテック領域のスタートアップから上場企業まで、経営陣と直接つながったうえでのご紹介が可能です。「観光の現場から事業側に回りたい」「SaaSの経験を観光領域で活かしたい」「CxOポジションを狙いたい」——どんな段階でも構いませんので、キープレイヤーズへご相談ください。私自身が壁打ち相手になります。ベンチャー転職の全体像はベンチャー転職 完全ガイド、企業側の採用の話はスタートアップ採用ガイドもあわせてご覧ください。

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