コンサルか、スタートアップか、起業か。3択で迷う方へ【2026年最新】

コンサルか、スタートアップか、起業か
執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。

「コンサルに行くか、スタートアップに行くか、それとも自分で始めるか」

この3択で止まっている方から、本当によくご相談をいただきます。優秀な方ほど3つとも選べてしまうので、かえって決まらない。私自身、この相談を年に何十件と受けています。

この記事を書くにあたって、先に立場を明かしておきます。私は3つとも当事者です。コンサルティングファーム出身の方の転職を数多く支援してきましたし、コンサルティングファームの顧問も務めています。スタートアップへの人材紹介が本業で、そして2005年に自分でキープレイヤーズを創業し、いまはエンジェル投資家としてスタートアップに出資もしています。

どれか1つを推すつもりはありません。代わりに、3つの選択肢を公的なデータと開示資料の数字で並べます。そのうえで、私が相談を受けるときに必ず聞いていることを書きます。

この記事でわかること

  • 3つの選択肢を、年収・リスク・時間軸で並べた比較
  • コンサル業界がいま拡大している事実(市場規模と人員の推移)
  • スタートアップに移ると年収がどう動くか
  • 起業の廃業率と、その中身(黒字で辞める人が半数という事実)
  • 順番を間違えると取り返しがつきにくいこと
  • 私が相談で必ず聞く3つの質問
目次

まず、3つを数字で並べます

感覚で語る前に、それぞれの選択肢が持つ性質を整理します。

項目 コンサル スタートアップ 起業
初年度の年収 高い。学部卒新卒でも580万円台の例がある フェーズによる。アーリーなら前職から2〜4割下がることも ほぼゼロからのスタート
収入の安定性 高い。職位で決まる 中。会社が続く限りは出る 低い。入金まで半年かかることも
身につくもの 構造化、資料化、業界横断の知見 実行力、事業の当事者性 すべて。ただし体系的ではない
上振れの大きさ 限定的(人月モデルの天井がある) ストックオプション次第 青天井。ただし確率は低い
やり直しやすさ 高い。市場価値が保たれる 中〜高。経験が評価される 低くはない。ただしブランクの説明は要る
意思決定の速さ 組織の承認が必要 速い 自分次第

ここで注目していただきたいのは「上振れの大きさ」の行です。コンサルの年収には構造的な天井があります。売上が「単価 × 稼働時間」で決まる人月モデルだからです。どれだけ優秀でも、自分の時間以上には売れません。

この天井に気づいたときが、多くの方にとって考え始めるタイミングになっています。

コンサルという選択:市場は拡大しています

まず事実から。コンサルティング業界は、いま歴史的な拡大局面にあります。

指標 数値
国内コンサル市場規模(2024年度) 2兆3,422億円(前年比+17%)
アクセンチュア日本法人の社員数(2015年) 約6,000人
同(2021年) 約18,000人
同(2024年) 約25,000人

1社で10年足らずのうちに4倍以上です。これは、入る側から見れば「入り口が広がった」ということです。10年前より確実に入りやすくなっています。

年収も高い水準です。有価証券報告書で公開されている数字では、ベイカレントが平均1,331.1万円(平均年齢31.3歳)、野村総合研究所が1,332.6万円(平均年齢39.7歳)でした。詳しくはコンサルタントの年収は本当に高いのかにまとめています。

ただし、拡大には裏側があります。人が増えれば、1人あたりの希少性は下がります。「コンサル出身」という肩書きの意味も、10年前とは変わりました。20年前、この業界に入ることは今よりずっとリスクのある選択でした。いまは新卒の人気就職先です。母集団が変われば、その肩書きが市場に与える印象も変わります。

スタートアップという選択:年収は下がります

正直に書きます。コンサルからスタートアップに移る場合、現金の年収は下がることが多いです。

移り先のフェーズ 現金年収の傾向 代わりに得るもの
シード・アーリー 2〜4割下がることが多い ストックオプション、経営の当事者性、圧倒的な裁量
シリーズB〜C 同等〜やや下 事業責任者ポジション、組織を作る経験
レイター・上場前後 同等〜上がることも 執行役員クラスの職位、上場実務の経験

