ベンチャー・スタートアップの離職率の真実【2026年最新版】全国平均との比較・フェーズ別の許容ライン・調べ方を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野です。

「気になっているスタートアップを調べたら、社員の入れ替わりが激しいようです。やめた方がいいでしょうか」——年間で数十件はいただく相談です。結論を先に言うと、離職率の数字だけを見て判断するのは、ほぼ確実に間違えます。ベンチャー・スタートアップの離職率は「高い=悪い会社」ではなく、成長フェーズ・売上成長率・誰が辞めているかの3点とセットで初めて意味を持つ指標だからです。

まず基準となる一次データを置きます。厚生労働省「雇用動向調査」によれば、日本全体の年間離職率は令和5年(2023年)で15.4%、令和6年(2024年)は入職率・離職率ともに低下し、直近の令和7年(2025年)上半期も引き続き低下しています。産業別に見ると情報通信業の離職率は12.4%と全産業平均より低い一方、宿泊・飲食サービス業は20%台後半に達します。つまり「離職率15%前後」は、日本企業としてごく普通の水準です。

この記事では、①フェーズ別に見た許容離職率の目安/②「良い入れ替わり」と「悪い入れ替わり」の見分け方/③離職率を調べる7つの方法/④面接で角を立てずに離職率を聞き出す質問例/⑤離職率が高い会社に入って正解だった人・失敗した人/⑥年代別のリスク許容度/⑦FAQ8問——を、私自身が数百人を送り込んできた実感と公的データで整理します。ベンチャー転職の全体像はベンチャー転職完全ガイド、避けるべき企業の見極めはおすすめしないベンチャー企業の特徴を併読してください。

目次

結論:フェーズ別の許容離職率 一覧

私が相談を受けたときに使っている判断の目安です。同じ離職率20%でも、シードなら気にしなくていいし、レイターなら黄信号——この差が最も重要です。

フェーズ 目安の従業員数 離職率の実態 許容ライン(私の基準) 見るべき指標
シード 〜10名 そもそも統計にならない。1〜2年で大半が入れ替わることも珍しくない 気にしても意味がない 創業者が辞めていないか
アーリー(シリーズA前後) 10〜40名 年20〜40%も普通。事業ピボットのたびに入れ替わる 50%までは驚かない PMF到達の有無・売上成長率
ミドル(シリーズB〜C) 40〜150名 組織づくりが始まり、合わない人が抜ける時期 20%前後まで許容 「10→100」人材への入れ替えか
レイター(N-2〜N-1期) 150名〜 監査法人が入り、労務管理が整い始める 約15%が上限。20%超は黄信号 入社1年未満の退職率
上場後 一般的な上場企業と同じ管理水準が求められる 10%前後が健全 管理部門・エンジニアの定着

もうひとつ、フェーズを問わず使える基準が「入社1年未満の退職率」です。私の感覚では、入社1年以内の退職が30%を超えていたら明確に高い、20%でもやや高い、10%前後なら『まあそんなものでしょう』。この指標は採用のミスマッチとオンボーディングの質を同時に映すので、離職率全体よりよほど参考になります。

そもそも「離職率」の定義が会社によって違う

意外と知られていませんが、離職率という言葉の定義は法律で決まっていません。厚生労働省の雇用動向調査は「年初の常用労働者数に対する、1年間の離職者数の割合」で算出しますが、企業が採用広報で使う数字はバラバラです。

  • 分母のごまかし:年末時点の従業員数(=増えた後の数)を分母にすると、離職率は小さく見える
  • 期間のごまかし:直近3ヶ月だけを切り取る、あるいは新卒だけの数字を出す
  • 雇用形態のごまかし:業務委託・派遣・アルバイトを除外し、正社員だけで計算する
  • 合意退職の除外:会社都合の退職・役員の退任を数に入れない

ですから、面接で「離職率は何%ですか」と聞いて返ってきた数字をそのまま信じるのは危険です。「どう計算した数字ですか」まで聞いて初めて意味を持ちます。離職率の計算方法そのものは離職率の計算方法で解説しています。

「良い入れ替わり」と「悪い入れ替わり」の決定的な違い

良い入れ替わり:売上・利益が伸びている中での入れ替わり

大前提として、会社の売上や利益が伸びている中での人の入れ替わりは、ほとんど問題になりません

SaaSでいうT2D3(ARRを3倍・3倍・2倍・2倍・2倍と伸ばしていく成長モデル)のような急成長ができていれば言うことなしですが、そこまででなくても、株式投資の世界でよく使われる「売上高成長率+営業利益成長率の合算が40%以上」という水準をクリアしているなら、私は問題視しません。

