副業・業務委託からのスタートアップ転職ガイド【2026年最新版】副業経験者の6.7%・20代13.6%が副業先へ転職する“お試し入社”の実態を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

キープレイヤーズの高野秀敏です。ここ2〜3年、転職の入口が明らかに変わりました。いきなり応募するのではなく、まず副業や業務委託で数ヶ月一緒に働いてから正社員になる——このルートで決まるケースが、特にスタートアップで一気に増えています。

数字にも出ています。パーソル総合研究所の「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年8月実施/企業n=1,500、個人n=62,320)によれば、副業経験者の6.7%が副業先の企業へ転職しており、20代に限れば13.6%。副業人材を受け入れている企業の55.6%が「副業人材が自社に転職してきたことがある」と答えています(前回調査比+7.0pt)。

これはもう例外的なルートではありません。ただし、うまくいく人とこじれる人の差が、驚くほどはっきり出る入り方でもあります。この記事では、副業・業務委託を入口にしたスタートアップ転職について、数字・進め方・契約と税の実務・失敗パターンまで、私が現場で見てきたことを全部書きます。

目次

まず全体像:副業から正社員に至る4つのルート

ルート 入り方 正社員化までの目安 向いている人 主なリスク
①副業(雇用型) アルバイト・パート等の雇用契約で週数時間 3〜6ヶ月 実務を近くで見て決めたい人 労働時間が本業と通算される
②副業(業務委託型) 成果物・稼働ベースの準委任/請負 3〜6ヶ月(最多) 専門スキルがある人 労働法の保護が薄い
③フリーランス→正社員 専業フリーランスとして参画後に登用 6〜12ヶ月 独立後に組織に戻りたい人 年収換算の錯覚に陥りやすい
④顧問・アドバイザー→CxO 月数回の壁打ちから経営参画へ 6〜18ヶ月 管掌経験のある40代以降 期待値と権限の不一致

いちばん多いのは②の業務委託型です。企業側は雇用リスクを取らずに実力を確かめられ、個人側は本業を持ったまま中を見られる。双方にとって合理的なので、スタートアップの採用手段として定着しました。

2026年の数字:副業はどこまで一般化したか

指標 最新値 出所・注記
正社員の副業実施率 11.0%(前回比+4.0pt・過去最高) パーソル総合研究所 第四回調査(2025年8月)
企業の副業容認率 64.3%(2023年調査から+3.4pt) 同上。全面容認率は2018年の約2倍
副業制度が「ある」企業 60.7%(2022年比+8.9pt) リクルート 兼業・副業に関する動向調査2024
副業人材の受入企業で転職受入経験あり 55.6%(+7.0pt) パーソル総合研究所 第四回調査
副業先へ転職した副業経験者 6.7%/20代13.6% 同上
副業の時給 平均3,617円/中央値2,083円 2018年は平均2,477円・中央値1,250円
副業の稼働時間 月平均23.0時間 本業残業+副業で45時間超が全体の約3割
地方企業の副業・フリーランス活用 前年比234.5% パーソルキャリア(IT・人事・新規事業開発が中心)

ここでひとつ注意点を書いておきます。副業実施率は調査によって数字が大きく違います。上の11.0%は正社員全体を母集団にした数字ですが、副業マッチングサービスの定点調査では41.0%という数字も出ています。後者はビジネスパーソンの自己申告で、単発の業務やポイ活を含むためです。「副業は当たり前」という空気に押されて焦る必要はありません。正社員全体で見れば、まだ1割の世界です。

もうひとつ重要な変化が、副業をする理由です。パーソル総合研究所の調査では「自分のスキルが他の場所でも通用するか試したいから」が48.9%、「本業では自分の好きな仕事ができないから」が45.1%。収入補填の理由は減少し、キャリア形成・自己実現の比重が上がっています。副業が、転職前の「市場価値の実測」として使われ始めたということです。

