こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野です。
相談を受けていて、いちばんもったいないと感じるのが「スタートアップ」をひとくくりにして考えている方です。社員8名でシード調達を終えたばかりの会社と、シリーズCで200名規模、IPO準備に入っている会社。この2つは、同じ「スタートアップ」という言葉で語られますが、求められる人材も、年収も、リスクの種類も、まったく別物です。
にもかかわらず、面接で「御社のフェーズだと、次の資金調達はいつ頃を想定していますか」と聞ける人は、私の体感で3割もいません。これを聞かずに入社するのは、物件の築年数を確認せずに家を買うようなものです。
しかも2026年は、この見極めの重要度が上がっています。スピーダ(旧INITIAL)の集計によれば、2025年の国内スタートアップの資金調達総額は7,613億円(デット除く)でほぼ横ばいでしたが、1社あたりの調達額の中央値は7,760万円から6,240万円へ低下。シリーズAの調達総額も1,684億円から1,391億円へ減り、社数も519社から501社へ減少しました。一方で50億円以上の大型調達が総額の約2割を占めています。つまり「取れる会社は大きく取り、取れない会社は小さくなる」という選別が進んでいるということです。
この記事では、①フェーズごとの実態比較、②2026年の調達環境、③各フェーズの向き不向き、④面接で必ず聞くべき質問、⑤年収とストックオプション(SO)のトレードオフ、⑥フェーズ別の失敗パターン、⑦年代別の戦略、⑧FAQ——を整理します。ベンチャー転職そのものの進め方はベンチャー転職 完全ガイドにまとめていますので、合わせてご覧ください。
結論:フェーズ別の全体像を一枚で
| フェーズ | 従業員数の目安 | 調達額の目安 | 年収水準 | SOの価値 | 主なリスク | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| シード | 〜10名 | 数千万〜数億円 | 前職比 -20〜-40% | ◎(比率が最大) | PMF未達/資金枯渇 | 創業に近い経験をしたい人 |
| シリーズA | 10〜30名 | 1〜5億円前後 | 前職比 -10〜-20% | ○〜◎ | スケールできず失速 | 0→1の次、1→10を作りたい人 |
| シリーズB | 30〜80名 | 5〜20億円前後 | 前職とほぼ同等 | ○ | 組織崩壊・採用の質低下 | 組織を作れる人・マネジメント志向 |
| シリーズC以降 | 80〜200名 | 20〜50億円超 | 前職比 同等〜+10% | △〜○ | IPO延期・ダウンラウンド | 仕組み化・専門性を発揮したい人 |
| IPO直前・レイター | 200名〜 | 50億円超も | 大手と遜色ない水準 | △(行使価格が高い) | 上場後の株価低迷 | 上場企業の管理体制を作りたい人 |
ここで最初に伝えたいのは、「早いフェーズほど偉い」わけではないということです。シードに行った人が一番すごくて、シリーズCは物足りない——そんなことはまったくありません。自分の持っているスキルが、いちばん高く売れるフェーズに行くのが正解です。組織を作るのが得意な人がシードに行っても、作る組織がまだ存在しないので活きません。
2026年の資金調達環境:「選別と延長戦」を理解する
数字が示していること
| 指標 | 2024年 | 2025年 | 読み取れること |
|---|---|---|---|
| 国内調達総額(デット除く) | 約7,600億円規模 | 7,613億円 | 総額は横ばい。市場が縮んだわけではない |
| 1社あたり調達額の中央値 | 7,760万円 | 6,240万円 | 「普通の会社」が取りにくくなった |
| シリーズA 調達総額 | 1,684億円 | 1,391億円 | 最も絞られているのがシリーズA |
| シリーズA 調達社数 | 519社 | 501社 | 社数の減り以上に金額が減っている |
| 50億円以上の大型調達 | — | 総額の約2割 | 一部の勝ち組に資金が集中 |