なぜか。会社の成長速度についていけない人が出るのは、成長企業では必然だからです。3年で従業員が5倍になれば、求められる仕事の質も量も別物になります。そこで抜ける人が出るのは組織の失敗ではなく、成長のコストです。

悪い入れ替わり:キーマンかつ評判の良い人が辞める

一方で私が心配するのは、その会社のキーマンで、かつ社内外の評判も良い人が辞めるケースです。「この人がいるからこの会社は回っている」と誰もが認める人が抜けるとき、その裏側にはたいてい経営陣の不一致か、事業計画の下方修正があります。

ただし、これは外部から見抜くのが本当に難しい。ここで多くの人が判断を誤ります。

ナンバー2・3の退任は、必ずしも悪い兆候ではない

ナンバー2・ナンバー3が辞めた場合も、短絡的に危険信号と決めつけないでください。会社が0→1(ゼロイチ)や1→10(イチジュウ)のときに凄まじく活躍する人と、10→100・100→1,000のときに活躍する人は、まったく別のタイプです

初期に活躍するのは、マネジメントは得意でなくても個人の能力が突出していて、マルチタスクを一人で完結できるスーパープレイヤー型・スーパー執行役員型。一方、会社を大きくする段階では、大きな組織と大きな金額を動かし、関係各所を調整して結果を出す「優秀なビジネスパーソン型」が力を発揮します。

前者のタイプが、組織が大きくなったタイミングで抜けていくのは必然です。これは会社が悪いわけでも、その人が悪いわけでもありません。逆に「この人こそが今この会社に必要なんじゃないの?」という人が辞めた場合は、率直に言ってまずい兆候です。

誰が辞めたか 読み取り方 危険度
0→1期に活躍したプレイヤー型の幹部 フェーズ移行に伴う自然な入れ替わり
成長についていけない中堅・若手 成長のコスト。売上が伸びていれば問題なし
入社1年未満の社員が続けて複数名 採用のミスマッチ or オンボーディング崩壊
CFO・管理部長など上場準備の中核 IPOスケジュール後退の可能性
社内外の評判が良いキーマン 経営陣の不一致・事業計画の下方修正
半年でCxOが2名以上 経営の意思決定が壊れている 最高

シード・アーリーで離職率を気にしても意味がない理由

シード・アーリーのスタートアップでは、そもそも離職率というデータに残らないレベルで人が辞めています。1年・2年で入った人がほとんど辞めてしまっているケースも珍しくありませんし、それは経営陣も含めてです。

理由は単純で、この時期の会社はビジネスモデルそのものが確定していないからです。ピボット(事業転換)が起きれば、必要な人材要件が丸ごと変わります。セールス中心の組織がプロダクト中心に変わることもあれば、BtoCからBtoBに転換して営業チームが総入れ替えになることもあります。

ですから、シード・アーリーで見るべきは離職率ではなく「創業者・共同創業者が残っているか」「直近の資金調達がいつか」「ランウェイ(資金余命)はどれくらいか」です。フェーズごとの転職判断はスタートアップのフェーズ別 転職ガイドで詳しく解説しています。

レイター(上場準備期)の許容ラインは約15%

監査法人が入って「あとN-1期でN期になる」「あと半年・1年で上場」というレイターレベルの会社については、話が変わります。私の基準では、この段階の離職率の許容ラインは約15%です。

理由は3つあります。

  1. 労務管理が上場審査の対象になる:未払い残業・36協定違反・高すぎる離職率は、主幹事証券や監査法人から必ず突っ込まれます
  2. 組織が回り始めていなければおかしい時期:この段階でまだ人が定着しないのは、事業ではなく組織の問題です
  3. 採用競争力が上がっている時期:知名度もSOも武器になる段階で人が抜けるのは、内部に理由があるということ

先ほども触れましたが、定義次第で数字は動きます。入社1年経過者のうち30%が辞めていたら明確に高い。1年未満の退職が20%でもやや高い。10%程度なら普通、15%でも許容範囲——これが私の見立てです。

なお、ビジネスモデルが確定していない時期には入れ替わりが起きるのが当たり前で、1年で約50%入れ替わっていても、フェーズによってはそこまで驚きません(100%というのは社長が辞めない限りありえませんが)。大事なのは数字そのものではなく、「これから組織のコンディションが良くなっていく局面か、悪くなっていく局面か」です。良くなるタイミングで入った方が、当然うまくいきます。

