内定辞退・内定承諾完全ガイド【2026年最新版】承諾後でも辞退できる法的根拠・保留の伝え方・電話メール例文を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野です。1万件を超えるキャリア面談を行ってきましたが、その中で最も相談者が動揺し、判断を誤りやすいのが「内定が出たあと」の局面です。

「第一志望の結果が出る前に、別の会社から内定が出てしまった」「一度承諾したが、やはり辞退したい」「辞退したら訴えられると言われた」——毎年、必ずこうした相談を受けます。

結論からお伝えすると、内定辞退は法的に可能です。内定承諾後であっても、入社の2週間前までに申し出れば辞退できます(民法627条1項)。「承諾書を出したから辞退できない」というのは、事実ではありません。ただし、法的に可能であることと、社会人として適切に振る舞うことは別の話です。伝え方とタイミングを誤れば、業界内での評判を落とし、将来の選択肢を自分で狭めることになります。

この記事では、①内定・内定承諾の法的な位置づけ、②内定から入社までのタイムライン、③内定保留の依頼方法と例文、④複数内定の比較フレーム、⑤辞退の伝え方【電話・メール例文9パターン】、⑥承諾後に辞退する場合のリスクと実際、⑦損害賠償請求の現実、⑧やってはいけない辞退7パターン、⑨年代別のアドバイス、⑩相談事例——を、エージェント側として企業と求職者の双方を見てきた立場から解説します。

目次

結論:内定辞退は「法的には自由、実務上はマナーがすべて」

論点 結論 根拠・補足
①辞退はできるのか できる 職業選択の自由(憲法22条)/民法627条1項
②承諾後でも辞退できるか できる 入社2週間前までの申し出で法的に有効
③損害賠償を請求されるか 原則されない 無断・音信不通など著しい信義則違反の場合のみ例外
④保留はどこまで可能か 1週間が目安、最長2週間 それ以上は企業側の採用計画が崩れる
⑤連絡手段は 電話が原則 メールのみは不誠実と受け取られる

私の実感:内定辞退で本当に問題になるのは、法律ではなく「どう伝えたか」です。誠実に、早く、直接伝えた方が後々トラブルになったケースを、私はほとんど見たことがありません。逆に、連絡を先延ばしにして音信不通になった方は、数年後に同じ業界で気まずい再会をしています。転職市場は、思っているよりずっと狭いのです。

そもそも「内定」とは何か——法的な位置づけを正しく理解する

内定=労働契約はすでに成立している

意外に知られていないのですが、企業から内定通知が出て、あなたがそれを承諾した時点で、労働契約は法的に成立しています。正確には「始期付解約権留保付労働契約」と呼ばれる状態です。

段階 法的な状態 辞退の可否
選考中 契約関係なし 自由に辞退可
内定通知を受領(未承諾) 申し込みを受けた状態 自由に辞退可
内定承諾(口頭含む) 労働契約が成立 解約の申し入れで辞退可(2週間前まで)
入社後 労働契約が発効 退職手続きが必要

ここで重要なのは、契約が成立していても、辞退(解約の申し入れ)は可能だということです。民法627条1項は次のように定めています。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

つまり入社予定日の2週間前までに申し出れば、法的には何の問題もなく辞退できます。「承諾書に判を押したから無理」という説明は、法的根拠がありません。

口頭の内定・口頭の承諾にも効力はある

「まだ書面をもらっていないから」と軽く考える方がいますが、口頭でのやり取りにも法的効力があります。電話で「ぜひお願いします」と答えた時点で、承諾したとみなされる可能性があります。逆に、企業側からの口頭内定も同様に効力を持ちます。この論点は口頭内定は取り消せるのか!?その効力は?で詳しく解説しています。

内定辞退率の実態

中途採用における内定辞退率は、平均で7.9%〜10%前後とされています(マイナビ「中途採用状況調査」ほか)。新卒採用に比べると低い水準です。

ただし、doda転職求人倍率が2026年6月時点で2.55倍(前年同月差+0.22ポイント)と求職者有利の市場が続いているため、複数内定を得る方が増え、辞退の場面に直面する確率は上がっています。企業側も辞退を織り込んで採用活動を行っているので、必要以上に罪悪感を持つ必要はありません。

