こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を25年続けているキープレイヤーズの高野です。
先日もまた「ベンチャーに転職して半年で辞めることになりそうです」というご相談を受けました。ベンチャー転職の相談で、入社後のフォロー面談を担当していて感じるのは、早期退職に至る人には共通の思考パターンが3つあるということです。
本記事では、私がこの25年で見てきたベンチャー・スタートアップの早期退職事例をベースに、①期待値ギャップ ②隣の芝生症候群 ③人間関係の3大パターンを掘り下げ、2026年時点のデータと予防策、そして「どうしても合わない」ときの撤退戦略まで、率直にお伝えします。
- 2026年の転職市場で「早期退職」が増えている背景
- ベンチャー早期退職の3大失敗パターンと具体事例
- 入社3か月/半年/1年のタイミング別・判断軸
- 期待値ギャップを入社前に潰す7つの質問
- 人間関係トラブルで退職しないための3つのセーフティネット
- 年代別の早期退職リスクと再転職での注意点
- FAQ:試用期間中の退職・SO失効・次の転職への影響
- どうしても辞めるときの正しい撤退手順
2026年の転職市場──「ベンチャー早期退職」はなぜ増えているのか
厚生労働省の雇用動向調査では、2025年上半期の全体離職率は低下していますが、現場の相談ベースでは「ベンチャー入社後1年以内の相談」が明らかに増加しています。背景には3つの構造的な理由があります。
① 採用側の情報開示不足と、候補者側のリサーチ不足
SNS・口コミサイト・AI要約の普及で、情報は得やすくなっているはず。それでも「社風」「経営陣との距離」「意思決定スピード」など、入社後にしか分からない情報を聞き出さずに決める人が多い。採用側も人手不足で面接が1〜2回で終わる会社が増え、相互理解が浅いまま入社に至る構造が、2024年以降特に目立ちます。
② リモートワーク定着で、オンボーディング設計が追いつかない企業がある
フルリモート・ハイブリッド採用が標準になった一方、オンボーディング設計まで整えられていないベンチャーも多い。入社初日からSlackのやりとりだけで放置、1on1も設定されず、3か月後に「期待されていた成果が出ていない」と評価されるケースを複数聞いています。
③ 「3年3割」ならぬ「ベンチャー1年2割」の実感
新卒者の3年以内離職率は大卒33.8%/高卒37.9%(厚労省・令和4年卒)ですが、ベンチャー中途入社では「1年以内に20〜25%が離職」する実感が業界内であります。公的統計はありませんが、私の相談現場での肌感覚ではこの数字は過大ではありません。
ベンチャー早期退職の3大失敗パターン
以下は、私が過去相談を受けてきた中で、早期退職に至る人の最頻出パターン3つです。それぞれ具体事例と、起きている構造を解説します。
パターン① 期待値ギャップがある人
最も多いのがこれ。入社前のイメージと、入社後の現実のズレで心が折れるパターンです。相談現場で聞くフレーズは、たとえば次のようなもの。
| 期待したこと | 現実 | 起きている構造 |
|---|---|---|
| 「もっと教育制度があると思った」 | OJTも整わないまま即戦力扱い | シリーズA〜Bは研修工数を割けない |
| 「もっとプロダクトが強いと思った」 | PMF前で機能も磨き途中 | 採用時のピッチと開発進捗のズレ |
| 「もっと稼げると思った」 | SOの経済価値は確率付き | SOの仕組みを理解せず入社 |
| 「もっと裁量があると思った」 | 最初は実行支援が中心 | 信頼を得るまで裁量は段階的 |
| 「もっと働きやすいと思った」 | 少人数で業務兼任、残業多め | ベンチャーは1人3役が標準 |
期待値ギャップで辞めてしまう人の共通点は、「自分の期待は正しかった」と考えていること。でも実際には、ベンチャーで整った教育制度や短い残業時間を期待すること自体がミスマッチです。期待値は入社前にリアルな情報で調整するもので、入社後に埋めるものではありません。
パターン② 隣の芝生が青く見えてしまう人
「隣の芝生症候群」は転職経験者ほどかかりやすい。入社3〜6か月目、友人・元同僚と久しぶりに会って情報交換したときに発症します。
- 「X社の年収、聞いたらうちより200万円高いらしい」
- 「Y社の方が今旬のビジネスを捉えている」
- 「Z社の決算で凄い賞与が出ているらしい」
- 「元同期がIPO銘柄でSOを行使して◯千万円もらったらしい」
人間はもともと隣の芝生症候群と常に戦う生き物です。会社や仕事では特にそれが強く出ます。実はこれ、SNSの可視化が進んだ2020年代以降、確実に悪化しているテーマで、他社の成功事例がタイムラインに常時流れてくる以上、避けようがありません。