ベンチャーの離職率が構造的に高くなる5つの理由

「そもそもなぜベンチャーは人が辞めるのか」を理解しておくと、目の前の数字が「危険な離職」なのか「必然の離職」なのかを切り分けられるようになります。私が見てきた範囲では、理由は次の5つにほぼ集約されます。

  1. 求められる役割が1年ごとに変わる:入社時は「何でもやる」だったのが、1年後には「この領域の専門家であれ」に変わる。ここで期待値がずれて辞める人が最も多い
  2. 年齢構成が20代〜30代前半に偏っている:そもそも転職・独立の意思決定をしやすい年代が集中しているため、統計上も離職率は高く出ます
  3. キャリアの踏み台として使う人が一定数いる:「スタートアップで2年経験を積んで独立する」と最初から決めている人がいて、これは会社側も織り込み済み。悪い離職ではありません
  4. 評価制度と等級が未整備:昇給ロジックが不透明だと、市場価値が上がった人ほど外に目が向きます
  5. 採用時の見極めが甘くなる時期がある:資金調達直後は採用を急ぐため、基準が緩む。その半年〜1年後にまとまって離職が発生します

この5つのうち、1・3・5は健全な会社でも起きるものです。逆に、2以外の理由が見当たらないのに離職率だけが高い会社は、経営か組織に固有の問題を抱えている可能性が高いと考えてください。

参考:産業別の離職率(厚生労働省・雇用動向調査)

「ベンチャーは離職率が高い」と言われますが、日本全体の産業別データと並べると印象が変わります。

区分 年間離職率の水準 コメント
全産業(令和5年) 15.4% 入職率16.4%で入職超過。令和6年・令和7年上半期は低下傾向
情報通信業 約12.4% IT・SaaSスタートアップの多くが属する。全産業平均より低い
宿泊業・飲食サービス業 20%台後半 産業別では最も高い水準
新卒(小規模事業所) 30〜40% 3年以内離職率。企業規模が小さいほど高い

この表を見てわかるのは、「情報通信業のスタートアップで離職率15%」は、日本の平均より少し高い程度でしかないということです。数字そのものに驚く必要はありません。驚くべきは、その数字の内訳が説明できない会社の方です。

離職率を調べる7つの方法

「どうやって調べればいいのか」が最大の実務課題です。私が実際に使っている7つの手段を、精度の高い順に並べます。

# 方法 精度 コメント
1 業界に長くいる人・投資家に直接聞く 非常に高い 最強。ただし人脈が要る
2 元従業員・現従業員にカジュアル面談で会う 高い リファラル経由なら本音が出る
3 LinkedInで在籍者の在籍期間を並べて見る 高い 「在籍1年未満が異様に多い」は一目でわかる
4 担当エージェントに過去の紹介実績と定着状況を聞く 中〜高 正直に答えるエージェントかどうかの試金石にもなる
5 有価証券報告書・成長可能性に関する説明資料(上場企業) 高い 従業員数の推移と平均勤続年数が載る
6 口コミサイト(OpenWork等) 数が少ない・不自然に高評価は逆に要注意
7 求人票の掲載履歴を追う 同じポジションが半年以上出続けている=定着していない

特に3のLinkedIn確認は、誰でも今日からできて効果が高いのでおすすめです。会社名で検索して在籍者を一覧し、「開始年月」を並べて見る。直近1年の入社者ばかりで2〜3年在籍者が薄いなら、その会社は人が定着していません。

面接で角を立てずに離職率を聞き出す質問例

「離職率は何%ですか」とストレートに聞くのは、正直あまり印象が良くありません。私が候補者にすすめているのは、事実を数字で確認できて、かつ前向きに聞こえる質問です。

  1. 「直近2年で、従業員数は何名から何名に増えましたか」——採用数と純増数の差から離職数が推定できる
  2. 「このポジションは新設ですか、それとも欠員補充ですか」——欠員補充なら「前任の方はどのようなご経験の方でしたか」まで聞く
  3. 「今いちばん採用に苦戦している職種はどこですか」——構造的に人が抜けている部署がわかる
  4. 「入社された方が最初の3ヶ月でつまずきやすいのはどんなところですか」——オンボーディングの実態が出る
  5. 「直近1年で経営体制の変更はありましたか」——CxO交代の有無を自然に確認できる
  6. 「3年以上在籍されている方は、どんなタイプの方が多いですか」——定着している人物像=求められる人物像