内定から入社までのタイムライン

タイミング やること 目安期間
最終面接
内定連絡 条件面の確認、労働条件通知書の受領 最終面接から3日〜1週間
オファー面談 年収・役職・入社日・裁量範囲の確認と交渉 内定後1週間以内
回答期限 承諾・保留・辞退の意思表示 通常1週間、最長2週間
内定承諾 内定承諾書の提出 回答期限まで
退職交渉 現職への退職申し出 承諾後すぐ
入社 承諾から1〜3か月後

労働条件通知書が届く前に承諾しないでください。「聞いていた年収と違った」というトラブルの大半は、書面確認前に口頭で承諾したケースです。確認すべき項目はオファー面談・条件交渉完全ガイドに15項目のチェックリストとしてまとめています。

内定保留:どこまで待ってもらえるか

目安は1週間、最長で2週間

企業が許容する保留期間は、原則1週間程度です。事情を説明すれば10日〜2週間まで延ばせるケースもありますが、それ以上は現実的ではありません。企業側にも採用計画と、他の候補者への回答期限があるからです。

保留期間 企業側の受け止め 成功率
〜3日 ほぼ問題なし ほぼ100%
1週間 標準的。理由不要なことも多い 高い
10日〜2週間 理由が必要。他社選考中と伝えるのが一般的 中程度
3週間以上 志望度が低いと判断されるリスク 低い。内定取消の可能性も

保留を依頼するときの3原則

  • ①具体的な期日を自分から提示する——「少し待ってほしい」ではなく「◯月◯日までにご返答します」
  • ②理由を正直に伝える——「他社の選考が最終段階にあり、比較したうえで誠実に判断したい」で十分
  • ③志望度が高いことを併せて伝える——保留=志望度が低い、と受け取られないようにする

内定保留を依頼する電話・メールの例文

【メール例文:内定保留の依頼】

件名:内定のご連絡に関するご相談(山田太郎)

株式会社◯◯
人事部 ◯◯様

お世話になっております。山田太郎です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。貴社で働かせていただける機会をいただけたこと、大変光栄に思っております。

大変恐縮なのですが、現在他社の選考が最終段階にあり、自身のキャリアにとって最善の判断をするため、比較検討のお時間をいただけないでしょうか。

◯月◯日(◯)までに、必ずご返答いたします。

貴社への志望度が高いことに変わりはございません。ご迷惑をおかけし恐縮ですが、何卒ご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

ポイントは「期日を自分から切る」こと。これがあるだけで、印象がまったく違います。転職エージェント経由の場合は、担当者に依頼すれば代わりに伝えてくれます。エージェントの使い方は転職エージェントとはで基本から解説しています。

複数内定をもらったときの比較フレーム

複数内定は嬉しい状況ですが、判断軸が曖昧だと年収だけで決めてしまい、後悔します。私が相談者に必ず使ってもらっているのが、次の7軸のスコアリングです。

判断軸 見るべきポイント 重み付けの目安
①事業の成長性 市場は伸びているか、その中でシェアを取れているか 最重要。5年後の年収を決める
②任される役割の裁量 意思決定にどこまで関われるか 高い。成長速度に直結
③直属の上司 面接で会えたか。尊敬できるか 非常に高い。定着率を左右する
④年収・報酬パッケージ 固定給/賞与/SO/各種手当の内訳 中。目先の額面だけで判断しない
⑤働き方 リモート可否、実際の残業時間、評価制度 中〜高。生活の質に直結
⑥3年後の市場価値 その仕事をして、次の選択肢は増えるか 高い。キャリアの複利効果
⑦カルチャーフィット 社員と話して違和感がなかったか 中。ただし違和感は無視しない

私が最も重視するよう伝えているのは③の「直属の上司」です。会社が良くても上司が合わなければ、日々の仕事は苦痛になります。逆に、多少条件が劣っても尊敬できる上司の下では人は伸びます。オファーが出た段階で「直属の上司になる方と、もう一度お話しさせていただけませんか」と依頼してください。断る企業はまずありません。

