カウンターオファー(退職の引き止め)は受けるべき?完全ガイド【2026年最新】引き止め経験53.7%・条件提示なし45%・残留11.9%のデータ、受けて後悔する5パターン、受けてもいい3条件、断り方の例文まで高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップ・CxO転職の支援をしているキープレイヤーズの高野秀敏です。27年、経営者・CxO・幹部人材の転職を1,000人以上、面接前後で伴走してきました。

「退職を伝えたら、昇給と昇進を提示されました。残るべきでしょうか」——内定が出て、退職を切り出した後にこの連絡が来ることは、私の仕事では月に何度もあります。これがカウンターオファー(counter offer)、退職を申し出た社員に対して会社が昇給・昇進・異動などの条件を提示して引き止めることです。

結論から言うと、私は9割のケースで「受けない」ことを勧めます。ただし残り1割には、受けたほうがいいケースが確かにあります。この記事は「引き止めは全部断れ」という精神論ではなく、日本の調査データと私が実際に見てきた事例から、受けて後悔するパターン、受けてもいい条件、そして受ける場合・断る場合の具体的な進め方を整理したものです。

退職交渉全体の流れはベンチャー転職の退職交渉完全ガイド、切り出し方は退職の伝え方、転職で後悔しないための全体像はベンチャー転職 失敗・後悔ガイドもあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • カウンターオファーとは何か、引き止めとの違い、日本で提示される条件の実態
  • 引き止められた人53.7%・条件提示なしの口頭のみ45.0%・残留した人11.9%(doda調査)、企業側の65%が実施・成功率20%以下が61%(エン・ジャパン調査)というデータ
  • 企業がカウンターオファーを出す本当の理由(「優秀だから」72%の裏側)
  • 受けて後悔する5つのパターンと、受けてもいい3つの条件
  • 大手からベンチャーへの転職で起きる「年収差が縮まる引き止め」への考え方
  • 受ける場合・断る場合の進め方7ステップ、断り方の例文、内定先への対応
  • メリット・デメリット、向いている人・向いていない人、年代別の判断軸、FAQ 10問
目次

カウンターオファーとは——「引き止め」と何が違うのか

カウンターオファーは、もともと「相手の提示に対する対案」という意味の言葉で、転職の文脈では退職を申し出た社員に対して、現在の会社が昇給・昇進・異動・働き方の変更などの条件を提示して残留を促すことを指します。単に「考え直してくれ」「今辞められると困る」と説得するのは「引き止め」で、具体的な条件が付くとカウンターオファーになります。

実際に提示される条件は、多い順に次のようなものです。

提示される条件 典型例 実現の確度
他部署への異動 「希望していた企画部門に来期から異動させる」 比較的高い(人事権の範囲内)
昇給 「転職先と同じ年収にする」「来期の昇給で+50万円」 中(予算と人事制度の制約あり。「来期」は要注意)
昇進・役職 「課長にする」「次の組織改編で部長候補に」 低〜中(ポストの空きが必要。口約束になりやすい)
業務内容・ミッションの見直し 「新規事業を任せる」「嫌がっていた顧客担当を外す」
働き方・雇用形態の変更 「リモート可にする」「残業を減らす」 中(上司が変わると戻りやすい)
条件なし(口頭のみ) 「君が必要だ」「もう少し頑張ってみないか」 —(これが最多)

エン・ジャパンが企業775社に行った「カウンターオファー実態調査」では、提示した条件は「他部署への異動」37%、「昇給」21%が上位でした。私の経験でも、大手企業ほど「異動」が中心で「昇給」は制度上難しく、ベンチャーや中小企業ほど「昇給」「役職」が即座に出てきます。