ストックオプションをどう見るかは、慎重に考えてください。私は「無かったものとして生活設計を立て、あれば嬉しいもの」と考えることをおすすめしています。上場する保証はありませんし、上場しても行使できるまでには時間がかかります。この考え方は年収・報酬・ストックオプションのまとめに詳しく書きました。

それでも移る方が多い理由を、私は毎回聞いています。最も多い答えはこれです。

「提案するところまでではなく、やり切るところまでを引き受けたい」

この動機がある方は、年収が下がっても後悔しにくい。逆に「なんとなく成長したい」「スタートアップのほうが面白そう」という動機だと、1年目の給与差でしんどくなることが多いです。

スタートアップ転職の全体像はベンチャー転職 完全ガイドに、幹部ポジションはCxO転職ガイドにまとめています。

起業という選択:廃業のデータを正しく読む

ここが、最も誤解されている領域です。中小企業庁「2025年版中小企業白書」の数字を並べます。

指標 数値 出典
開業率(2023年度) 3.9% 厚生労働省「雇用保険事業年報」
廃業率(2023年度) 3.9% 同上
倒産件数(2024年) 10,006件 中小企業白書
休廃業・解散件数(2024年) 約7万件 帝国データバンク定義による集計
休廃業・解散のうち黒字だった割合(2024年) 51.1% 中小企業白書

最後の行を見てください。会社をたたんだ人の半数以上は、黒字の状態で辞めています。

倒産(10,006件)と休廃業・解散(約7万件)はまったく別物です。「起業の9割は失敗する」という言い方をよく聞きますが、統計が示しているのはそういう話ではありません。やめた会社の多くは、後継者がいない、経営者が高齢になった、他にやりたいことができた、といった理由で畳んでいます。

もちろん、これは中小企業全体の数字であって、スタートアップだけの数字ではありません。ただ、「起業=失敗して借金を背負う」というイメージは、データとはかなり距離があります。

実務的な話も書いておきます。私が経営している人材紹介業を例にすると、有料職業紹介事業の許可には財産的基礎の要件があり、事業所1か所なら基準資産額500万円以上、自己名義の現預金150万円以上が必要です(厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」)。業種によってこうした要件は違いますので、始める前に必ず確認してください。

順番の話:ここが一番大事です

3択と書きましたが、実際には「どれか1つ」ではありません。多くの方が、最終的には複数を経験します。問題は順番です。

順番 成立しやすさ 理由
コンサル → スタートアップ → 起業 最も一般的 型を身につけ、実行を覚え、当事者になる
コンサル → 起業 成立する ただし「自分の時間を売る」形の事業になりやすい
スタートアップ → コンサル 成立する 事業側の経験は評価される
起業 → コンサル・スタートアップ 成立する やり切った経験は強い。中途半端だと説明が難しい
新卒 → いきなり起業 難易度が高い 顧客も資金も人脈もない状態から始まる

私が最も伝えたいのは、2行目です。コンサルから直接起業する方は多いのですが、選ぶ事業がコンサルティング会社や専門人材のマッチングになりやすい傾向があります。

これは悪いことではありません。実際、その形で立派に成長している会社はいくつもあります。ただ、それは「独立」であって、多くの人がイメージする「起業」とは少し違うかもしれません。売っているものが自分と仲間の時間である以上、コンサルにいたときと構造は同じだからです。

そこを自覚して選んでいるかどうかが、5年後の満足度を分けている印象があります。

迷っている方の多くが誤解していること

相談を受けていて、繰り返し出てくる誤解が3つあります。

誤解1:スタートアップに行けば経営が学べる

ポジションによります。事業責任者やCxOとして入るなら学べますが、一メンバーとして入った場合、大企業の一部署にいるのと大きくは変わりません。むしろリソースが少ないぶん、担当領域だけを回して終わることもあります。

