リユースFCオーナーという選択肢|2,264店舗でギネス世界記録、でも見るべきは法定開示書面です

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップの転職・採用支援を27年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。

リユース業界について調べていて、他の業界にはない特徴に気づきました。

社員として転職するのではなく、フランチャイズのオーナーとして「経営者になる」ルートが現実に機能していることです。

買取大吉を運営する株式会社エンパワーは、2026年8月31日時点の2,264店舗で「最大の買取専門店チェーン(最新)」としてギネス世界記録に認定されました。おたからやを運営する株式会社いーふらんは、2,050店舗以上を展開しています。両方とも、店舗の多くはフランチャイズです。

ただ、この記事をいい話だけで終わらせるつもりはありません。この業界には、加盟店オーナーが本部を提訴した事例があります。私は転職の相談を受ける立場なので、入ってから後悔する話をいちばん見てきました。

なので、仕組みと数字を整理したうえで、契約前に法律上できる確認方法まで書きます。ここがこの記事のいちばん大事なところです。

この記事でわかること

  • 買取FCがここまで増えている理由
  • 主要2社の規模と、公開されている加盟条件
  • 「オーナー利益」の数字を読むときの落とし穴
  • 過去に起きた加盟店トラブルの実際
  • 法律で本部に開示義務がある情報と、その請求のしかた
  • 社員として入るか、オーナーになるかの判断軸
目次

なぜ買取FCがここまで増えているのか

なぜ買取FCがここまで増えているのか

前提として、市場は伸びています。リユース経済新聞の推計では、2025年のリユース市場規模は3兆4,636億円で、前年比6.2%増。2009年以降16年連続の拡大です。

環境省が令和8年3月に策定した「リユース等の促進に関するロードマップ」では、2030年に4兆6千億円という目標が掲げられています。生活者のリユース実施率を40.8%から50%へ、協働する自治体を約300から約600へ、という数値も入っています。

そのうえで、買取業がFCに向いている理由が3つあります。

  理由
小さく始められる 5〜10坪で成立する。在庫を抱える小売とは必要資金が違う
仕入が「来店」である 商品はお客様が持ち込む。仕入ルートの開拓が不要
売り先が本部側にある 買った品物を本部やオークションに流せる。販売を自分でやらなくても回る

通常の小売FCは「売る力」が要りますが、買取は「買う力」と「立地」でほぼ決まります。だから未経験でも参入できる形になっている。これが店舗数が急増している理由です。

逆に言えば、立地を外した時点でほぼ詰むということでもあります。ここは後で詳しく書きます。

主要2社の規模

主要2社の規模

FC展開をしている買取チェーンのうち、規模が大きい2社を公開情報で整理します。

  買取大吉 おたからや
運営会社 株式会社エンパワー 株式会社いーふらん
設立 2010年10月 2000年3月
代表者 増井俊介 鹿村大志
店舗数 2,264店舗(2026年8月31日時点、国内外) 2,050店舗以上(公式サイト記載)
リユース売上(2026年ランキング) 890.4億円(前年比119%)業界6位 2,000.0億円(前年比219%)業界3位
従業員数 ー 1,863名(2026年4月1日時点)
資本金 3,000万円 4億8,000万円
上場 未上場 未上場

買取大吉は、2026年9月24日にギネス世界記録の公式認定証授与式を開催しています。記録名は「Largest buyback store chain – current(最大の買取専門店チェーン(最新))」で、認定の基準となったのが2026年8月31日時点の2,264店舗です。

増え方が異常です。同社のリリースによれば2024年7月20日時点で1,000店舗達成。それが約2年で2,264店舗。本部インタビュー(2026年2月公開)では毎月70店舗のペースで加盟が増えており、2027年に3,000店舗体制を目指すとしています。

もうひとつ、同じインタビューに重要な記述があります。加盟のうち法人が7割だというものです。つまり、いま増えているのは個人の独立開業だけではなく、すでに他の事業を持っている会社の多店舗展開でもあるということです。

公開されている加盟条件

公開されている加盟条件

FC募集情報サイトに掲載されている買取大吉の条件は、次のとおりです。

項目 内容
ロイヤリティ 月20万円(税抜)
必要自己資金 300万円以上
契約期間 5年
年間店舗継続率 97.9%(2024年10月〜2025年9月)