この数字を転職者の言葉に翻訳すると、こうなります。
- シード→シリーズAの関門が厳しくなった:昔なら「勢い」で通ったところが、いまはユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算)を出せないと通らない
- ブリッジ調達(つなぎ調達)が増えている:次のラウンドの条件を満たすまで、既存投資家から小口で延命する会社が増えた
- 大型調達組との二極化:同じ「シリーズB」でも、20億円調達した会社と5億円の会社では体力がまるで違う
倒産統計から見えるリアル
正直な話もしておきます。東京商工リサーチの集計では、2025年の全国企業倒産は1万300件(前年比+2.9%)で2年連続の1万件超え。そして設立10年未満の企業が倒産全体の約3割を占めています。
この数字は「スタートアップに行くな」という意味ではありません。私が伝えたいのは、「会社が消える可能性は、ゼロではなく確率として存在する」という前提で意思決定してほしいということです。この前提を持って選んだ人は、たとえ会社がうまくいかなくても次のキャリアに繋げます。前提を持たずに入った人は、会社が傾いたときに「騙された」と感じてしまう。同じ結果でも、その後の回復速度がまったく違います。
フェーズ別の詳細:どこに何を求められるか
シード(〜10名):職種が存在しない世界
プロトタイプやMVPができて、これから顧客検証を本格化する段階です。従業員10名未満、調達額は数千万〜数億円、調達した資金で1〜2年分のランウェイを確保しているのが典型です。
この段階の会社に「営業として入る」「マーケターとして入る」という発想は成立しません。営業もやるし、資料も作るし、採用面接もするし、必要なら請求書も出す。職種という概念が事実上ないのがシードです。
| シードの実態 | |
|---|---|
| 年収 | 前職比マイナス20〜40%は覚悟。役員でも600〜800万円というケースは普通 |
| SO | 持ち分比率は最大。ただし会社が成功する確率も最も低い |
| 得られるもの | 「事業を作った」という一次情報。将来の起業・CxOへの最短ルート |
| 失うリスク | 1〜2年で会社が消える可能性。年収の一時的な大幅ダウン |
| 入る条件 | 創業者を人として信頼できること。事業の説明に自分が納得していること |
私がシードへの転職相談で必ず確認するのは、「生活が2年間、年収が3割下がっても回るか」です。ここが回らない状態で入ると、会社の判断ではなく生活の都合で辞めることになります。それは本人にも会社にも不幸です。
シリーズA(10〜30名):いま最も選別が厳しいフェーズ
PMF(プロダクト・マーケット・フィット)を達成し、組織を拡大する段階です。調達額は1〜5億円前後が中心。2026年の環境では、ここが最も絞られているフェーズだと理解しておいてください。
転職者にとってのシリーズAの魅力は、「作るものがある程度見えていて、かつ自分が仕組みを最初に作れる」ことです。営業の型がない、人事制度がない、マーケの型がない——それを最初に作った人になれる。この経験は、次の転職で非常に高く評価されます。
一方で危ないのは、「PMFしたと言っているが、実は特定の1〜2社に売上が依存しているだけ」のケース。これは面接で必ず確認すべきポイントです(後述の質問リストを参照)。
シリーズB(30〜80名):組織が最初に壊れるフェーズ
売上が立ち、本格的な組織拡大に入る段階。調達額は5〜20億円前後。年収も前職とほぼ同等を出せるようになり、転職のハードルは下がります。
ただし私の経験上、スタートアップで人が最も辞めるのはこのフェーズです。理由ははっきりしています。30名までは創業メンバーの目が全員に届きますが、50名を超えると届かなくなる。すると「創業からいるメンバー」と「拡大期に入った人」の断層が生まれる。ここで組織が一度きしみます。
だからこそ、シリーズBは「組織を作れる人」にとって最高のタイミングでもあります。人事制度、評価制度、マネジメント層の育成——需要が一気に立ち上がるのがこのフェーズです。マネジメント経験がある方は、シードより圧倒的にシリーズBで価値が出ます。