入る前に「意思決定の場に入れるのか」を確認してください。役員会に出られるのか、事業計画を作る側なのか。ここを聞かずに入ると、期待とずれます。

誤解2:起業はいつでもできる

できます。ただし、条件は年々変わります。体力、家族の状況、住宅ローン、子どもの学費。40代で始める方も普通にいますが、選べる選択肢の幅は確実に変わります。

「いつかやりたい」と言い続けて10年経った方を、私は何人も見ています。逆に「3年後にやる」と期限を切った方は、だいたい実行しています。

誤解3:全部を経験してから決めればいい

時間には限りがあります。コンサルで3年、スタートアップで3年、そこから起業だと30代半ばです。それ自体は悪くありませんが、「経験を積んでから」と言っているうちに、ただ時間が過ぎることがあります。

経験は、決めるために積むものです。決めないために積むものではありません。

決める前に、小さく試せます

3択を「今すぐどれか選ぶ」と考えるから決まらないのだと思います。実際には、決める前に確かめる方法があります。

試し方 分かること 始めやすさ
スタートアップで副業・業務委託 その環境で自分が力を出せるか。組織の空気 高い。週1日から可能な案件がある
顧問・アドバイザーとして関わる 経営者の意思決定の現場が見える 中。実績が必要
個人で受注してみる 自分の看板で仕事が取れるか 高い。起業の予行演習になる
エンジェル投資・出資 事業を数字で見る目が養われる 資金が必要

3つめは、起業を考えている方に特におすすめしています。会社の看板を外して、自分の名前だけで1件でも受注できるか。これができれば、独立後も食べていける可能性が高い。できなければ、何が足りないのかが分かります。辞めてから気づくより、在職中に気づくほうが圧倒的に安全です。

1つめのスタートアップでの副業も、この数年で一気に増えました。週1日、あるいは月数十時間から関われる案件があります。入社してから「思っていたのと違った」となるより、先に中を見ておくほうが確実です。

スタートアップを選ぶときに見るべき数字

スタートアップに移ると決めた場合、次は「どの会社か」です。ここで見るべきものを挙げます。

確認すること なぜ重要か
直近の資金調達額と時期 いつまで走れるかが決まる。2年以上前の調達なら状況を確認する
調達の種類(株式か融資か) 融資は返済がある。人件費に使いにくい
資金使途に採用が明記されているか 採用と書いていない会社は、いま人を増やす局面ではない
募集ポジションの構成 1人目の財務経理、管理部長候補が出ていれば上場を意識している
投資家の顔ぶれ 次の調達につながるか。事業会社CVCなら提携の可能性

資金使途は、プレスリリースを読めば書いてあります。「組織体制の強化」「採用の加速」と明記している会社は、実際に人を採ります。一方、資金使途にプロダクト開発しか書いていない会社は、いま人を増やす局面ではないという判断がはっきり出ているということです。

私は毎週、資金調達をした企業を全件確認しています。求人票と資金使途を突き合わせると、その会社が本当は何をしようとしているかが見えてきます。この読み方は、転職する側にとって非常に有効です。

私が相談で必ず聞く3つの質問

3択で迷っている方には、いつも同じことを聞いています。

  1. あなたが解きたい課題は、何ですか。会社の看板を外しても残るものかどうか。ここが明確な方は、答えがだいたい自分で出ます
  2. 売るものは、自分の時間ですか。それとも、自分がいなくても売れるものですか。これは事業の型の話です。前者を選ぶなら、コンサルでも独立でも構造は同じです
  3. 最初のお客さんは誰になりますか。前職の人脈以外に、思い浮かびますか。ここが答えられない起業は、たいてい前職の延長になります

この3つに答えられれば、3択は自然に絞られます。逆に答えられないうちは、どれを選んでも同じ悩みが残ります。

年齢によって、選び方は変わります

年代 取れるリスク おすすめの考え方
20代 大きい 迷ったら振れ幅の大きいほうへ。失敗しても市場価値は下がらない
30代前半 まだ大きい スタートアップに移るなら最も動きやすい時期。幹部候補として入れる
30代後半 中程度 職位と裁量を取りにいく。年収を落とすなら回収の道筋を確認する
40代 限定的 自分の専門領域から離れない。起業するなら既存の人脈が資産になる領域で

20代の方には、いつも「振れ幅の大きいほうを選んでください」とお伝えしています。この年代で多少うまくいかなくても、市場価値はほとんど下がりません。むしろ「やってみた」という事実のほうが、後々効いてきます。