報酬パッケージの評価軸は年収・手取りガイドを、ベンチャーの場合のストックオプションを含む考え方はベンチャー転職の年収交渉術を参照してください。

内定辞退の伝え方【電話・メール例文】

大原則:電話で、できるだけ早く

連絡手段は電話が原則です。メールのみで済ませると、不誠実だと受け取られます。特に最終面接で役員が出てきた企業、社長が直接会った企業では、電話一本の有無が印象を大きく左右します。

そしてタイミングは「決めた瞬間」です。言いにくいからと1日先延ばしにするたびに、企業側の他候補者への対応が遅れ、迷惑の量が増えていきます。

【電話例文①】内定承諾前の辞退

お世話になっております。先日、内定のご連絡をいただきました山田太郎です。人事の◯◯様はいらっしゃいますでしょうか。

(担当者につながったら)

このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。大変恐縮なのですが、慎重に検討させていただいた結果、今回は内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。

複数社を比較検討した結果、自身のキャリアの方向性を踏まえ、他社様にお世話になることを決断いたしました。

貴重なお時間をいただき、何度も面接の機会をくださったにもかかわらず、このようなご返答となり誠に申し訳ございません。◯◯様にご対応いただいたことは大変ありがたく思っております。本当にありがとうございました。

【電話例文②】内定承諾後の辞退

お世話になっております。◯月◯日入社予定の山田太郎です。

大変申し上げにくいのですが、一度内定を承諾させていただいたにもかかわらず、入社を辞退させていただきたくご連絡いたしました。ご迷惑をおかけすることになり、誠に申し訳ございません。

(理由を簡潔に)承諾後に◯◯という事情が生じ、家族とも相談したうえで、やむを得ずこの判断に至りました。

入社の準備を進めていただいていた中で、このようなご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。本当に申し訳ございませんでした。

承諾後の辞退では、言い訳をしないことが最も大切です。謝罪し、事実を簡潔に伝える。長々と正当化すると、かえって心証を悪くします。

【メール例文③】電話がつながらない場合

件名:内定辞退のご連絡(山田太郎)

株式会社◯◯
人事部 ◯◯様

お世話になっております。山田太郎です。
先ほどお電話を差し上げましたが、ご不在のようでしたのでメールにて失礼いたします。

このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。大変恐縮ですが、慎重に検討を重ねた結果、内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。

選考にあたり多くのお時間を割いていただいたにもかかわらず、このようなご返答となりましたこと、心よりお詫び申し上げます。

あらためてお電話でもご連絡させていただきます。何卒よろしくお願い申し上げます。

メールを送っても、必ず後で電話をかけ直してください。「メールを送ったから終わり」にしないことが、社会人としての最低ラインです。

【例文④】転職エージェント経由の場合

エージェント経由で応募した場合は、まず担当者に電話で伝えます。企業への連絡は担当者が代行してくれるのが原則です。

お世話になっております。山田です。
ご紹介いただいた株式会社◯◯様の件ですが、慎重に検討した結果、辞退させていただきたいと考えております。お力添えいただいたにもかかわらず、申し訳ございません。

理由としては、他社様と比較したうえで◯◯の観点で判断いたしました。企業様へのご連絡について、ご相談させていただけますでしょうか。

ここで注意点があります。エージェントは成功報酬型のビジネスであるため、辞退を強く引き止められることがあります。「今からでは辞退できない」「先方が激怒する」といった言い方をされることもありますが、辞退は法的に可能です。あなたの人生の決定権は、あなたにあります。この構造については転職エージェント選び方ガイド悪質な転職エージェントの特徴7選で詳しく書いています。