シリーズC以降(80〜200名):仕組み化と専門性の勝負
調達額は20〜50億円超。事業が複数になり、部門が分かれ、専門職の採用が本格化します。年収は大手と遜色ない水準を出せる会社が増えてきます。
このフェーズで求められるのは「何でもやる人」ではなく「その領域のプロ」です。経理なら開示に耐える経理、法務なら上場審査に耐える法務、エンジニアなら大規模化に耐える設計。大手で専門性を磨いてきた方が、いちばん活きるフェーズです。
すでに上場を果たしたメガベンチャーの実態を知りたい方は、エムスリーへの転職完全ガイドを参考にしてください。売上3,513億円規模になっても「大手の安定」ではなくベンチャー的な働き方が残る会社の例として分かりやすいはずです。
注意すべきは、IPOが後ろ倒しになるリスク。「来年上場予定」と聞いて入ったが、2年経っても上場していない——これは珍しくありません。上場時期は市況で動きます。SOを主目的に入るなら、この不確実性を織り込んでください。
IPO直前・レイター(200名〜):ベンチャーというより「上場準備中の企業」
すでに事業が確立し、内部統制やガバナンスの整備が最優先課題になっている段階です。年収は大手と遜色なく、福利厚生も整い始めます。
正直に言えば、このフェーズは「ベンチャーらしさ」を求めて入ると肩透かしを食らいます。監査法人対応、J-SOX、規程の整備——やることは管理業務が中心。ただし「上場を経験した」というキャリアは市場価値が非常に高い。上場準備の実務ができる人材は常に不足しています。ここは目的が合致すれば極めて良い選択です。
SOについては注意が必要で、このフェーズで発行されるSOは行使価格がすでに高く、上場後の値上がり幅も限定的になりがちです。SOの仕組みと落とし穴はストックオプション(SO)完全ガイドで詳しく解説しています。
年収とSOのトレードオフ:どう考えるべきか
フェーズが早いほど年収は下がり、SOの比率は上がる。これは構造的にそうなっています。問題は「その交換レートが自分にとって妥当か」です。
| 判断軸 | 年収を優先すべき人 | SOを取りにいっていい人 |
|---|---|---|
| 生活 | 住宅ローン・教育費など固定費が重い | 数年間の収入減を吸収できる |
| 年齢 | 40代以降でリカバリー期間が限られる | 20〜30代で再挑戦の余地がある |
| 目的 | 市場価値の向上と安定を両立したい | 創業に近い経験そのものが目的 |
| 配偶者・家族 | 合意が取れていない | リスクについて事前に合意している |
私が候補者にいつも言っているのは、「SOはゼロになる前提で、年収だけで意思決定してください」ということです。厳しく聞こえるかもしれませんが、これで判断してSOが当たれば純粋なプラス。逆にSOを計算に入れて年収ダウンを受け入れると、SOが紙切れになったときに取り返しがつきません。
実際の年収相場はベンチャー企業の年収相場と年収・手取りガイドで、フェーズ別・職種別に整理しています。
面接で必ず聞くべき9つの質問
ここが本記事でいちばん実用的な部分です。フェーズを見極めるには、公開情報だけでは足りません。以下は私が候補者に必ず聞くよう勧めている質問です。
- 「直近の調達はいつ、いくら、どのラウンドですか」——公表していない会社もありますが、答え方で誠実さが分かります
- 「現在のランウェイ(資金が持つ期間)は何ヶ月ですか」——12ヶ月を切っている場合は、次の調達が最優先課題の会社です
- 「次の調達のマイルストーンは何ですか」——明確に答えられない=経営が数字で管理できていない可能性
- 「売上の上位3社が全体に占める割合は」——1社で5割超なら、PMFではなく特定顧客への依存です
- 「直近1年の入社者数と退職者数を教えてください」——退職率は組織の健全性を最も端的に示します
- 「創業メンバーで、いま残っているのは何人ですか」——創業者同士の分裂は外から見えにくい重大リスク
- 「私が入って1年後、何ができていれば合格ですか」——答えられない募集は、役割が定義されていません