なぜスタートアップは「まず副業から」を提案してくるのか

企業側の事情を知っておくと、交渉が有利になります。

  1. 採用の失敗コストが大きすぎる——20名規模の会社で1人のミスマッチが出ると、影響は大企業の比ではありません。3ヶ月一緒に働けば、ほぼ確実にわかります。
  2. 優秀な人ほど「今すぐ辞めて来い」が通じない——大手やメガベンチャーで活躍している人を口説くには、辞めずに関われる入口が要ります。
  3. 採用単価を先送りできる——エージェント経由の紹介手数料は理論年収の30〜35%が相場です。業務委託から入れば、その支出のタイミングをずらせます。
  4. ポジションがまだ固まっていない——シード〜シリーズAでは、そもそも職務定義が固まっていないことが多い。一緒に働きながら役割を決めたい、というのが本音です。

4つ目は特に重要です。「ポジションが固まっていないから副業で」という会社は、悪気なく期待値を後出しします。ここが後述する失敗パターンの温床になります。

メリットとデメリットを正直に整理する

メリット デメリット
個人側 ・本業を捨てずに中を見られる
・書類選考や面接より正確に評価される
・カルチャーの相性を体感できる
・入社後の立ち上がりが圧倒的に速い
・稼働時間が増え健康リスクがある
・正社員化が保証されない
・業務委託は労働法の保護が薄い
・本業の就業規則違反リスク
企業側 ・採用失敗コストを下げられる
・優秀層に接触できる
・必要な時に必要な量だけ
・情報漏洩・競業リスク
・コミット度が読みにくい
・偽装請負と判断されるリスク

向いている人・向いていない人

向いている人 向いていない人
単体で成果物を出せる専門性がある(エンジニア/デザイナー/マーケ/人事/財務) 指示がないと動けない、育成前提のフェーズにいる
本業が定時で終わる、または裁量労働で時間を作れる 本業の残業が月40時間を超えている
転職を「するかどうか」から迷っている すでに退職日が決まっていて、収入の空白がない状態にしたい
自分で契約書を読み、条件を交渉できる 条件面の交渉を避けたい
非同期コミュニケーション(Slack・ドキュメント)が得意 対面で空気を読みながら進めたいタイプ

特に2行目は現実的な話です。本業の残業と副業の合計が月45時間を超える層が全体の約3割という調査結果があります。これは過労死ラインの目安(月80時間)とは別の話ですが、健康を削って入った会社で長く働けるわけがないというのが私の実感です。

副業から正社員までの7ステップ

ステップ1:本業の就業規則を確認する(ここを飛ばさない)

厚生労働省のモデル就業規則は2018年に副業・兼業の規定が新設され、原則容認の方向に変わりました。ただし自社の規則がそうなっているとは限りません。確認すべきは、①許可制か届出制か、②競業避止の範囲、③秘密保持の範囲、の3点です。同業種のスタートアップに関わる場合、競業避止に触れる可能性が最も高いので、ここは慎重に。

ステップ2:入口を作る

スタートアップの副業案件は、①副業マッチングサービス、②リファラル(知人紹介)、③SNS経由の直接接触、の3つが主流です。私の実感では、質の高い案件はリファラル経由に集中しています。人脈の作り方は転職に効く人脈・ネットワークの作り方に具体的な手順を書いています。

ステップ3:最初の3ヶ月で「代替不可能な何か」を1つ作る

ここが最大の分岐点です。週8〜10時間で成果を出すには、手を広げないことが絶対条件です。私が見てきた中で正社員化に至った人は、ほぼ例外なく「この領域はあの人がいないと回らない」という状態を3ヶ月で作っています。逆に「言われたことを幅広くこなす」働き方をした人は、便利な外注として固定されます。

ステップ4:期待値を文書で握る

口頭の「いずれ正社員に」は、ほぼ実現しません。3ヶ月目あたりで、「どういう状態になったら正社員化の話をするか」を文字で確認してください。Slackのやり取りでも構いません。ここを避ける会社は、そもそも正社員化の意思決定ができない会社です。

ステップ5:正社員化を自分から切り出す

待っていても向こうからは来ません。切り出し方のテンプレートを後述します。

ステップ6:条件交渉

業務委託の単価と正社員の年収は、そのまま比較できません。ここは章を分けて詳しく書きます。オファー時の確認項目はベンチャー転職のオファー面談・条件交渉完全ガイドの15項目も併せて使ってください。