内定承諾後の辞退——リスクと現実

損害賠償を請求されることはあるのか

最も多い不安がこれです。結論を先に書きます。

通常の内定辞退で損害賠償を請求されることは、まずありません。職業選択の自由(憲法22条)が保障されており、辞退そのものは違法ではないからです。

ただし、例外的に責任が問われうるケースはあります。

ケース 賠償リスク 理由
期限内に電話・メールで丁寧に辞退 ほぼゼロ 職業選択の自由の範囲内
入社直前の辞退(理由を説明) 低い 迷惑度は高いが違法ではない
無断で辞退し、以後音信不通 あり得る 著しい信義則違反
辞退意思を隠し、企業に準備をさせ続けた あり得る 不誠実な態様と評価される
入社を前提に企業が多額の実費を支出した後の辞退 限定的にあり得る 引越費用・研修費などの実費相当分

ポイントは「辞退したこと」ではなく「辞退の仕方」が問題にされるという点です。無断で消えるのではなく、きちんと連絡を取り、謝罪する。それだけでリスクはほぼ消えます。

なお、企業から損害賠償をちらつかせて辞退を思いとどまらせようとするケースがまれにありますが、実際に訴訟に至る例はほとんどありません。コストに見合わないからです。もし強硬な対応を受けたら、労働問題に詳しい弁護士や、お住まいの労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。

内定承諾書に法的拘束力はあるのか

内定承諾書は、入社の意思を確認する書面であり、辞退を禁じる効力はありません。「違約金を支払う」といった条項が入っていたとしても、労働基準法16条(賠償予定の禁止)に抵触するため無効です。

それでも承諾後の辞退を避けるべき理由

法的に可能でも、私は「承諾後の辞退は最後の手段にしてください」と伝えています。理由は3つです。

  • ①業界内での評判——特にベンチャー・スタートアップ業界は驚くほど狭い。経営者同士が横でつながっていて、話は必ず伝わります
  • ②エージェントとの関係——担当者は手数料を失うだけでなく企業との信頼も失います。次回以降、良い案件が回ってこなくなる可能性があります
  • ③自分自身の判断力への信頼——一度承諾したものを覆す経験は、次の意思決定でも迷いを生みます

だからこそ、承諾する前に徹底的に迷ってください。承諾は「もう迷わない」と決めた瞬間にするものです。

やってはいけない内定辞退7パターン

NG行動 何が起きるか 正しい対応
①無断・音信不通 最悪。損害賠償リスクが生じる唯一の類型 必ず電話で連絡する
②メールだけで済ませる 不誠実と受け取られる 電話が原則。不在ならメール後に再架電
③先延ばしにする 企業の他候補者対応が遅れ、迷惑が増大 決めた瞬間に連絡
④嘘の理由を伝える 後に発覚すると信用を完全に失う 言える範囲で正直に
⑤他社の社名・条件を細かく言う 比較材料にされ、引き止めが長引く 「他社に決めた」で十分
⑥エージェントに丸投げして自分は連絡しない 役員面接まで進んだ企業では失礼にあたる 可能なら自分でも一言お礼を伝える
⑦条件交渉の道具として辞退をちらつかせる 関係が壊れ、内定取消に至ることも 交渉と辞退は明確に分ける

辞退理由はどこまで正直に伝えるべきか

「本当の理由を言うべきか」という質問をよく受けます。私の答えは「言える範囲で正直に、ただし詳細は不要」です。

本当の理由 伝え方の例 伝えない方がよい表現
他社の年収が高かった 「条件面を含め総合的に検討した結果」 「御社は年収が◯万円低かったので」
事業の将来性に不安 「自身のキャリアの方向性を踏まえ」 「事業が伸びないと思ったので」
面接官の印象が悪かった 「カルチャーフィットを慎重に考えた結果」 「◯◯様の対応が高圧的だったので」
現職に残ることにした 「現職で新たな役割の打診があり」 —(これは正直に言って問題ない)
家庭の事情 「家族と相談した結果、やむを得ず」 —(詳細を語る必要はない)

企業側は、詳細な理由を聞き出したいわけではありません。納得できる説明と誠実な態度があれば、それで十分です。むしろ細かく理由を語るほど、引き止めの材料を与えてしまいます。