- 「SOは発行済みですか、行使価格と付与の想定時期は」——曖昧な回答なら、SOは無いものとして計算する
- 「この事業が失敗するとしたら、原因は何だと思いますか」——経営者がリスクを直視できているかが分かる質問
特に9番目は効きます。ここで「失敗する要素はありません」と返ってくる会社は、私は慎重に見ます。優れた経営者ほど、自社のリスクを正確に言語化できるからです。
フェーズ別の失敗パターン
シードでの失敗:「創業者に惚れて」だけで入る
創業者の熱量に感化されて入り、半年後に事業の方向性が180度変わって「思っていた仕事と違う」となるパターン。シードのピボットは正常な行為です。「事業が変わっても、この人と働きたいか」まで確認していないと必ずズレます。
シリーズAでの失敗:PMFを確認しないまま入る
「シリーズAを調達=PMF済み」と考えるのは危険です。調達できたことと、事業が再現性を持って伸びることは別の話。売上の顧客集中度と、解約率(SaaSなら)を必ず確認してください。
シリーズBでの失敗:組織の断層に巻き込まれる
拡大期に入社した人が、創業期メンバーとの間で意思決定から外される。「入社2年目までの社員が、いま何割いますか」と聞くと、この断層の有無がある程度見えます。
シリーズCでの失敗:IPO時期を信じすぎる
「来期上場予定」を前提にライフプランを立ててしまうパターン。上場時期は市況で簡単に1〜2年ずれます。ずれても後悔しない条件で入ってください。
全フェーズ共通の失敗:ベンチャーを大手の物差しで測る
制度が整っていない、評価が属人的、役割が曖昧——これらはベンチャーの欠陥ではなく仕様です。「整っていないものを自分が作りにいく」つもりがない人は、フェーズを問わず苦しみます。この構造はベンチャー転職の失敗・後悔ガイドで詳しく扱っています。
向いている人・向いていない人(フェーズ別)
| フェーズ | 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|---|
| シード | 職種の枠なく動ける/将来起業したい/収入減を吸収できる | 専門性を深めたい/家計の余裕がない/指示待ちの傾向がある |
| シリーズA | 型のない仕事を型にできる/1→10の経験を積みたい | 整った環境で成果を出すタイプ/安定した評価制度を求める |
| シリーズB | 組織・制度を作れる/マネジメント志向/採用に関われる | プレイヤーに徹したい/人の問題に関わりたくない |
| シリーズC以降 | 専門性が明確/仕組み化が得意/上場準備に関心 | 0→1をやりたい/裁量の大きさを最優先する |
| IPO直前 | 管理体制の構築経験を積みたい/上場実務に興味 | プロダクト作りがしたい/変化の速さを求める |
年代別:どのフェーズを狙うべきか
20代
どのフェーズでも挑戦できる、唯一の年代です。迷うならシリーズA〜Bを勧めます。シードは学ぶ相手が少なすぎ、シリーズC以降は役割が細分化されて全体が見えにくい。A〜Bなら、事業の全体像を見ながら、上に学べる人もいる。この両立ができるのがA〜Bです。
30代前半
市場価値がもっとも高い年代です。「これまでの経験が、そのまま不足している役割になる」フェーズを選んでください。大手で営業の型を作ってきたならシリーズA、マネジメント経験があるならシリーズB。既に持っているものが希少資源になる場所を選ぶのが最短です。
30代後半〜40代
シードは、正直おすすめしにくい年代です。理由は能力ではなくリカバリー期間。会社が2年で無くなったとき、40代の再挑戦は20代より確実に選択肢が狭い。
この年代の方にはシリーズB〜Cを勧めます。マネジメントか専門性のどちらかを持っていれば、年収を大きく落とさずに入れて、かつ経営に近い仕事ができる。CxOポジションを狙うならCXO転職ガイドも合わせてご覧ください。年代ごとの全体戦略は年齢別転職ガイドで解説しています。
入社前チェックリスト(5ステップ)
- 公開情報でフェーズを特定する——直近の調達ラウンド、調達額、従業員数、投資家の顔ぶれを調べる