ステップ7:本業の退職交渉

副業先に転職することを本業側に伝えるかどうかは、競業避止の有無で判断が変わります。同業なら、揉める前に一度専門家に相談したほうが安全です。

「業務委託の月収」と「正社員の年収」を正しく換算する

ここでいちばん多くの人が判断を誤ります。業務委託で月50万円もらっている=年収600万円、ではありません。

項目 業務委託(フルコミット時) 正社員
社会保険料 国民健康保険+国民年金を全額自己負担 会社が約半分を負担
厚生年金 なし(将来の受給額が下がる) あり
有給休暇 なし(休んだ分だけ収入減) あり
賞与・退職金 なし 企業による
傷病手当金・雇用保険 なし あり
ストックオプション 付与されないことが多い(税制適格は原則社外に出しにくい) 付与対象
稼働率 案件が切れれば即ゼロ 固定

ざっくりした目安として、業務委託の年間報酬 × 0.75〜0.8 が、体感的に同等の正社員年収だと考えてください。月50万円の業務委託(年600万円)は、正社員なら450万〜480万円相当の手取り感覚に近くなります。逆に言えば、業務委託から正社員化するときに額面が下がって見えても、実質は下がっていないケースが多いということです。

ここを知らずに「業務委託のほうが稼げるから正社員にはならない」と判断し、40代でキャリアが袋小路に入った方を何人か見てきました。年収の考え方そのものは年収・手取りガイドに手取り換算まで含めて整理しています。

また、ストックオプションは正社員化の最大の理由になり得ます。税制適格ストックオプションは対象者の要件が厳しく、社外の業務委託先には基本的に出せません。SOを取りに行くなら、正社員化はほぼ必須です。詳細はストックオプション(SO)完全ガイドを確認してください。

契約と法務:業務委託契約で必ず見る10項目

  1. 契約類型(請負か準委任か)——成果物責任の有無が変わります
  2. 業務範囲——「その他付随する業務」だけで終わっている契約は危険
  3. 稼働の目安(週◯時間/月◯時間)と、超過時の扱い
  4. 報酬額と支払期日——後述のフリーランス新法で60日以内が義務
  5. 知的財産権の帰属——成果物の権利が誰に帰属するか
  6. 秘密保持——本業側の秘密保持と衝突していないか
  7. 競業避止——契約終了後の制限期間と範囲。ここが最も揉めます
  8. 再委託の可否
  9. 解除条件と通知期間(30日前通知が一般的)
  10. 正社員登用に関する条項——あればベスト。なければ別途文書で握る

フリーランス新法(2024年11月1日施行)で変わったこと

「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称フリーランス新法が2024年11月1日に施行されました。副業で業務委託を受ける個人も、原則としてこの法律の保護対象になります。

発注側の義務 内容
取引条件の明示 業務内容・報酬額・支払期日などを書面または電磁的方法で明示
報酬支払期日 成果物等の受領日から60日以内のできる限り短い期間内に設定・支払
禁止行為 受領拒否、報酬減額、返品、買いたたき、不当な経済上の利益提供要請など
罰則 命令違反等に対し50万円以下の罰金

実務上いちばん効くのは「条件明示が義務になった」点です。「条件を書面でください」と言うのは、もはや面倒な要求ではなく法律に沿った当然の依頼です。これを渋る会社とは、そもそも組まないほうがいい。契約の丁寧さは、その会社の管理部門の成熟度をそのまま映します。

偽装請負にならないか

業務委託なのに、実態として始業終業を指定され、業務の遂行方法を細かく指揮命令され、代替要員を立てられない——この状態は労働者性が認められる方向に傾きます。個人側にとっては保護が及ぶ余地が広がる一方、本業の労働時間管理と衝突するという別の問題が起きます。副業先に「常駐で毎日9時から」と言われたら、それは業務委託ではなく雇用の話だと考えてください。