重要なのは「比較のモノサシを自分の中で持つ」こと。他人の年収やExit成功事例と比べるのではなく、自分が入社時に設定した目的と、半年後の自分の成長度合いを比べる。この視点がないと、どの会社に転職しても1年以内に辞めることになります。
パターン③ 人間関係で悩んでいる人
退職理由の表向きは「キャリア」でも、本音を掘ると人間関係が原因で辞めている人が実は最多です。上司との相性、経営陣との価値観、同僚とのコミュニケーションスタイルの違いなど、相性問題は必ずどこかで発生します。
人材紹介最大手のコトラの大西社長は、採用した方への1on1で「人間関係は合う合わないがある。合わなかったら必ず言ってほしい」と最初に伝えるそうです。相性の不一致を上司の責任にしない、部下の責任にもしない。「人事異動や配置換えで解けるかもしれないので、人事に早く相談してほしい」というスタンスを明示している。これは健全な設計です。
サイバーエージェントの曽山さん(人事統括)も同じで、グループ会社や多数の部署がある前提で、「退職を考える前に、人事と話してほしい」と明言されています。社員本人が辞めるつもりで人事に行っても、会社の中で吸収できるパスを探してくれる。
ところが、こうしたフォローを明示的に設計している会社は、業界全体で2〜3割程度。多くのベンチャーでは、人間関係の悩みを打ち明ける窓口がないまま「もういいや」で辞めてしまいます。入社前に「人事への相談ルートが整備されているか」を確認するのは、長く続けられる会社を見極める意外に効く指標です。
タイミング別・判断軸──入社3か月/半年/1年で考えるべきこと
入社0〜3か月:ノイズの9割は無視する
入社直後は、情報密度と対人関係の変化で疲弊します。この時期の「辞めたい」は体調不良の表現であることが大半。業務不明点・人間関係の不快感は、まだ本人の学習が追いついていないだけ、というケースが多い。
この時期の離脱はキャリアに最もダメージが大きい。履歴書に「3か月で退職」が残り、次の採用面接で必ず深掘りされます。試用期間満了まで走り切ることをまず推奨します。
入社4〜6か月:期待値ギャップが顕在化するフェーズ
この時期に「思っていたのと違う」が明確になるのは普通です。やるべきは、感情で判断する前に、以下を書き出すこと。
- 何が「違う」と感じているのか(事実と感情を分ける)
- その違いは、自分の努力で埋められるか/会社の構造的なものか
- 構造的なものなら、入社前に見抜けなかった情報は何か
- その情報は、会社との対話で埋められるか
構造的なミスマッチなら、直属上司・人事・1on1相手に正直に相談してみる。多くの会社は、本音で相談してくれる社員を優先的に守ります。
入社7〜12か月:撤退か継続かを冷静に判断するフェーズ
半年を超えると、入社時の期待値調整は失敗しているか成功しているかが見えます。「このままでは成長が止まる」「会社の方針に賛同できない」「体調が明確に悪化している」のいずれかに該当する場合は、真剣に次の転職を考えるタイミング。
一方で、「ベスティング前にSOを失う」「履歴書に短期離職が加算される」というダウンサイドも大きいので、感情ではなく事実ベースで判断してください。ベンチャー転職 失敗・後悔ガイドに、辞めるかどうかの判断フレームを詳しく載せています。
期待値ギャップを入社前に潰す7つの質問
私が候補者に「選考過程で絶対に聞いてください」とお伝えしている7つの質問です。
- 直近1年で「期待と違った」と言って辞めた中途社員の離脱理由は何か
- オンボーディングはどう設計されているか(1on1の頻度・メンターの有無)
- 経営陣と現場メンバーの直接会話の頻度は
- 意思決定のスピード(最後の重要判断にかかった日数)
- 平均残業時間と繁忙期の実態
- 直近3か月のKPI達成状況と、未達時のアクションは
- 人事への相談ルート・1on1以外のフィードバック機会はあるか
これらはどれも採用側の情報開示姿勢を測るテストでもあります。濁す会社は、入社後も情報が降りてこない可能性が高い。
人間関係トラブルで退職しないための3つのセーフティネット
① 社内メンターを早期に確保する
入社3か月以内に、直属上司以外の相談相手を2〜3人持つこと。他部署の先輩、同期入社の中途メンバー、人事担当者など。1人に依存すると、その人との相性が悪化したときに退路がなくなります。
② 社外の相談窓口を持っておく
キャリアコーチ、転職エージェント、以前の同僚など、社内のバイアスがかからない相談先を持ちましょう。社内で全部を解こうとすると、感情が煮詰まったときに判断を誤ります。
③ 「辞める前に人事と話す」を自分のルールにする
退職を決める前に、必ず人事または経営陣との1on1を1回入れる。多くの会社は、優秀な社員の離脱を避けたくて配置換え・業務調整などの選択肢を提示してくれます。それが出ないなら、辞める決断の裏付けにもなります。
年代別の早期退職リスクと再転職での注意点
20代:3か月の短期離脱は致命的ではないが、2回連続は危険