- 面接で9つの質問をする——特にランウェイ、顧客集中度、退職者数の3つは必須
- 年収だけで生活が成立するか計算する——SOはゼロとして計算。家族がいるなら必ず共有する
- 現場社員と話す機会を作る——経営者の話だけで判断しない。カジュアル面談を依頼していい
- 撤退ラインを決めておく——「何が起きたら辞めるか」を入社前に自分の中で決めておく
5番目は特に大事です。撤退ラインを決めずに入ると、会社が傾いたときに判断が遅れます。「給与の遅配が起きたら」「創業者が交代したら」「6ヶ月で自分の役割が定義されなかったら」——何でもいいので基準を決めておく。これは会社への不信ではなく、自分を守るための設計です。
職種別:どのフェーズで需要が立つか
「自分の職種は、どのフェーズで一番求められるのか」——これを知っておくと、転職の狙いどころが一気に定まります。
| 職種 | 需要が最も立つフェーズ | 理由 |
|---|---|---|
| セールス(The Model型) | シリーズA〜B | 型を作る人が必要な時期。C以降は既に組織化されている |
| マーケティング | シリーズA〜B | PMF後、再現性のある獲得チャネルを作る局面で需要が跳ねる |
| カスタマーサクセス | シリーズB | 顧客数が増え、解約率が経営課題になった段階で本格採用 |
| エンジニア(プロダクト) | 全フェーズ | ただしシードは何でも書ける人、C以降は設計・大規模化ができる人 |
| プロダクトマネージャー | シリーズA〜B | 作るものが増え、優先順位付けが必要になるタイミング |
| 人事(採用) | シリーズA後半〜B | 採用が経営のボトルネックになる30名前後で1人目人事を採る |
| 人事(制度・労務) | シリーズB〜C | 評価制度・等級制度の設計需要は50名超から |
| 経理・財務 | シリーズB〜IPO直前 | 管理会計はB、開示・監査対応はC以降で必須になる |
| 法務 | シリーズC〜IPO直前 | 上場審査に耐える契約・規程の整備で需要が立つ |
| CxO | シリーズA〜C | シードは創業者が兼務。外部からのCxO招聘はA以降が中心 |
この表で伝えたいのは、「自分の職種が1人目として採られるフェーズ」を狙うと、裁量も評価も最大化するということです。1人目人事、1人目マーケター、1人目CS——この立ち位置で入った人は、その領域の設計者になれます。5人目として入るのとは、任される範囲がまったく違います。
フェーズごとに変わる「働き方」の実態
| シード〜A | シリーズB | シリーズC〜IPO直前 | |
|---|---|---|---|
| 意思決定 | その場で決まる | 会議体ができ始める | 稟議・承認フローが整う |
| 評価制度 | ほぼ無い(創業者の判断) | 作っている最中。運用は不安定 | 等級・評価が制度として稼働 |
| 情報共有 | 全員が全部知っている | 部署ごとに情報が閉じ始める | 開示制限がかかる情報が増える |
| 役割定義 | 無いに等しい | ジョブディスクリプションが登場 | 職務が明確に分かれる |
| リモート・働き方 | 会社ごとに極端に違う | 制度化が進む | 大手に近い運用になる |
| 採用の基準 | カルチャーフィット重視 | スキルとカルチャーの両立 | 専門性・実績重視 |
面接で「うちはフラットな組織です」と言われたとき、それがフェーズ由来の一時的な状態なのか、意図して維持しているカルチャーなのかを見分けてください。前者であれば、規模が拡大した瞬間に消えます。「50名を超えたときにどうするつもりか」と聞けば、経営者が組織設計を考えているかどうかが分かります。
よくある質問(FAQ)
Q1. シードとシリーズAの境目はどう判断すればいいですか?
形式的にはPMFの達成有無ですが、外からは分かりにくい。実務的には「営業しなくても問い合わせが来るか」「同じ売り方で複数の顧客が取れているか」で判断します。特定の1社に依存している状態は、ラウンドの名前がシリーズAでも実態はシードに近いと考えてください。
Q2. 調達額が大きい会社ほど安全ですか?