税・社会保険・労働時間の実務

論点 ルール 実務上の注意
確定申告 給与所得者は副業の所得が年20万円超で必要 「収入」ではなく経費控除後の「所得」で判定
住民税 20万円ルールは所得税のみ 20万円以下でも住民税の申告は必要
会社に知られる経路 住民税の特別徴収額の変動 普通徴収を選べる場合がある(自治体・所得区分による)
社会保険 副業先で雇用される場合、週20時間以上・月額8.8万円以上・2ヶ月超見込み等で加入義務 業務委託ならこの論点は生じない
労働時間の通算 労働基準法上の通算は雇用契約同士が対象 業務委託は通算対象外。ただし健康管理は自己責任になる
今後の改正 労働基準関係法制研究会報告書(2025年1月公表)を受け、通算ルールの見直しを含む労基法改正法案が2026年に国会提出見込み・2027年4月施行予定 雇用型副業の扱いが変わる可能性がある

労働時間通算が業務委託に及ばないのは、法律上そうだというだけで、体は通算されます。ここを勘違いして月80時間の副業を数ヶ月続け、体調を崩した方を実際に見ています。数字上のセーフと健康上のセーフは違います。

副業のうちに見極めるべき15項目

副業期間の最大の価値は、入社前に内側から会社を検分できることです。面接では絶対に見えないものを見てください。

領域 チェック項目
お金 ①直近の調達ラウンドと時期 ②ランウェイ(あと何ヶ月もつか)③請求書の支払いが遅れないか
経営 ④意思決定が何日で終わるか ⑤経営者が数字を即答できるか ⑥役員間で言うことが食い違わないか
組織 ⑦この半年で誰が辞めたか ⑧採用が計画通り進んでいるか ⑨評価制度が文書化されているか
プロダクト ⑩解約率・継続率を社内で共有しているか ⑪顧客の声が開発に届いているか
働き方 ⑫深夜・休日のSlackがどれくらい飛ぶか ⑬会議が決めるためのものか、報告のためのものか
あなたの立場 ⑭あなたの意見が実際に採用された回数 ⑮正社員化の話を誰が決裁するのか明確か

③の「請求書の支払いが遅れないか」は、想像以上に強いシグナルです。資金繰りが苦しい会社は、まず社外への支払いが遅れます。フリーランス新法で60日以内が義務になった今、それでも遅れる会社は相当まずい。フェーズごとの見極め方はスタートアップのフェーズ別転職ガイド、成長企業の見分け方は伸びるベンチャー企業の特徴7つにチェックリスト形式でまとめてあります。

失敗パターン6選

1. 便利な外注で固定される

手が早く、なんでも引き受ける人ほど陥ります。会社にとっては「安く柔軟に使える人」を正社員化する動機がない。3ヶ月経っても正社員化の話が出ないなら、あなたのポジションはそこに固定されています。

2. 稼働超過で本業の評価を落とす

副業先で成果を出すために本業を薄くし、本業の評価が下がる。そして正社員化されなかった場合、両方を失います。副業は月20〜30時間が現実的な上限です。

3. 期待値が曖昧なまま1年経つ

「もう少し軌道に乗ったら」を繰り返されるパターン。1年経つと、あなたの本業でのキャリアも1年止まっています。期限を切ってください。6ヶ月で話が出なければ、その会社は決められない会社です。

4. ストックオプションの口約束を信じる

「正社員になったらSOを出す」は、株主総会・取締役会の決議が要る話です。発行可能株式数、既存の割当状況、行使価額の考え方まで具体的に説明できないなら、その話は現時点で存在しません。落とし穴はストックオプションで後悔する人の特徴に実例で書いています。

5. 競業避止で本業と衝突する

同業のスタートアップに副業で入り、本業側に発覚して問題化するケース。秘密保持と競業避止は、副業でいちばんこじれる論点です。グレーだと思ったら、始める前に確認してください。

6. 「内側を見た」つもりで見ていない

週8時間、Slackの特定チャンネルしか見ていない状態は、会社のごく一部しか見ていません。経営会議の議事録、離職者の推移、資金繰り——正社員化を決める前に、意識して外側の情報を取りに行ってください。転職後に「思っていたのと違う」となる構造はベンチャー転職 失敗・後悔ガイドに7つの型で整理しています。