※FC募集情報サイトの掲載内容(2026年時点)にもとづきます。条件は時期・エリア・法人/個人で変わります。必ず本部の最新の提示を確認してください。

ロイヤリティが売上歩合ではなく月額固定という点が、この業態の特徴です。売上が伸びれば伸びるほど手元に残る設計になっています。

一方で、売上が立たない月も20万円は出ていきます。固定ロイヤリティは、伸びる店には有利で、伸びない店には重い。両方が同じ契約書に入っています。

「オーナー利益」の数字には、落とし穴があります

「オーナー利益」の数字には、落とし穴があります

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

買取FCの募集資料には、店舗の収益モデルが載っていることがあります。買取大吉の公式FC向けサイトにも、実際の店舗の数字として売上・粗利・営業利益が掲載されています。

その数字を見るときに、必ず注記を読んでください。

私が確認した時点の掲載では、営業利益の数字に「人件費を除く」という注記が付いていました。

これは不誠実という話ではありません。注記は書かれています。ただ、人件費を除いた営業利益は、オーナーの手取りではありません。ここを読み飛ばすと、判断を大きく誤ります。

見かけの数字 実際に考えるべきこと
営業利益〇〇万円(人件費を除く) そこから自分とスタッフの人件費を引く
月商〇〇万円 買取業の粗利率は商材と相場で動く。月商だけでは判断できない
投資回収〇カ月の実績 どの立地の、どの時期の、何店舗のうちの1店舗か
継続率97.9% 継続は「儲かっている」とは別の話。契約期間中は簡単に閉められない

4つめが特に重要です。継続率が高いことは本部の強みですが、契約期間5年という条件とセットで読む必要があります。赤字でも契約期間内は続けるケースがあるので、継続率は収益性の証明にはなりません。

実際に起きたトラブル

実際に起きたトラブル

楽しい話ではありませんが、書きます。知らずに入るのが一番よくないからです。

弁護士ドットコムニュースの2022年7月7日の報道によると、同日、おたからやの加盟店オーナーだった関東地方の7人が、運営会社のいーふらんを相手に、計約3,980万円の損害賠償を求めて提訴しました。

報道されている原告側の主張は、次のようなものです。

主張の内容
加盟金100万〜300万円を支払った
本部から「1億円はかたい」「3カ月で投資は回収できる」と勧誘された
契約後の担当者が、経験豊富な人ではなく入社半年〜1年の新人だった
立地予測評価にもとづいた売上・収益予測が提示されていない
適切な立地選定がされず、廃業に至った
直営店が近くに出店され、客が激減した事例がある

同報道では、会社側のコメントとして「提訴は初めて知った。内容を確認していないので、コメントできない」が紹介されています。

これは特定の1社の問題というより、FC全般で起こりうる構図です。本部は店舗を増やしたい、加盟者は儲けたい。この2つは、ほとんどの場面では一致しますが、近隣への出店のときだけ利害が逆を向きます。

なので、契約前に確認すべきことは決まっています。

法律で、本部には開示義務があります

法律で、本部には開示義務があります

ここを知らずに契約する方が多いので、強調して書きます。

小売のフランチャイズは、中小小売商業振興法上の「特定連鎖化事業」に該当する場合、本部は加盟希望者に対して、契約前に法定の事項を記載した書面を交付し、説明する義務があります。口頭の説明ではなく、書面です。

そして2022年4月1日施行の施行規則改正で、開示項目が追加されました。追加されたのはこれです。

「加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項」

さらに、その収支は費目を区分して表示することが求められています。

区分表示が求められる費目
売上高
売上原価
商号使用料、経営指導料その他、本部が加盟者から定期的に徴収する金額
人件費
販売費及び一般管理費

加えて、「立地条件が類似すると判断した根拠」を示すことも求められています。

これが何を意味するか。募集広告の「営業利益(人件費を除く)」ではなく、人件費まで区分した、自分の出店予定地と立地条件が似ている店の直近3年の収支を、書面で求められるということです。

私が加盟を検討する方にお伝えするのは、この一点です。法定開示書面を受け取り、「立地条件が類似する店舗の直近3事業年度の収支」と「類似と判断した根拠」を必ず確認してください。