データで見る引き止めの実態——引き止め53.7%、条件提示なし45%、残留11.9%

「引き止められたらどうしよう」と不安な方は、まず数字を見てください。

項目 数値 出典
退職を申し出て引き止められた人 53.7% doda「退職理由・交渉のホンネ調査」(20〜30代の転職者298人、2019年11月)
引き止め時に「条件は変わらず口頭のみ」だった 45.0%
「働き方・雇用形態の変更」を提示された 20.6%
引き止めに応じて残留した人 11.9%(退職した人88.1%)
残留した理由:上司・人事の言葉に心が動いた/提示ポジションに納得 36.8%/21.1%
カウンターオファーを実施したことがある企業 65% エン・ジャパン「カウンターオファー実態調査」(企業775社、2017年)
引き止めの成功率が「20%以下」と答えた企業 61%
引き止めた理由:退職意向の社員が優秀/育てた人材を手放したくない/新規採用が困難 72%/61%/44%
提示した条件:他部署への異動/昇給 37%/21%
職場を辞めようと思っても辞められなかった経験がある人 54.9% Job総研「2025年 退職に関する意識調査」(20〜50代585人、2025年3月)
辞められなかった理由:転職先への不安/一時的な収入減の不安 76.9%/38.6%

この表から読み取れることは3つです。

  • 引き止めは「されるのが普通」。退職者の半数以上が引き止めを経験し、企業の65%が実施している。引き止められたからといって、あなたが特別に評価されているとは限りません。
  • 引き止めの半分近くは条件なしの口頭のみ。「君が必要だ」という言葉だけで、給与も役職も変わらない。心が動くのは当然ですが、条件が変わらなければ不満も変わりません。
  • 実際に残る人は1割強、企業側の成功率も2割以下。つまりカウンターオファーは、企業から見ても「ほぼ失敗する施策」です。それでも出すのは、出さないより安いからです(後述)。

なお、doda調査とエン・ジャパン調査は数年前のものですが、日本で引き止めの実態を数字で示した数少ない調査であり、私の現場感覚では2026年も比率はほとんど変わっていません。変わったのは、Job総研の2025年調査が示すように「退職の心理的ハードルが下がった」と答える人が94.3%に達し、早期離職が「当たり前」(77.8%)になったこと。引き止める側の手札が減り、条件付きのカウンターオファーは以前より出やすくなっています

企業がカウンターオファーを出す本当の理由

「優秀だから引き止める」(72%)は本当です。ただ、それだけではありません。企業側の視点で正直に書きます。

理由1:採用コストのほうが高い

中途採用1人あたりのコストは、人材紹介を使えば年収の30〜35%が相場です(詳細は人材紹介の手数料は本当に何%か)。年収600万円の人を採り直せば約200万円の手数料に加え、募集・面接の工数、入社後の立ち上がり期間の生産性低下がかかります。あなたに+50万円の昇給を提示するほうが、圧倒的に安いのです。

理由2:引き継ぎと欠員の穴を埋める時間稼ぎ

「せめて次の四半期まで」「後任が決まるまで」という引き止めは、あなたのキャリアではなく組織の都合です。条件付きで残留しても、後任が決まった時点で提示条件が曖昧になることがあります。

理由3:上司自身の評価を守るため

部下の退職はマネジャーの評価に響きます。特に「若手の離職率」がKPIになっている会社では、上司が自分のために全力で引き止めます。上司の熱意と、あなたに提示される条件の実現可能性は別物です。

理由4:本当に評価していて、辞めると言われて初めて気づいた

これも一定数あります。日本の会社は、辞めると言うまで正当な評価を給与に反映しないことが珍しくありません。「辞めると言ったら年収が100万円上がった」という話は、私も何度も聞きました。ただしここで考えてほしいのは、辞めると言わなければ上がらなかった会社に、今後も居続けるのかということです。

カウンターオファーを受けて後悔する5つのパターン

私が見てきた「受けて後悔した人」には共通点があります。

パターン1:転職理由が「給与」以外だったのに、給与で残った

最も多い失敗です。転職理由ランキング2026を見ると、転職理由の1位は「給与」(36.6%)ですが、2位「労働時間」、3位「成果で評価されない」、4位「尊敬できる人がいない」と、給与以外の理由が大半を占めます。上司が尊敬できない、評価制度に納得できない、事業の先行きが不安——こうした理由で辞めようとした人が年収+50万円で残っても、不満の原因は1ミリも変わっていません。半年後に同じ理由で再び転職活動を始めることになります。