20代の短期離脱は1回なら理由次第で説明可能ですが、2回連続すると書類選考段階で弾かれ始めます。1社目で合わなかったときは、2社目は慎重に選び、最低2年は続ける前提で入社してください。20代のベンチャー転職完全ガイドに、年代別の判断軸をまとめています。
30代:半年未満の退職は職務経歴書で説明必須
30代の6か月未満の退職は、次の面接で必ず深掘りされます。嘘をつかず、学んだこと・次の会社で避けたい条件を言語化しておくこと。期待値ギャップで辞めた場合でも、「何を見抜けなかったか」と「次はどう見極めるか」を自分の言葉で語れれば、むしろプラスに働くこともあります。
40代以上:短期離職は年収ダウンに直結する
40代以上の短期離職は、次の転職で年収ダウン150〜300万円のリスクがあります。慎重に判断し、辞める前に必ず複数のオファーを並行で取る方が安全。40代のベンチャー転職ガイドも参照してください。
どうしても辞めるときの正しい撤退手順
覚悟を決めて辞めると決めたら、感情で動かず、次の5ステップで動いてください。
- SO・インセンティブ・退職金の処理を確認──ベスティング未達分の失効、未行使SO、退職金規程を人事に書面で確認する
- 次の職場を決めてから辞める──早期退職後の空白期間が3か月を超えると、再就職時の年収が2〜5%下がる相関が業界データで出ています
- 引き継ぎを完璧に──次の雇用主からリファレンスチェックが入ることがあるので、円満退職を強く意識する
- 退職理由をポジティブに言語化──事実ベースで、次のキャリアで実現したいことに紐づけて語れる形に整える
- 自分なりの振り返りを文章に残す──同じ失敗を次でしないため、何を見抜けなかったか・次に何を確認するかをメモに残す
FAQ:相談現場で特に多い質問
Q1. 試用期間中(3か月以内)に辞めても大丈夫?
A. 法的には可能ですが、キャリアダメージは大きい。職務経歴書に残り、次の面接で必ず深掘りされます。試用期間中の退職は、健康を害するレベルの深刻な理由(ハラスメント・体調悪化)がない限りお勧めしません。
Q2. SOがベスティング前なのですが、辞めるとどうなりますか?
A. 税制適格SOの大半は「権利行使時に在職中」が要件です。退職するとベスティング済みの分も失効するケースが大半。詳細はストックオプション完全ガイドを参照してください。
Q3. 短期離職は次の転職にどれくらい響きますか?
A. 1回なら理由次第で説明可能、2回連続なら書類通過率が明確に下がります。年代別の影響は上の「年代別の早期退職リスク」セクションを参照。
Q4. 入社前に見抜ける「辞めたくなる会社」の特徴は?
A. ①中途入社の早期離職理由を濁す ②1on1・オンボーディング設計の説明が曖昧 ③経営陣との面談時間が短い(1回15分以下) ④SO・インセンティブの詳細を文書で出さない ⑤口コミサイトでネガティブな声の傾向が一致している──このうち3つ以上該当するなら要注意です。
Q5. 辞めると決めたら、どのタイミングで言えばいい?
A. 法律上は2週間前(民法627条)、就業規則は多くが1〜3か月前。キャリアを長期で考えるなら、就業規則通りの事前告知+引き継ぎ完了が原則です。急な退職は、業界内の評判に直結します。
Q6. 「辞めるかどうか迷っている」段階で相談していい?
A. むしろ迷っている段階こそ相談するタイミングです。辞めると決めてからの相談は選択肢が狭まります。キープレイヤーズでも、「迷っている」ご相談を日常的に受けています。
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早期退職は、転職判断・ベンチャー転職全体・SO・年収構造とセットで理解すべきテーマです。以下の関連記事も参照してください。
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- 年収・手取りガイド──年収ダウンリスクの計算方法
まとめ──早期退職は「見抜けなかった情報」の問題
私が25年ベンチャー転職支援で見てきた実感として、早期退職をする方のほとんどは「人として悪い」のではなく、「入社前に見抜けなかった情報があった」だけです。期待値ギャップも、隣の芝生症候群も、人間関係の悩みも、入社前の情報収集と入社後3か月の設計で、多くは予防できます。
今まさに辞めるか悩んでいる方は、辞める前に、まず社内の相談ルート→社外の相談先→次のキャリア設計の順で動いてみてください。感情で動くと必ず後悔します。
キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップ転職の入社前リサーチ、入社後3か月のオンボーディング相談、辞めるか迷っているときのキャリア整理まで、25年の相談実績でサポートしています。「辞めたいかもしれない」と思った段階で、お気軽にご相談ください。