正社員化を切り出すタイミングと、実際の言い方

タイミングは「成果が形になった直後」。期末や評価のタイミングを待つ必要はありません。むしろ、あなたの貢献が全員に見えている瞬間がベストです。

言い方の型を挙げておきます。

「この3ヶ月で◯◯を担当し、△△という結果まで持っていけました。ここから先、□□に踏み込むには意思決定に入る必要があり、業務委託の立場では限界があると感じています。正社員としてコミットする前提で、条件を含めて一度お話しさせていただけませんか。もし今のフェーズでは難しいということであれば、その前提で自分のキャリアを考えたいので、率直に教えていただけると助かります。」

ポイントは3つ。①成果を先に事実で置く、②業務委託では構造的にできないことを示す、③断られた場合の前提も示して相手に決めさせる。3つ目が効きます。曖昧な保留を許さない形にしておくと、返事が早くなります。

正社員化のオファーで必ず確認する12項目

  1. 年収の内訳(基本給・みなし残業・賞与の有無と実績)
  2. 等級とグレード定義、次の等級までの要件
  3. 評価制度と評価頻度、評価者は誰か
  4. 試用期間の有無と、業務委託期間が考慮されるか
  5. ストックオプション(種類・株数・行使価額・ベスティング)
  6. 役職と決裁権限の範囲
  7. 直属の上司と、レポートライン
  8. 入社後3ヶ月・6ヶ月で期待される成果
  9. 業務委託契約の終了日と雇用開始日の接続
  10. これまでの業務委託分の未払いがないか
  11. リモート・出社の運用実態(規定ではなく実態)
  12. 直近の資金調達計画と、あなたのポジションの予算

特に④は必ず交渉してください。半年一緒に働いた相手に、改めて3ヶ月の試用期間を課すのは合理性が薄い。短縮または免除を求める余地は十分にあります。試用期間そのもののルールは転職の試用期間完全ガイドで解説しています。

年代別の戦略

年代 副業ルートの位置づけ 戦略
20代 最も転職に繋がりやすい(副業経験者の13.6%が副業先へ転職) スキルの証明より「学習速度」を見せる。無償に近い条件で長く続けない
30代前半 本命ルート。専門性と柔軟性が両立する年代 3ヶ月で代替不可能な領域を作る。SOを取りに行くなら正社員化は必須
30代後半 マネジメント込みでの参画が増える プレイヤーとして入って抜けられなくなる罠に注意。役割を先に握る
40代 顧問・アドバイザーからCxOへの接続が現実的 管掌範囲と決裁権限を文書で。年収より権限で選ぶ
50代 複数社の顧問を並行し、1社に軸足を移す形が多い 常勤にこだわらない設計も選択肢。健康保険の切り替えを先に確認

40代以降でCxOポジションを狙う場合の年収レンジや求められる要件はCXO転職ガイドに、年代別の市場実態は年齢別転職ガイドにまとめています。

実際にあったケース

成功事例1:週10時間で入り、5ヶ月で正社員になった30代前半エンジニア

大手SIerに在籍しながら、シリーズAのSaaS企業で週10時間の業務委託を開始。最初の3ヶ月はデータ基盤の1領域だけに絞って担当し、社内の誰も触れなかった部分を引き受けました。4ヶ月目に自分から正社員化を提案。年収は在籍時から60万円増、税制適格SOの付与を受けて入社しました。手を広げなかったことが決め手でした。

成功事例2:顧問からCFOになった40代後半

上場企業の経理部長として在籍しながら、月2回の財務顧問としてシード期のスタートアップに参画。9ヶ月目に資金調達を主導し、そのままCFOとして入社。年収は前職比で下がりましたが、SOを含めた設計で合意しました。顧問期間中に「調達を通す」という具体的な成果を出したことが、経営陣を動かしました。

失敗事例1:1年半、便利な外注のままだった30代半ばマーケター

広告運用を月30時間で請け負い、成果も出していましたが、担当領域が「運用代行」から広がらなかった。会社としては外注で足りているため、正社員化の動機がありません。1年半後に「予算縮小」で契約終了。本業でも副業に時間を取られて評価が上がらず、結局どちらも得られませんでした。

失敗事例2:SOの口約束を信じて入社した30代後半

「正社員になったらSOを出す」という話を前提に、年収を80万円下げて入社。ところが入社後、発行可能株式数に余裕がなく、次の調達まで発行できないことが判明。2年後にようやく付与されたものの、行使価額は入社時の3倍になっていました。口約束の時点で条件を数字にしておけば防げたケースです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 会社が副業禁止です。それでもできますか?