パターン2:「来期から」「次の改編で」という条件を信じた

昇進・昇給の条件は、その場で書面にならないことがほとんどです。「来期の昇給で反映する」「次の組織改編で部長候補に」と言われて残り、来期になったら「業績が厳しくて」と反故にされる。エン・ジャパン調査で企業側の引き止め成功率が2割以下なのは、企業自身が確約できる条件を持っていないからでもあります。

パターン3:内定先を辞退したことで、市場との接点を失った

カウンターオファーを受けるということは、内定先を辞退するということです。辞退した会社に半年後にもう一度応募するのは現実的に難しく、紹介したエージェントとの関係も損なわれます。「次に動くときは、今回より不利な状況から始まる」と理解しておいてください。内定辞退の作法は内定辞退・内定承諾完全ガイドを参照してください。

パターン4:「一度辞めると言った人」として扱われた

残留した後、上司や経営陣の中で「あの人は一度辞めようとした」という記憶は消えません。重要なプロジェクトや昇進候補から外され、「どうせまた辞める」と見られる。表面上は何も変わらなくても、信頼のリセットが起きています。特に日本の大手企業では、この影響は長く続きます。

パターン5:同僚に「条件で残った人」と見られ、居心地が悪くなった

昇給や役職での引き止めは、周囲に伝わります。同じ仕事をしている同僚から見れば「辞めると脅して給与を上げた人」です。会社にとっても「辞めると言えば上がる」前例を作ったことになり、人事はあなたを「扱いにくい人」として記憶します。

カウンターオファーを受けてもいい3つの条件

では、受けたほうがいいケースはどんな場合か。私は次の3つがすべて揃った場合に限り、残留を勧めます。

条件1:転職理由が「解消可能な1点」に絞られている

「今の部署の仕事内容が合わない」「特定の上司との関係」など、異動で構造的に解消される理由が唯一の転職理由なら、異動を条件とする残留は合理的です。逆に「会社の評価制度」「経営陣への信頼」「事業の将来性」が理由なら、異動や昇給では解消されません。

条件2:提示された条件が書面になり、実施時期が明確

「来期から」ではなく「〇月〇日付で△△部に異動、年収□□万円」と辞令または合意書の形で確定していること。口頭の約束は条件ではなく期待です。書面化を求めて渋られたら、それが答えです。

条件3:転職先が「今の会社より明確に良い」とは言い切れない

正直に言えば、内定先が現職と比べて決定的な優位を持っていない場合もあります。転職活動をして初めて「自分の会社は意外と悪くない」と気づく人もいる。内定先の魅力が「今の会社への不満」だけで成り立っていたなら、残留は間違った選択ではありません。ただしその場合も、一度辞めると言った事実(パターン4)は残ります。

大手からベンチャーへの転職で起きる「年収差が縮まる引き止め」

私の専門であるベンチャー・スタートアップ転職では、特有のカウンターオファーが起きます。大手企業からスタートアップに転職する場合、現金の年収は一時的に下がることが多い。そこに大手側から「今の年収を維持どころか+100万円」という引き止めが来ると、年収差は200万円近くに広がります。

ここで考えてほしいのは、あなたがベンチャーに行こうとした理由は年収だったのかということです。裁量、成長速度、経営に近い経験、ストックオプション、事業を自分の手で作る実感——これらは大手の+100万円では買えません。逆に「年収が同じなら大手のほうがいい」と思うなら、そもそもベンチャー転職は向いていなかったということで、残留は正しい判断です。

私が面談でよく使う判断軸は「5年後の自分の市場価値はどちらが高いか」です。大手で+100万円を受け取って5年過ごすのと、スタートアップで事業責任者の経験を積んで5年後に転職市場に出るのと、どちらの年収レンジが高いか。CxO・幹部人材として評価される経歴は転職市場で評価・スカウトされる人と、されない人で書いた通り、後者に圧倒的に多い。年収の中長期的な考え方は年収・手取りガイドにまとめています。