年代別のキャリアの考え方は年代別キャリアのまとめもご覧ください。

それぞれの選択の「出口」

入ることばかり考えて、出口を考えない方が多いです。どの選択肢にも次があります。

今いる場所 次の選択肢
コンサル 事業会社の経営企画・DX、スタートアップ幹部、PEファンド、独立
スタートアップ 別のスタートアップの上位ポジション、事業会社、起業、投資家
起業 M&Aによる売却、上場、事業会社への参画(アクハイヤー)、続ける

起業の出口として、売却は現実的な選択肢です。私はM&Aの相談も受けていますが、数億円規模での事業譲渡は珍しくありません。上場だけがゴールではありません。

ポストコンサルの選択肢はポストコンサルのまとめにまとめています。

よくある質問

Q. コンサルとスタートアップ、どちらが市場価値が上がりますか

目的によります。汎用的な型(構造化、資料化、プロジェクト運営)を身につけるならコンサル、事業を作る当事者としての経験ならスタートアップです。転職市場では、コンサル出身は「実行できるのか」を、スタートアップ出身は「再現性があるのか」を必ず聞かれます。それぞれ逆の弱点を見られていると思ってください。

Q. 起業に失敗したら、その後どうなりますか

やり切った経験があれば、転職市場ではむしろ評価されます。私が見ている限り、問題になるのは失敗そのものではなく、何を学んだかを説明できないケースです。なお統計上、休廃業・解散した企業の51.1%は黒字の状態で辞めています(2024年、中小企業白書)。会社をたたむこと自体は、必ずしも失敗を意味しません。

Q. 年収を下げてまでスタートアップに行く価値はありますか

「やり切るところまで引き受けたい」という動機があるなら、あります。単に環境を変えたいだけなら、下がった分がそのまま不満になります。ストックオプションは無かったものとして生活設計を立ててください。

Q. コンサルは今後も安泰ですか

市場は拡大しています(2024年度で2兆3,422億円、前年比+17%)。ただし人員も急拡大しており、1人あたりの希少性は下がっています。AIによって作業部分が置き換わるのも確実です。残るのは判断の部分だと考えています。

Q. 何歳まで起業できますか

年齢の制限はありません。ただし取れるリスクの大きさは変わります。40代以降で始めるなら、自分の専門領域と人脈がそのまま資産になる事業を選ぶのが現実的です。

Q. 3つとも迷っています。どう決めればいいですか

この記事に書いた3つの質問に答えてみてください。「解きたい課題は何か」「売るものは自分の時間か」「最初の顧客は誰か」。この3つが埋まると、選択肢は自然に絞られます。埋まらないうちは、どれを選んでも同じ悩みが残ります。

まとめ:決めるために、経験してください

3つの選択肢に優劣はありません。データで見れば、コンサルは市場が拡大していて年収も高い。スタートアップは年収が下がる代わりに当事者性が得られる。起業は不確実だけれど、統計が示すほど悲惨なものでもない。

どれを選んでも、間違いにはなりません。間違いになるのは、決めないまま時間が過ぎることだけです。

私は2005年に自分で会社を作りました。振り返って思うのは、やってみないと分からないことが、想像よりずっと多かったということです。迷っている時間で得られる情報より、動いてから得られる情報のほうが圧倒的に多い。だから私は、迷っている方には「小さく試せる方法はありませんか」と聞くようにしています。

キープレイヤーズでは、この3択のご相談を数多くお受けしています。転職支援だけでなく、起業のご相談、資金調達やM&Aのご相談も承っています。どれか1つを勧めるためではなく、あなたの状況に合わせて率直にお話しします。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

また、スタートアップのキャリアや起業について継続的に情報交換したい方は、オンラインサロンもご用意しています。同じ悩みを持つ方が多く参加されています。

データ出典:中小企業庁「2025年版中小企業白書」(開業率・廃業率は厚生労働省「雇用保険事業年報」、休廃業・解散件数は帝国データバンクの定義による集計)、各社有価証券報告書、コダワリ・ビジネス・コンサルティング「コンサル市場規模調査2025年版」、厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」。アクセンチュア日本法人の人員数は各種報道による。年収レンジは筆者の観測範囲であり、企業が公表した数値ではありません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

目次