内定を辞退すべきケース・承諾すべきケース

辞退すべきケース 承諾を検討してよいケース
労働条件通知書の内容が面接時の説明と違う 条件が事前の説明どおりに書面化されている
提示年収が現職より大幅に下がり、説明がない 一時的に下がっても、上がる仕組みが明示されている
回答期限が異常に短い(当日・翌日など) 1週間程度の検討期間がある
直属の上司に会わせてもらえない 配属先の上司・チームと面談できた
面接で聞いた話と口コミの乖離が大きく、説明もない ネガティブな点も含めて率直に説明された
「今すぐ決めないと取り消す」と迫られる こちらの検討ペースを尊重してくれる

特に注意してほしいのが「回答期限が異常に短い」ケースです。まともな企業は、人生の決断に1週間程度の時間を与えます。当日回答を求める企業は、採用に困っているか、候補者を冷静に考えさせたくないかのどちらかです。私の経験上、こういう企業に急かされて入社した方の定着率は明確に低い。企業の見極め方は転職の情報収集 完全ガイドベンチャー転職 失敗・後悔ガイドを参考にしてください。

年代別・内定辞退で気をつけること

20代

選択肢が多く、辞退の機会も多い年代です。この時期に身につけるべきは「辞退の作法」そのものだと考えてください。20代で無断辞退をした方が、30代で同じ業界の採用担当と再会するケースを、私は何度も見ています。丁寧に断る経験は、必ず後で効いてきます。

30代

即戦力採用のため、企業側の期待値と準備コストが上がります。承諾後の辞退のダメージが最も大きい年代です。ポジションを空けて待たれているケースも多いので、承諾は本当に腹をくくってから。キャリアの全体設計はキャリアアップ転職完全ガイドも参考になります。

40代以降

幹部・管理職ポジションでは、あなたのために組織図が書き換えられていることがあります。辞退の影響は個人の枠を超えて事業計画に及ぶため、意思決定はより慎重に。ただし、条件が事前説明と違う場合に無理に承諾する必要はありません。むしろ違和感を放置して入社するほうが、双方にとって不幸です。CXO転職ガイド年齢別転職ガイドもあわせてご覧ください。

相談事例3件

事例1:第一志望の結果待ちで、内定を保留した30代前半・SaaS営業

B社から内定が出たものの、第一志望のA社が最終面接直前。この方には「A社の人事に、選考を1週間前倒しできないか相談する」ことと、「B社には期日を切って保留を依頼する」ことを同時に進めてもらいました。結果、A社が面接を3日前倒しし、両社の結果が揃った状態で比較できました。

教訓:保留を依頼するだけでなく、もう一方の選考を早める交渉も同時にやる。企業は意外と柔軟に応じてくれます。

事例2:承諾後に現職から役員待遇のカウンターオファーが出た40代

承諾から2週間後、現職が役員待遇を提示。悩んだ末に辞退を選びましたが、私からは「必ず自分の口で、電話で、社長に直接伝えること」を強く勧めました。相手企業の社長は残念がりつつも理解を示し、その後も交流が続いています。

教訓:カウンターオファーは、そもそも「なぜ今まで出さなかったのか」を冷静に考える。この方は最終的に現職に残りましたが、2年後に別の会社へ移りました。引き止めのための昇進は、長続きしないことも多いのです。

事例3:エージェントに辞退を止められた20代後半

内定承諾前にもかかわらず「もう辞退はできない」とエージェントに言われ、相談に来られました。承諾前ですから、辞退は当然可能です。担当者を変更してもらったうえで辞退を伝え、その後は別のエージェントで転職を成功させました。

教訓:エージェントの言葉が事実かどうかは、自分で確認する。「辞退できない」は、ほぼすべてのケースで事実ではありません。

内定辞退・承諾に関するよくある質問

Q1. 内定承諾書を提出した後でも辞退できますか?

できます。民法627条1項により、入社予定日の2週間前までに申し出れば法的に有効です。内定承諾書に辞退を禁じる効力はなく、違約金条項があっても労働基準法16条により無効です。ただし企業への迷惑は大きいので、可能な限り早く、電話で誠実に伝えてください。

Q2. 辞退の連絡は人事と現場責任者のどちらにすべきですか?