ベンチャー側から見た「引き止めで辞退された」ときの評価

もう一つ知っておいてほしいのは、内定を出したベンチャー側の視点です。スタートアップは採用に経営者自身の時間を大きく使います。オファーを受諾した後にカウンターオファーで辞退されると、その経営者は「次はもう会わない」と決めることが多い。スタートアップ業界は狭く、経営者同士の情報交換も盛んです。カウンターオファーでの辞退は、業界内での評判に影響することを理解しておいてください。

「現職に残るか、内定先に行くか」は、複数内定で迷うパターンのひとつです。現職を含めた選択肢を7つの軸で点数化して比較する方法は転職で複数の内定が出たらどちらを選ぶ?後悔しない決め方完全ガイドで解説しています。

カウンターオファーのメリット・デメリット

受ける(残留する) 断る(転職する)
メリット ・環境変化のリスクを取らずに条件が改善する
・人間関係・業務知識の蓄積を維持できる
・転職活動をやり直す必要がない
・異動で解消される不満なら、最短で解決する
・転職理由が根本から解消される
・厚労省調査では転職で賃金が増えた人が40.5%と減った人29.4%を上回る
・「一度辞めると言った人」の烙印を避けられる
・内定先・エージェントとの信頼を守れる
デメリット ・条件が口約束で終わるリスク
・給与以外の転職理由は解消されない
・信頼のリセット、昇進候補から外れる可能性
・内定先との関係が断たれ、次の転職が不利になる
・周囲から「条件で残った人」と見られる
・新しい環境への適応コスト
・現職で提示された条件を失う
・入社後ギャップのリスク(転職後の最初の90日参照)
・退職交渉が長引くと精神的に消耗する

受ける・断るの進め方7ステップ

ステップ1:その場で即答しない

カウンターオファーを提示されたら、受けるにせよ断るにせよ「ありがとうございます。一度持ち帰って考えます」と答えます。その場の感情で決めないこと。上司の熱意に押されてその場で「残ります」と言い、翌日後悔する人を何人も見ました。回答期限は2〜3日以内と自分で区切ります。

ステップ2:転職理由を書き出し、提示条件と1対1で照合する

転職を決めた理由を3つまで書き、提示された条件がそれぞれを解消するかを○×で判定します。転職理由ランキング2026の項目に当てはめると整理しやすい。○が全部につかなければ、残留しても同じ不満が続きます。

ステップ3:条件の書面化と実施時期を確認する

受ける可能性があるなら、「その条件を辞令や書面でいただけますか」「実施はいつ付けですか」と聞きます。ここで曖昧になる会社の条件は、信じないでください。

ステップ4:内定先の条件と並べて、5年後の市場価値で比較する

現年収と提示年収だけでなく、5年後にどちらの経歴が転職市場で高く評価されるかで比べます。内定先の条件に不明点があれば、この段階でオファー面談を追加で依頼して構いません(ベンチャー転職のオファー面談・条件交渉完全ガイド)。

ステップ5:断る場合は、感謝+決意+協力の3点で伝える

断る場合の伝え方は次の型が有効です。

「ご提案いただき、本当にありがとうございます。正直に言えば心が動きました。ただ、今回の転職は待遇ではなく〇〇(事業領域/役割/経営に近い経験)を理由に決めたもので、その点は今の環境では実現が難しいと考えています。決意は変わりません。退職日までの引き継ぎには全力で協力しますので、後任や引き継ぎ計画についてご相談させてください。」

ポイントは、条件の良し悪しを議論しないこと。「もっと出せば残るのか」という交渉に入ると、退職交渉が長引きます。「理由は待遇ではない」と言い切ることで、上司も引き止める手段がなくなります。

ステップ6:受ける場合は、内定先とエージェントに誠実に辞退を伝える

残留を決めたなら、内定先には可能な限り早く、電話で直接伝えます。理由は正直に「現職から条件提示があり、熟考の末に残る判断をした」と伝えて構いません。エージェント経由なら、エージェントにも同じ内容を伝える。ここでの誠実さが、将来もう一度動くときの関係を守ります。

ステップ7:どちらを選んでも、決めたら振り返らない

残留した人は「あのとき転職していれば」、転職した人は「あの条件で残っていれば」と考えがちです。決断した後は、その環境で成果を出すことに集中してください。転職後の立ち上がりは転職後の最初の90日 完全ガイドに、残留後の不安が続く場合の考え方は「石の上にも3年」はもう古い?にまとめています。