就業規則で禁止されている場合、無断で行えば懲戒の対象になり得ます。まず確認すべきは、①全面禁止なのか許可制なのか、②競業と情報漏洩の観点だけを禁じているのか。許可制なら、正面から申請したほうが安全です。近年は副業制度が「ある」企業が60.7%まで増えており、申請自体は珍しくありません。

Q2. 副業から正社員になった場合、経歴書にはどう書きますか?

業務委託期間も職務経歴として書けます。「2025年4月〜2025年9月 業務委託/2025年10月〜 正社員」と契約形態を明記して並べるのが誠実で、評価もされます。むしろ「入社前から関与していた」という事実は、コミットの強さの証明になります。

Q3. 副業中に正社員化の話が出ません。どのくらい待つべきですか?

6ヶ月が目安です。3ヶ月目に期待値を確認し、6ヶ月で具体的な話が出なければ、その会社に決める意思がないか、決められる状態にないかのどちらかです。あなたのキャリアの時間も有限です。

Q4. 業務委託の単価はどう決めればいいですか?

副業の時給は平均3,617円・中央値2,083円ですが、これは全職種の平均です。専門職なら時給5,000〜10,000円、CxOクラスの顧問なら月額20万〜50万円が実務上のレンジです。最初に安く入ると、正社員化時の年収交渉も安い基準から始まります。ここは最初が肝心です。

Q5. 副業先の会社が潰れそうな気配です。どう判断しますか?

①請求書の支払いが遅れる、②役員が辞める、③調達の話が半年以上進まない。この3つが揃ったら距離を取ってください。業務委託には雇用保険も傷病手当金もありません。赤字企業への転職判断は赤字ベンチャーに転職する前に確認すべき点も参考にしてください。

Q6. 未経験の職種に、副業から入ることはできますか?

難しいですが、不可能ではありません。ただしスタートアップの副業は即戦力前提なので、育成の余地はほぼありません。未経験から入るなら、副業ではなく正社員でポテンシャル採用を狙うほうが現実的です。詳しくはポテンシャル採用とは?をご覧ください。

Q7. 複数社で副業したほうが有利ですか?

比較材料は増えますが、1社あたりの成果が薄くなり、どこからも正社員化の声がかからないという結果になりがちです。転職の入口として使うなら、1社に絞って深く入るほうが確実です。

Q8. どんな副業から始めればいいかわかりません。

転職に繋げたいなら、本業のスキルの隣接領域から始めてください。まったく違う分野の副業は収入にはなっても、キャリアの接続にはなりません。職種ごとの選択肢はおすすめの副業55選で全体像を掴んだうえで、スタートアップの実務に近いものを選ぶのがおすすめです。

まとめ

副業・業務委託は、いまやスタートアップ転職の主要な入口のひとつです。副業経験者の6.7%、20代の13.6%が副業先へ転職し、受入企業の55.6%が副業人材の転職受入を経験している——これが2026年時点の現実です。

ただし、成功する人の共通点はシンプルでした。

  • 手を広げず、3ヶ月で代替不可能な領域を1つ作る
  • 期待値を口頭ではなく文字で握る
  • 6ヶ月で区切り、自分から切り出す
  • 業務委託の単価と正社員年収を正しく換算する(×0.75〜0.8)
  • 契約と競業避止を、始める前に確認する

逆に、これらを飛ばすと「便利な外注のまま1年半」という結末になります。私が見てきた失敗は、能力の問題ではなく、ほぼすべてが設計の問題でした。

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップの経営幹部から現場のキーマンまで、幅広くご支援しています。「副業から入るべきか、正社員で決め切るべきか」という段階のご相談も歓迎です。全体像を先に掴みたい方はベンチャー転職 完全ガイドも併せてご覧ください。まずはお気軽にご相談ください。

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東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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