特に6番目は秀逸で、答えられない会社は3年在籍者がほぼいないということです。私の経験上、これで組織の実態はかなり見えます。面接での質問設計全般はベンチャー転職の面接対策も参考にしてください。

離職率が高い会社に入って正解だった人・失敗した人

正解だったケース:成長痛型の入れ替わり

私が支援した30代のセールスマネージャーの例です。転職先は当時従業員80名、直近1年の離職率が約25%。数字だけ見れば高い。しかしARRは前年比2.4倍、辞めていたのはほぼ全員が「創業期の営業スタイルから脱却できなかった人」でした。彼は入社2年でVP of Salesになり、上場時にはSOも行使できました。

この判断ができたのは、離職率という数字ではなく「誰が、なぜ辞めているか」を面接とリファレンスで確認できたからです。

失敗したケース:静かに悪化していた組織

逆の例です。40代で大手から転職した方。離職率は表向き12%と低く、口コミサイトの評価も悪くなかった。しかし入社してみると業務委託とパートを分母から除外した数字で、正社員の実態は25%超。さらに直近半年でCFOと人事責任者が続けて退任していました。彼は10ヶ月で再転職しています。

この2つを分けたのは、離職率の高低ではなく、数字の定義と背景を確認したかどうかです。転職後に後悔しないための考え方はベンチャー転職 失敗・後悔ガイドにまとめています。

離職率が高い会社を避けるべき人・気にしなくていい人

離職率を強く気にすべき人 離職率をあまり気にしなくていい人
住宅ローン・教育費など固定費が大きい 独身・貯蓄に余裕がある
転職回数がすでに4回以上 転職回数が少なく、次で腰を据えたい必然性がない
整った環境でこそ力を発揮するタイプ 環境が未整備な方が動きやすいタイプ
年収を落とせない SO・裁量を年収より優先できる
専門性が特定業界に閉じている 職種の専門性が業界を越えて通用する
40代以降で再転職の難度が上がっている 20代〜30代前半で市場価値の伸びしろが大きい

年代別:許容できる離職率の考え方

20代:離職率はほぼ気にしなくていい

20代であれば、離職率が高い会社でも「そこで何を得られるか」を優先していいと私は考えます。仮に1〜2年で会社が傾いても、20代なら市場は必ず拾ってくれます。むしろシード・アーリーで裁量を持って修羅場を経験した20代は、その後のキャリアで圧倒的に強い。年齢別転職ガイドも参考にしてください。

30代:フェーズと離職理由の中身を見る

30代は判断が最も難しい年代です。ミドル以降のフェーズで離職率20%を超えている会社は、理由を必ず突き止めてから入るべき。逆にアーリーで離職率が高くても、事業の勝ち筋と経営者への信頼があるなら勝負する価値は十分あります。

40代以降:レイター・上場後を基本線に

40代以降で家庭の固定費がある方には、レイター以降で離職率15%以内、直近1年でCxOの退任がない会社を基本線としてすすめています。ここを外すと、失敗したときの再起動コストが年々重くなるからです。40代のベンチャー転職も併せてどうぞ。

自分が「離職率の1人」にならないための3つの準備

離職率を調べるのは、突き詰めれば「自分が1年後に辞めていないため」です。私が候補者にお願いしているのは、会社を調べることと同じくらい、自分側の準備をすることです。

準備1:入社3ヶ月で何ができていればOKかを、文書で握る

オファー面談の段階で「入社3ヶ月後、どういう状態になっていたら期待どおりですか」と聞き、返ってきた答えをメールで送り返して確認する。これをやるだけで、入社後のミスマッチは体感で半分以下になります。曖昧な答えしか返ってこない会社は、その時点で警戒すべきです。

準備2:直属の上司と、その上司の在籍期間を確認する

ベンチャーで早期退職する人の理由で最も多いのは、事業でも年収でもなく「入社時に想定していた上司がいなくなった」ことです。直属の上司が入社半年以内なら、その人自身も定着していない可能性があります。

準備3:最初の90日の立ち上がり計画を自分で作る

誰も用意してくれません。30日で全体像の把握、60日で最初の小さな成果、90日で自分の役割の再定義——この形を自分で持っておくと、組織が多少混乱していても自分のペースを崩さずに済みます。詳しくは転職後の最初の90日にまとめました。

企業側の視点:離職率を下げるために経営がやるべきこと

採用する側の相談も多いので、こちらも触れておきます。私が見てきた中で、離職率が下がる会社に共通するのは「採用基準を上げること」ではなく「入社後30日・90日の設計をすること」です。

  • 期待値の言語化:入社3ヶ月で何ができていればOKかを、オファー面談の段階で文書にする
  • 1on1の仕組み化:週次で15分、最初の3ヶ月だけでも必ず回す
  • フェーズ変化の予告:「1年後には組織が2倍になり、あなたの仕事は変わる」と先に伝える
  • 辞める人を悪者にしない:卒業を前向きに扱う会社の方が、結果的に定着率も採用力も高い

採用側の体制づくりはスタートアップ採用ガイドにまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1. ベンチャーの離職率の「平均」はありますか?