そして、ここで本部の姿勢がはっきり分かります。

本部の反応 どう読むか
書面がすぐ出てきて、類似店の収支も根拠も載っている 法令を理解している本部
「成功事例」のパンフレットが出てくる 法定開示書面ではない。改めて請求する
渋る、「他店の数字は出せない」と言う 立ち止まったほうがよい

※特定連鎖化事業への該当性や開示項目の詳細は個別の契約内容によります。実際の検討にあたっては、弁護士など専門家にご相談ください。

あわせて確認したい項目

確認項目 なぜ必要か
テリトリー権の有無 近隣に直営店・他の加盟店が出る可能性。訴訟の争点になった論点
中途解約の条件と違約金 契約期間5年。やめるときにいくらかかるか
買い取った品物の流し先と手数料 販売を本部に委ねる以上、ここが実質の粗利を決める
相場下落時の扱い 金・ブランド品の相場で収益が動く業態である
広告費の負担区分 買取の集客はネット広告が主戦場。負担がどちらかで損益が変わる
研修とサポートの実体 担当者の経験年数は、訴訟で主張された論点のひとつ
古物営業法上の許可 公安委員会の許可が必要。取得の主体と手続きの支援範囲
既存店オーナーに会えるか 会わせてくれる本部と、会わせない本部がある

最後の項目を軽視しないでください。既存の加盟店オーナーに自由に会わせてくれるかどうかは、どんな資料よりも情報量があります。

社員として入るか、オーナーになるか

社員として入るか、オーナーになるか

私のところには、どちらの相談も来ます。整理するとこうなります。

  社員として転職 FCオーナー
初期の自己資金 不要 300万円以上+運転資金
下振れたとき 給与は出る 自己資金が減る。ロイヤリティは発生する
上振れたとき インセンティブの範囲 固定ロイヤリティなので、伸びた分はほぼ自分
学べること 査定・店舗運営・本部機能 経営全部(採用・労務・資金繰り含む)
多店舗化 社内の昇進 2店舗目、3店舗目を自分で持てる
向く人 専門性を積みたい人 意思決定を自分で持ちたい人

私がよくお伝えしている順番があります。未経験でFCに直行するより、まず社員として1〜2年、査定と店舗運営を実地で覚えたほうが、オーナーになったときの勝率が上がります。

理由は単純で、買取業の損益は「いくらで買うか」でほぼ決まるからです。査定の勘所を知らずにオーナーになると、本部の指導をそのまま飲むしかなくなります。自分で判断できる状態で始めたほうがいい。

ただし、法人として他の事業を持っていて、人を雇って任せられるなら話は別です。いま増えている加盟の7割が法人というのは、そういうことだと思います。

よくある質問

Q1. 未経験でもFCオーナーになれますか

制度上はなれます。買取FCは未経験からの参入を前提に設計されています。ただし未経験であるぶん、立地と条件の判断を本部に委ねることになります。だからこそ法定開示書面の確認が重要です。

Q2. どのくらい儲かりますか

断定できません。募集資料に載っている数字は注記(人件費を含むか等)を読まないと意味が変わります。信頼できる判断材料は、法定開示書面に記載された「立地条件が類似する店舗の直近3事業年度の収支」です。そちらで判断してください。

Q3. ロイヤリティ月20万円は高いですか

売上次第です。売上歩合ではなく固定なので、月商が大きい店ほど実質負担率は下がります。逆に立ち上がりが遅い店には重い。損益分岐点の月商を自分で計算してから判断してください。

Q4. 近くに同じチェーンの店が出ることはありますか

契約でテリトリー権がどう定められているかによります。過去の訴訟で、直営店の近隣出店が主張の論点になった事例があります。必ず契約書で確認し、曖昧なら書面で明確にしてもらってください。

Q5. 金やブランド品の相場が下がったらどうなりますか

収益は下がります。この業態は相場の影響を直接受けます。直近数年の高成長には相場高の追い風が含まれています。相場が落ち着いた前提での収支を、自分で一度引いてみてください。

