こんにちは、ベンチャー・スタートアップの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。
私はこれまで4,000人以上の経営者と採用のご相談をし、178社の上場支援に関わってきました。その中で「上場時に役員はどれくらい株を持っているのか」というご質問をいただくことが非常に多いです。
今回、2026年に東証へ新規上場した全22社の有価証券届出書(Ⅰの部)を1社ずつ読み込み、取締役・CxO計140名の株式保有比率を役職別に徹底分析しました。データの出所はすべてJPX公開のⅠの部原本です。
この記事でわかること
- CEO・社長の保有割合の「平均」と「中央値」が大きく乖離する理由
- CFOの保有比率の相場と、CEOとの倍率差
- CTOがほとんど開示されない構造的な理由
- 資産管理会社を使っている社長の割合
- 転職・幹部採用・ストックオプション設計への示唆
2026年新規上場22社 ─ 役職別保有比率の全体像
まず結論を先にお見せします。2026年1月〜8月に東証へ新規上場した22社(テクニカル上場を除く)の取締役・CxO計140名を、6つの役職区分に分けて集計した結果が以下の表です。
| 役職区分 | N数 | 平均(%) | 中央値(%) | 最大(%) | 最小(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 代表取締役・社長・CEO | 22 | 34.10 | 21.41 | 92.69 | 1.62 |
| 会長 | 3 | 4.52 | 3.59 | 7.78 | 2.20 |
| 副社長・COO | 9 | 3.11 | 2.11 | 8.80 | 0.31 |
| 管理部長・CFO | 15 | 1.28 | 1.07 | 3.78 | 0.12 |
| 技術部長・CTO | 3 | 0.15 | 0.15 | 0.15 | 0.15 |
| その他役員 | 88 | 3.43 | 0.55 | 74.50 | 0.05 |
ひと目でわかるのは、CEOとその他の役員の間に圧倒的な差があるということです。CEOの平均34.10%に対して、CFOは1.28%。およそ27倍の開きがあります。
CEO・代表取締役 ─ 平均と中央値の乖離が示す「二極化」
CEOの平均保有割合は34.10%ですが、中央値は21.41%です。平均が中央値を13ポイントも上回っていることは、一部の高保有CEOが平均を引き上げていることを意味します。
実際に分布を見ると、大きく2つのパターンに分かれます。
パターン① 創業オーナー型(保有割合30%超)
個人+資産管理会社で発行済株式の過半数近くを保有しているケースです。22社中およそ半数がこのパターンに該当し、中には90%超の保有もあります。創業者が株式を手放さず上場したケースで、特にグロース市場に多く見られます。
パターン② 経営招聘型(保有割合10%以下)
外部から招聘された代表取締役が、ストックオプション(SO)やごく少数の株式のみ保有しているケースです。VCファンドやファウンダー以外の大株主が発行済の多くを持っている企業に多い構造です。
資産管理会社の利用率
22名のCEO・社長のうち、9名(41%)が資産管理会社を通じて株式を保有しています。上場時のロックアップや将来の相続・贈与の節税を見据えた設計で、特に創業オーナー型に多い傾向です。
会長 ─ 代表権の有無で保有比率が変わる
今回データが取れた会長は3名で、平均保有割合は4.52%、中央値は3.59%です。
N数が少ないため一般化は難しいですが、傾向として代表権のある会長はCEOに近い保有割合、代表権のない名誉職的な会長はSOベースの少額保有、という構図が見えます。
創業者が会長に退き、次のCEOに経営を任せたパターンでは、会長がなお最大株主のケースもあります。会長のキャリア経歴を見ると、全員がその企業の創業者または創業メンバーでした。
副社長・COO ─ No.2の保有比率の相場
副社長・COOは9名で、平均3.11%、中央値2.11%です。
CEOの中央値21.41%と比較すると、No.2の保有割合はCEOの約10分の1が一つの目安になります。ただし、共同創業者がCOOを務めているケースでは8%台と高めの保有があり、外部からのジョインでは1%以下のケースも多いです。
COO・副社長ポジションでの転職を検討されている方は、入社時にストックオプションでどれだけもらえるかが、上場時のリターンを大きく左右します。
CTO・技術トップ ─ 「開示されない」という事実が語ること
今回の22社で、取締役CTOとして大株主に名前が載った方はわずか3名でした。しかも平均保有割合は0.15%と、全カテゴリで最低です。
これは何を意味するのか。いくつかの構造的な理由があります。
- CTOが取締役でないケースが多い:上場企業では技術トップを「執行役員CTO」として置くのが一般的で、取締役には含まれません。今回も、執行役員CTOは複数社で確認されましたが、取締役CTOは少数派でした。
- 大株主の上位に入らない:仮にSOを付与されていても、保有割合が小さいため大株主リストに載らず、データとして補足できません。