フェーズが違いすぎるため、業界平均という数字はほとんど意味を持ちません。参考値として、厚生労働省の雇用動向調査による日本全体の年間離職率は令和5年で15.4%、情報通信業は12.4%です。スタートアップはこれを上回るのが普通で、シード・アーリーなら20〜40%も珍しくありません。

Q2. 離職率が30%を超える会社は避けるべきですか?

フェーズ次第です。シード・アーリーなら十分ありえる数字で、売上が伸びていれば問題視しません。レイター・上場後で30%なら、明確に危険信号として扱います。

Q3. 面接で離職率を聞くと不利になりませんか?

直接「何%ですか」と聞くと、答えづらいうえに印象も良くありません。本記事の質問例のように従業員数の推移・欠員補充かどうか・3年以上在籍者の人物像から確認するのがおすすめです。良い会社ほど、これらには誠実に答えてくれます。

Q4. 口コミサイトの評価はどこまで信じていいですか?

件数が少ない会社の口コミは統計になりません。目安として投稿件数が30件未満なら参考程度。また、不自然に高評価が並ぶ、あるいは同時期の投稿が集中している場合は、社内で書かせている可能性があります。「経営陣」への言及がネガティブに集中しているときだけは、件数が少なくても私は重く見ます。

Q5. CxOが辞めた会社は避けるべきですか?

1名なら理由次第です。フェーズ移行に伴う交代なら健全な場合もあります。ただし半年でCxOが2名以上、あるいはCFO・管理部長が上場準備の途中で抜けた場合は、IPOスケジュールの後退や経営陣の不一致を疑うべきです。

Q6. 離職率が低すぎる会社はどうですか?

成長企業で離職率が極端に低い(5%未満)場合、組織が新陳代謝していない、あるいは既存メンバーが動けない事情がある可能性があります。もちろん本当にエンゲージメントが高いだけの会社もあるので、こちらは「なぜ低いのか」を聞けば大抵わかります。

Q7. 入社してから離職率が高いと気づきました。どうすべきですか?

まず3ヶ月は判断を保留することをすすめます。そのうえで、①事業の売上が伸びているか、②自分の直属の上司が残りそうか、③自分の市場価値が上がる仕事をしているか——の3点で判断してください。3つとも×なら、早めに動いた方がいい。ベンチャー転職後の早期退職も参考になります。

Q8. 転職エージェントは離職率を教えてくれますか?

正直に教えてくれるエージェントと、そうでないエージェントがいます。「御社がこの会社に紹介した方は、何名が何年続いていますか」と聞いてみてください。実績ベースで答えられるかどうかが、そのエージェントの誠実さと情報量を測る良い質問になります。転職エージェント選び方ガイドもどうぞ。

まとめ:離職率は「数字」ではなく「文脈」で読む

  • 日本全体の離職率は15.4%(令和5年)、情報通信業は12.4%。15%前後はごく普通の水準
  • シード・アーリーの離職率は気にしても意味がない。見るべきは創業者の在籍とランウェイ
  • レイター(N-2〜N-1期)の許容ラインは約15%。20%超は黄信号
  • フェーズを問わず効く指標は「入社1年未満の退職率」。30%超で明確に高い
  • 売上・利益が伸びている(売上高成長率+営業利益成長率≧40%)中での入れ替わりは成長のコスト
  • 危険なのは評判の良いキーマンの退職、半年でCxO2名以上の退任
  • 調べ方はLinkedInの在籍期間確認が最も手軽で効果的

関連記事:ベンチャー転職完全ガイドおすすめしないベンチャー企業の特徴赤字スタートアップへの転職年収・手取りガイドCXO転職ガイド

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職相談を27年、累計で数千名の方にお受けしてきました。「この会社の離職率、実際のところどうなんですか」という具体的な社名でのご相談も歓迎です。数字の裏側にある事情は、外からは本当に見えません。判断に迷ったら、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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