Q6. 古物商の許可は自分で取るのですか

買取業は古物営業法にもとづく許可が必要で、公安委員会の許可を受けて営業します。取得の主体と本部の支援範囲は契約で確認してください。

Q7. 大吉とおたからや、どちらがよいですか

私の立場で優劣は申し上げません。見るべきは企業ランキングでも店舗数でもなく、自分の出店予定地に類似する店の収支です。同じチェーンでも、立地によって結果はまったく違います。

まとめ|チャンスであることと、確認すべきことは両立します

3点に絞ります。

1つめ。市場は3兆4,636億円で16年連続拡大し、国も2030年に4兆6千億円という目標を掲げています。追い風は本物です。買取大吉は2,264店舗でギネス世界記録に認定され、2027年に3,000店舗を目指しています。

2つめ。FCオーナーという形で経営者になれる業界は、そう多くありません。5〜10坪で、仕入が来店で、販売は本部側にある。この設計は未経験に開かれています。

3つめ。そのうえで、募集広告の数字ではなく法定開示書面で判断してください。「立地条件が類似する店舗の直近3事業年度の収支」と「類似と判断した根拠」。この2つを書面で求める。ここをやるかやらないかで、結果が変わります。

キープレイヤーズでは、21年にわたり経営者・経営幹部のキャリア支援と、企業の採用支援を行ってきました。私自身も複数社で顧問・社外役員を務めています。

社員として入るか、オーナーとして独立するか。どちらが自分に向いているか分からない段階でのご相談も歓迎です。リユース業界への転職、また採用にお困りの企業の方は、お気軽にお問い合わせください。

リユース業界の市場データと職種についてはリユース業界の転職ガイドにまとめています。独立・起業全般の考え方は転職の失敗・後悔・リスクのまとめもあわせてご覧ください。

すぐに動かない方には、オンラインサロンもご用意しています。

出典

  • リユース経済新聞「リユース業界の市場規模推計2026(2025年版)」第640号(2026年9月25日発行)— 2025年の市場規模3兆4,636億円、前年比6.2%増、16年連続拡大
  • リユース経済新聞「リユース売上ランキング2026」(2026年7月25日発表)— エンパワー890.4億円(119%)、いーふらん2,000.0億円(219%)
  • 環境省「リユース等の促進に関するロードマップ」令和8年3月 — 2030年目標(市場規模4兆6千億円、リユース実施率50%、協働自治体数約600)
  • 株式会社エンパワー プレスリリース(2026年9月24日配信)— ギネス世界記録「Largest buyback store chain – current(最大の買取専門店チェーン(最新))」、2,264店舗(2026年8月31日時点)、認定日2026年8月31日、授与式2026年9月24日、会社概要
  • 買取大吉 公式サイト — 「全国2300店舗以上展開中」の記載、古物商許可の表示
  • 株式会社エンパワー プレスリリース(2024年7月9日配信)— 『買取大吉』が2024年7月20日時点で1,000店舗を達成
  • 株式会社いーふらん 公式サイト 会社概要 — 設立2000年3月、代表取締役社長 鹿村大志、資本金4億8,000万円、従業員1,863名(2026年4月1日時点)、店舗数2,050店舗以上
  • 株式会社エンパワー 代表者インタビュー記事(2026年2月公開)— 毎月70店舗の加盟増加ペース、法人加盟7割、2027年に3,000店舗体制の目標
  • FC募集情報サイトの買取大吉掲載情報(2026年時点)— ロイヤリティ月20万円(税抜)、必要自己資金300万円以上、契約期間5年、年間店舗継続率97.9%(2024年10月〜2025年9月)
  • 買取大吉 FC向け公式サイト — 店舗収益モデルの掲載(営業利益に「人件費を除く」の注記)
  • 弁護士ドットコムニュース「FC契約しても指導や援助なく廃業、買取店『おたからや』運営会社を提訴」2022年7月7日 — 提訴日、原告7人、請求額計約3,980万円、原告の主張、会社側コメント
  • 中小小売商業振興法および同法施行規則(2022年4月1日施行の改正)— 特定連鎖化事業者の法定開示義務、追加された開示項目「加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項」、区分表示すべき費目、類似と判断した根拠の提示

※加盟条件は時期・エリア・法人/個人により異なります。最新の条件は各本部にご確認ください。訴訟に関する記述は報道にもとづく当事者の主張であり、司法の最終判断を示すものではありません。市場規模は推計主体により対象範囲が異なります。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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