- 技術系創業者はCEOに分類される:技術畑出身の創業者が代表取締役に就いている場合、統計上はCEOにカウントされます。
エンジニア・技術職でスタートアップに参画する方は、「取締役CTOなのか、執行役員CTOなのか」で開示義務もSOの設計も変わることを知っておくべきです。
CFO ─ CEOとの27倍の格差
CFOの保有割合は平均1.28%、中央値1.07%です。CEOの平均34.10%と比較すると、約27倍の差があります。
| 指標 | CEO・社長 | CFO | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 平均 | 34.10% | 1.28% | ×27 |
| 中央値 | 21.41% | 1.07% | ×20 |
| 最大 | 92.69% | 3.78% | ×25 |
22社中15社にCFO(またはCFO相当の管理部長・コーポレート本部長)が取締役として在籍しており、CFOの取締役設置率は68%です。残りの32%は、執行役員CFOとして取締役会の外に置かれているか、CFO専任者を置いていません。
CFOの前職カテゴリ
CFO15名の経歴を分析すると、以下のバックグラウンドが多いです。
- 監査法人・会計事務所出身(あずさ、EY新日本、トーマツ等)が最多
- 証券会社・金融機関出身
- 事業会社の経理・財務部門で実務経験を積んだ方
CFOとしてスタートアップに転職する場合、保有割合1%前後が相場であることを前提に、SOの条件(行使価格・信託型かどうか・ベスティング期間)を入念に確認することをお勧めします。
転職・幹部採用・SO設計への3つの示唆
① CxOとして参画する方へ ─ 「何%もらえるか」の交渉基準
今回のデータは、上場時点での最終的な保有割合です。入社時のSO付与から希薄化を経た後の数字なので、入社時点ではもう少し大きな比率が付与されていたはずです。CFOで上場時1%なら、入社時には2〜3%程度のSO割当があったと推定されます。COOなら3〜5%が目安になるでしょう。
② 採用する側の経営者へ ─ 「市場の相場」を把握しておく
CFOやCOOの採用面談で「SOは何%出せますか」と聞かれたとき、市場の相場を知らなければ答えられません。今回のデータを参考にすれば、CFOに上場時1%台、COOに2%台が一つのベンチマークになります。ただし、フェーズや現職年収からの下落幅によって上下しますので、個別にご相談ください。
③ SO設計の注意点 ─ 信託型SOの落とし穴
ストックオプションの設計には税制適格・非適格・信託型など複数の方式があり、設計を間違えると「行使貧乏」に陥るリスクがあります。特に信託型SOは2023年の国税庁通達以降、税務リスクが高まっているため、導入前に必ず専門家の助言を受けるべきです。
FAQ
Q. 個社別の全データは公開していますか?
A. 全役員の氏名・保有株式数・保有割合をまとめた完全版データは、オンラインサロン限定で公開しています。記事では役職別の集計値のみを掲載しており、個人名や個社の保有率を名指しすることは控えております。
Q. データの出所は何ですか?
A. すべて、各社の「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部)」原本です。JPXの新規上場会社情報ページに掲載されているPDFを1社ずつ読み込み、「株主の状況」表に印刷された保有割合をそのまま採用しています。自前計算による誤差は含まれていません。
Q. なぜCTOのデータが少ないのですか?
A. 多くの上場企業でCTOは「執行役員」であり「取締役」ではありません。有価証券届出書の開示義務は取締役が対象のため、執行役員CTOのSOデータは外部から確認できない構造になっています。
Q. 資産管理会社を作るメリットは?
A. 個人で株式を保有するよりも、相続・贈与の節税効果が見込めること、上場後のロックアップや売却のタイミングを法人として管理しやすいことが主なメリットです。今回の調査ではCEO・社長の41%が資産管理会社を利用していました。
Q. CFOの年収相場はどのくらいですか?
A. 上場準備フェーズのCFOは年収1,200万〜2,000万円が相場です。詳しくは別記事「スタートアップCFO転職ガイド」で解説しています。
まとめ:役職別の保有比率を知ることが、賢いキャリア選択の第一歩
2026年に新規上場した22社のデータから見えた主なポイントを整理します。
- CEO・社長の保有割合は平均34%・中央値21%で、創業オーナー型と経営招聘型の二極化が顕著
- CFOの保有割合は平均1.28%で、CEOとの差は約27倍
- CTOの取締役データはわずか3名 ── 多くは執行役員として取締役の外に置かれている
- CEO・社長の41%が資産管理会社を利用
- COO・副社長の相場は2〜3%が目安
CxOとしてスタートアップに転職する際、「自分は何%の株をもらえるのか」は交渉の大前提です。しかし、その交渉の前提となる「市場の相場」を知っている方は多くありません。
キープレイヤーズでは、これまで178社の上場支援に関わった経験を踏まえ、CxO転職のご相談を日常的にお受けしています。ストックオプションの条件の読み方から、入社後のキャリアパスまで、ぜひ一度ご相談ください。