安全性は上がりますが、調達額の大きさはバーンレート(資金の燃焼速度)の大きさでもあります。50億円調達しても月2億円使っていれば25ヶ月です。見るべきは調達額ではなくランウェイ(残り月数)。必ずセットで確認してください。
Q3. ブリッジ調達をした会社は避けるべきですか?
一概には言えません。「次のラウンドのマイルストーンまであと少し」でのブリッジは正常です。危ないのは、ブリッジを繰り返している場合と、既存投資家しか入っていない場合。「なぜブリッジにしたのか」を面接で聞いて、明確に答えられるかを見てください。
Q4. ダウンラウンドをした会社への転職はどうですか?
むしろチャンスの場合があります。バリュエーションが下がった後に付与されるSOは行使価格が低くなるためです。ただしダウンラウンドの原因が「市況」なのか「事業の失速」なのかで意味がまったく違います。前者なら検討の余地あり、後者は慎重に。
Q5. フェーズが早い会社ほど、SOで儲かる可能性が高いのですか?
持ち分比率は高くなりますが、会社が上場・売却に至る確率は低くなります。期待値としては、どのフェーズでも劇的には変わらないと考えるべきです。だからこそ「SOはゼロ前提、年収で判断」を勧めています。SOの税制・失効リスクはストックオプション完全ガイドを参照してください。
Q6. 大手からいきなりシードに行くのは無謀ですか?
無謀ではありませんが、失うものと得るものを冷静に計算してからにしてください。私が見ている限り、うまくいく人には共通点があります。①生活の固定費が軽い、②創業者と過去に接点がある、③その領域の一次情報を既に持っている。この3つのうち2つ以上が当てはまるなら検討の価値があります。
Q7. フェーズを聞くと「調べていない人」と思われませんか?
逆です。フェーズと資金繰りを聞ける候補者は、経営者から「事業を分かっている人」として評価されます。むしろ聞かない人のほうが「うちの何を見て応募したのだろう」と思われます。遠慮せず聞いてください。
Q8. 転職エージェントはフェーズの情報を持っていますか?
特化型のエージェントであれば、公開されていない調達状況や組織の実態まで把握しているケースがあります。総合型より、ベンチャー・スタートアップ特化型のほうがこの点では有利です。エージェントの選び方は転職エージェント選び方ガイドで詳しく解説しています。
まとめ:フェーズを見極めれば、スタートアップ転職の失敗は大幅に減る
要点を整理します。
- 「スタートアップ」は単一のカテゴリではない。シードとシリーズCは別の生き物として扱う
- 2026年は選別が進行中。調達中央値は6,240万円に低下し、シリーズAの総額も減少。二極化している
- 早いフェーズが偉いわけではない。自分のスキルが最も高く売れるフェーズを選ぶ
- 年収は年収だけで判断する。SOはゼロ前提で計算し、当たったらプラスと考える
- 面接で9つの質問を必ずする。特にランウェイ・顧客集中度・退職者数
- 撤退ラインを入社前に決めておく。判断の遅れが、いちばん取り返しがつかない
27年この仕事をしてきて思うのは、スタートアップ転職で後悔する人の大半は、会社選びを間違えたのではなく、フェーズと自分の相性を確認しなかったということです。同じ会社でも、2年前に入れば正解、2年後に入れば不正解——そういうことが普通に起こります。
なお、フェーズを見極める最も確実な方法は、入る前に中から見ることです。近年は副業・業務委託で数ヶ月関わってから正社員になるルートが増えており、パーソル総合研究所の調査では副業経験者の6.7%(20代は13.6%)が副業先へ転職しています。この入り方の実務は副業・業務委託からのスタートアップ転職ガイドにまとめました。ランウェイや支払いの遅れといった、面接では絶対に見えない情報が取れます。
キープレイヤーズでは、シードからIPO直前まで、幅広いフェーズの企業をご紹介しています。「自分にはどのフェーズが合うのか分からない」という段階のご相談も歓迎です。お気軽にご連絡ください。