引き止めが「圧力」に変わったときの対処

カウンターオファーは条件提示なので、断れば終わりです。しかし「退職届を受理しない」「後任が決まるまで辞めさせない」「損害賠償を請求する」といった圧力に変わることがあります。この場合は法的な整理を知っておいてください。

  • 期間の定めのない雇用契約は、退職の申し入れから2週間で終了します(民法627条1項)。会社の承認は不要です。
  • 就業規則に「退職は1ヶ月前に申し出ること」とあっても、民法の規定が優先されるというのが一般的な解釈です。ただし円満退職のためには就業規則の期間を守るのが現実的です。
  • 「損害賠償」は、引き継ぎを合理的に行っていれば認められることはまずありません。
  • 有給休暇の消化を拒否することはできません(退職時の有給消化 完全ガイド)。
  • 退職交渉がどうしても進まない場合の最終手段として退職代行もありますが、幹部・CxO人材が使うと業界内の評判に影響するため、私は最終手段としてしか勧めません。

また、退職時に競業避止義務の誓約書へのサインを求められることがあります。これは引き止めとは別の問題で、判断基準は競業避止義務は転職でどこまで有効?を参照してください。ボーナス支給日との関係で退職日を調整する方法は転職とボーナス完全ガイドにまとめています。

カウンターオファーを受けたほうがいい人・断ったほうがいい人

受けたほうがいい人 断ったほうがいい人
転職理由が「部署・上司・業務内容」など異動で解消される1点に絞られている 転職理由が「評価制度」「経営陣」「事業の将来性」「企業文化」など構造的なもの
提示条件が書面化され、実施日が確定している 提示条件が「来期から」「次の改編で」など口約束
転職活動をして「今の会社は意外と悪くない」と気づいた 転職先で得られる経験・役割が現職では得られない
内定先の魅力が「現職への不満」だけで成り立っていた ベンチャー・スタートアップに「裁量・成長・経営経験」を求めて転職する
家庭の事情などで、今は環境変化のリスクを取れない 「辞めると言わなければ評価されなかった」ことに納得できない

年代別・カウンターオファーの判断軸

20代:残留はほぼ勧めない。「辞めると言えば上がる」を学ばせる会社にいるべきではない

20代は転職で賃金が増えた人が46〜50%と最も高い年代です(厚労省、令和6年雇用動向調査)。カウンターオファーの+30万円より、次の会社で得る経験と市場価値のほうがはるかに大きい。また、20代で「辞めると言えば条件が上がる」体験をすると、その後のキャリアで交渉の仕方が歪みます。

30代:条件と「5年後」で判断。ただしポジション提示は精査する

30代は「課長にする」「新規事業を任せる」というポジション提示が増える年代です。魅力的に見えますが、ポストの空きがなければ実現しません。「いつ付けで、誰の後任として、どの権限で」まで確認できる提示なら検討の価値があります。詳細は30代で大手からベンチャーに転職する方法を参照してください。

40代:受けるなら「役員・事業責任者レベルの書面提示」が最低条件

40代は転職市場での選択肢が絞られる分、カウンターオファーの価値も相対的に上がります。ただし、40代の転職理由は「社内の雰囲気」「尊敬できる人がいない」「先行き不安」が急増しており(doda調査で各+9〜11pt)、これらは昇給では解消されません。受けるなら執行役員・事業責任者級の役割が書面で提示される場合に限ります。

50代:役職定年・早期退職の文脈では、残留条件を冷静に比較する

50代の引き止めは「後任が育つまで」という時間稼ぎの色が強くなります。55歳以上は転職で賃金が減る人が増える年代でもあるため、残留条件が現実的なら受ける合理性はあります。ただし役職定年のタイミングと重なる場合は、提示条件がいつまで有効かを確認してください。年代ごとの戦略は年齢別転職ガイドにまとめています。

カウンターオファーに関するFAQ

Q1. カウンターオファーとは何ですか?