窓口となっていた人事担当者が基本です。ただし最終面接で社長・役員が出てきた企業では、人事に連絡したうえで「◯◯様にもよろしくお伝えください」と添えるのが丁寧です。可能なら直接お詫びの連絡をしてもよいでしょう。

Q3. 辞退後、その企業に再応募することはできますか?

可能です。実際に、数年後に再応募して入社された方を何人も知っています。ただし辞退時の対応が誠実だった場合に限ります。無断辞退をした企業への再応募は、まず通りません。辞退の作法は、将来の自分への投資です。

Q4. 内定を保留している間に、他社の選考を進めても問題ないですか?

問題ありません。企業側も、候補者が他社を受けていることは前提としています。ただし保留期間を延ばし続けるのは避けてください。2週間を超えると、企業側は次の候補者に動き始めます。

Q5. 内定辞退をエージェントに伝えたら、強く引き止められました。どうすれば?

あなたの意思が最終決定です。「検討した結果、決めましたので企業様にお伝えください」と明確に繰り返してください。それでも動かない場合は、エージェントの窓口に担当変更を申し出るか、自分で直接企業に連絡して構いません。エージェントを介す義務はありません。

Q6. 複数内定のうち、まだ迷っている企業に「第一志望です」と言ってしまいました。辞退しづらいのですが。

選考の場での志望度の表明が、辞退を妨げることはありません。「その時点での本心」と「最終判断」は別物です。その旨を含めて、率直にお詫びして伝えてください。企業側もそこは理解しています。

Q7. 内定辞退をしたら、その業界で悪い評判が立ちませんか?

丁寧に辞退した方が悪評を立てられたケースを、私は25年で見たことがありません。評判が立つのは、無断辞退・音信不通・嘘の理由が発覚した場合だけです。特にベンチャー・スタートアップ業界は狭いですが、狭いからこそ「誠実に断った人」の評価も同じくらい伝わります。

Q8. 入社日を延期してもらうことは可能ですか?

可能です。現職の退職交渉が難航している場合など、正当な理由があれば1〜2か月の延期は珍しくありません。辞退するくらいなら、まず延期を相談してください。退職交渉の進め方は退職交渉完全ガイド、有給消化の扱いは退職時の有給消化 完全ガイドにまとめています。

まとめ:内定辞退で問われるのは「法律」ではなく「作法」

最後に、要点を整理します。

  • 内定辞退は法的に可能。承諾後でも入社2週間前までの申し出で有効(民法627条1項)
  • 内定承諾書に辞退を禁じる効力はない。違約金条項は労働基準法16条により無効
  • 損害賠償リスクが生じるのは無断・音信不通など著しい信義則違反の場合のみ
  • 保留の目安は1週間、最長2週間。期日は自分から提示する
  • 連絡は電話が原則。決めた瞬間に、できるだけ早く
  • 辞退理由は言える範囲で正直に、詳細は不要。嘘は必ず後で効いてくる
  • 複数内定の比較は年収より「直属の上司」と「事業の成長性」を重く見る
  • 承諾は「もう迷わない」と決めてから。迷うなら承諾前に徹底的に迷う

27年、1万件を超えるキャリア相談を受けてきて確信しているのは、内定辞退の場面ほど、その人の人柄が表れる瞬間はないということです。断り方が丁寧だった方は、数年後に別の形で必ずご縁が戻ってきます。逆に、逃げるように消えた方は、思わぬところで過去に足を引っ張られます。

断ることは、悪いことではありません。誠実に断ることは、むしろ自分の信用を積み上げる行為です。迷ったときは「5年後の自分が、この断り方を誇れるか」を基準にしてみてください。

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップを中心に、CxOから若手ポジションまで幅広くご支援しています。「複数内定で決めきれない」「この条件で承諾していいのか」といった、まさに今悩んでいる段階のご相談も歓迎です。転職を勧めるためではなく、あなたにとっての最適解を一緒に考える場としてご活用ください。キープレイヤーズまでお気軽にご相談ください。

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東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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