退職を申し出た社員に対して、会社が昇給・昇進・異動・働き方の変更などの条件を提示して残留を促すことです。条件のない説得は「引き止め」、条件付きのものが「カウンターオファー」です。

Q2. カウンターオファーは受けるべきですか?

原則として受けないことを勧めます。dodaの調査では引き止められた人の11.9%しか残留しておらず、企業側も成功率20%以下と答えた企業が61%です。ただし、転職理由が異動で解消される1点に絞られ、条件が書面化され、内定先に決定的な優位がない場合は受ける合理性があります。

Q3. 引き止められる人はどのくらいいますか?

dodaの調査では退職を申し出た人の53.7%が引き止めを経験しています。エン・ジャパンの企業調査では65%の企業がカウンターオファーを実施したことがあると回答しています。引き止められるのは普通のことです。

Q4. 引き止めで年収が上がるのは普通ですか?

珍しくありません。ただし、dodaの調査では引き止めの45.0%が「条件変わらず口頭のみ」で、昇給の提示があるのは一部です。また「辞めると言わなければ上がらなかった」という事実をどう受け止めるかが重要です。

Q5. カウンターオファーを受けて残った人はその後どうなりますか?

転職理由が給与以外だった場合、不満は解消されないため、多くの人が半年〜1年で再び転職を考えます。また「一度辞めると言った人」として昇進候補から外れることや、周囲に「条件で残った」と見られることがあります。

Q6. 内定承諾後にカウンターオファーを受けて辞退してもいいですか?

法的には内定承諾後でも入社前なら辞退は可能です(内定辞退・内定承諾完全ガイド)。ただし内定先と紹介エージェントの信頼を失い、次に動くときに不利になります。特にスタートアップ業界は狭く、評判が伝わることを理解しておいてください。

Q7. カウンターオファーを断るときの伝え方は?

「感謝」「理由は待遇ではないこと」「決意は変わらないこと」「引き継ぎに協力すること」の4点を伝えます。条件の良し悪しを議論しないことがポイントです。

Q8. 内定先の年収より高い条件を提示されました。どう考えればいいですか?

「転職理由が年収だったか」を確認してください。年収以外の理由なら、提示額は判断材料になりません。年収が理由だった場合も、「辞めると言わなければ上がらない会社」で今後も昇給を勝ち取れるかを考えてください。

Q9. 引き止めが強引で退職を認めてもらえません。

期間の定めのない雇用契約は退職の申し入れから2週間で終了します(民法627条)。会社の承認は不要です。退職届を書面で提出し、受け取りを拒否された場合は内容証明郵便で送付する方法があります。

Q10. 転職エージェントは引き止めについて相談に乗ってくれますか?

はい。むしろ退職交渉と引き止めへの対処は、エージェントが最も支援すべき局面です。カウンターオファーを受けそうな場合は、内定承諾の前にエージェントに伝えておくと対応が早くなります。エージェントの活用法は転職エージェント選び方ガイドを参照してください。

まとめ——カウンターオファーは「辞めると言った後」ではなく「辞める前」に答えを出しておく

引き止めは退職者の53.7%が経験する普通の出来事で、その45%は条件なしの口頭のみ、実際に残る人は11.9%。企業側から見てもほぼ失敗する施策ですが、採用し直すより安いので出されます。受けて後悔する人の共通点は、転職理由が給与以外だったのに給与で残ったこと、口約束の条件を信じたこと、そして「一度辞めると言った人」として扱われることを想定していなかったことです。

私が最も伝えたいのは、カウンターオファーへの答えは、退職を切り出す前に出しておくということです。「いくら提示されても残らない」と決めてから退職を伝えれば、交渉は短く済み、迷いもありません。逆に「条件次第では残ってもいい」と思っているなら、退職を切り出す前に、まず今の会社で正面から条件交渉をしてください。辞めると言ってから交渉するのは、あなたにとっても会社にとっても最悪の順番です。

キープレイヤーズでは、内定承諾前の段階で「引き止めが来たらどうするか」まで一緒に想定し、退職交渉から入社日の調整まで伴走しています。すでにカウンターオファーを受けて迷っている方も、お気軽にご相談ください。

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