防衛テック企業リスト【2026年最新】世界のスタートアップと日本の防衛調達上位20社・転職先としての見方を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。

先日、防衛テックの転職ガイドを書いたところ、「で、具体的にどんな会社があるんですか」というご質問をいくつもいただきました。たしかに、業界の構造を説明しても、会社の名前が分からないと動きようがありません。

そこで今回は、世界と日本の防衛テック企業を、公開情報で一覧にしました。世界のスタートアップと、日本の防衛産業を支える上位20社の両方です。

先にお断りしておきます。この記事は投資のための銘柄情報ではありません。転職先・採用先としてどんな会社があるのかを整理したものです。上場企業も出てきますが、株価や投資判断には一切触れません。

この記事でわかること

  • 世界の防衛テックスタートアップの顔ぶれと、評価額の桁
  • 欧州が急伸している実態(ドイツ・ポルトガル・フィンランド)
  • 日本の防衛調達 上位20社(防衛装備庁の一次データ)
  • 日本の調達金額の8割が随意契約という構造と、その意味
  • 世界と日本のギャップが、転職者にとって何を意味するか
  • プライム企業・スタートアップ・外資、どれを狙うべきか
目次

世界の防衛テックに、記録的な資金が入っている

世界の防衛テックに、記録的な資金が入っている

まず世界の状況からです。

報道ベースですが、防衛テック領域のスタートアップには2026年の最初の5か月だけでVC資金が146億ドル入り、5月を迎える前に前年通年の記録を超えたと伝えられています。

象徴的なのがAnduril Industriesです。2026年5月13日にシリーズHで50億ドルを調達し、評価額は610億ドルになりました。Thrive Capitalとアンドリーセン・ホロウィッツがリードしています。2025年半ばの305億ドルから、1年で倍です。

桁の感覚をつかむために、ひとつ並べてみます。Andurilの評価額610億ドルは、1ドル150円なら約9.1兆円。日本の令和6年度の中央調達の総額が約5兆7,943億円です。

もちろん企業の評価額と国の年間調達額は単位が違うので、直接比べられるものではありません。それでも、1社のスタートアップにこれだけの期待が乗っているという事実は、業界の空気を知るうえで意味があると思います。

米国の主要スタートアップ

米国の主要スタートアップ

企業 領域 直近の調達・評価額(報道ベース)
Anduril Industries 自律兵器システム、ソフトウェア基盤「Lattice」 シリーズH 50億ドル/評価額610億ドル(2026年5月)
Shield AI AI操縦・自律飛行 シリーズG 15億ドル/評価額127億ドル(2026年3月)
Epirus 指向性エネルギー 累計15億ドル超
Hermeus 極超音速航空機 累計15億ドル超
Saronic 自律型艦艇 累計12億ドル超

Shield AIは評価額が53億ドルから127億ドルへ、約140%上がったと報じられています。この領域は評価額の上がり方が異常なほど速いというのが、数字から読み取れることです。

欧州が急伸している

欧州が急伸している

個人的に注目しているのは欧州です。ここ1年の伸びが際立っています。

企業 国 領域 直近の調達・評価額(報道ベース)
Helsing ドイツ 防衛AI、HX-2ストライクドローン、CA-1自律戦闘機 シリーズE 18億ドル/評価額180億ドル(2026年7月13日)
Quantum Systems ドイツ 無人航空機 12億ドル/評価額80億ドル(2026年7月)
Tekever ポルトガル・英国 AIドローン シリーズD 5.8億ドル(ファーストクローズ)/評価額64億ドル(2026年9月23日)
Stark ドイツ ドローン 5億ユーロ/評価額32億ユーロ(2026年6月)
ICEYE フィンランド SAR衛星(デュアルユース) シリーズF 4.5億ユーロ(2026年6月)
Harmattan AI フランス 防衛AI 2億ドル/評価額14億ユーロ(2026年1月)
Kraken Technology 英国 無人艦艇 1.75億ドル/評価額10億ドル(2026年7月)

Helsingの投資家にはLightspeed、General Catalyst、Accel、Greenoaks、そしてSpotify創業者ダニエル・エク氏のPrima Materiaが名を連ねています。テック系のVCが、防衛領域に本格的に資金を入れているということです。

ICEYEはSAR衛星の会社で、宇宙と防衛をまたいでいます。この重なりについては宇宙・防衛テック業界地図で整理しました。

なぜ欧州がここまで伸びたのか

なぜ欧州がここまで伸びたのか

米国に大型スタートアップがあるのは以前からですが、欧州の伸びはこの1〜2年で一気に起きました。並べてみると、ほとんどが2026年の調達です。

時期 できごと
2026年1月 Harmattan AI(仏)2億ドル調達
2026年6月 Stark(独)5億ユーロ、ICEYE(フィンランド)4.5億ユーロ
2026年7月 Helsing(独)18億ドル・評価額180億ドル、Quantum Systems(独)12億ドル、Kraken(英)1.75億ドル
2026年9月 Tekever(ポルトガル・英)5.8億ドル・評価額64億ドル

背景として防衛装備庁の資料が指摘しているのは、ウクライナ侵略で「新しい戦い方」が顕在化したことです。民生先端技術の取り込みや既存技術の組み合わせで、従来の装備品の常識にとらわれない発想がニーズを満たした。同資料では、光ファイバーによる有線制御のFPVドローンが例として挙げられています。

転職の観点で見ると、欧州の伸びは「既存の防衛大手ではなく、新しい会社が担い手になりうる」ことを示したという意味を持ちます。Helsingは2021年創業です。創業5年で評価額180億ドルという事実が、この領域の人材の流れを変えています。

もうひとつ見ておきたいのが投資家の顔ぶれです。Lightspeed、General Catalyst、Accel、Greenoaks。いずれもテック企業に投資してきたVCです。防衛が「テックの投資対象」になったということで、ここは日本との差がいちばん大きいところです。日本ではVCの投資契約に軍事関連投資の制約が設けられている場合があり、デュアルユースにしか投資できないことがあります。この構造はVC転職ガイドでも触れました。

日本の防衛調達 上位20社

日本の防衛調達 上位20社

ここからが日本です。防衛装備庁が公表している令和6年度中央調達の実績から、契約高の上位20社をそのまま載せます。推計ではなく公表データです。

順位 企業 件数 契約高
1 三菱重工業 238件 14,567億円
2 川崎重工業 133件 6,383億円
3 三菱電機 139件 4,956億円
4 日本電気(NEC) 282件 3,117億円
5 富士通 144件 1,736億円
6 ジャパンマリンユナイテッド 3件 1,614億円
7 東芝インフラシステムズ 93件 1,569億円
8 日本製鋼所 46件 1,206億円
9 伊藤忠アビエーション 44件 971億円
10 日立製作所 98件 798億円
11 沖電気工業 46件 691億円
12 SUBARU 32件 595億円
13 IHI 28件 578億円
14 三菱重工機械システム 1件 549億円
15 三井物産エアロスペース 14件 418億円
16 ENEOS 70件 345億円
17 中川物産 146件 340億円
18 高速マリン・トランスポート2 1件 304億円
19 ダイキン工業 35件 269億円
20 小松製作所 23件 256億円

この表から読み取っていただきたいことが3つあります。

1つめ、三菱重工の1社で1兆4,567億円。2位の川崎重工の2倍以上で、圧倒的な首位です。イージス・システム搭載艦1番艦の製造、12式地対艦誘導弾能力向上型、島嶼防衛用高速滑空弾などを受注しています。

2つめ、「防衛産業」と聞いて思い浮かばない会社が入っていること。ENEOS、ダイキン工業、小松製作所、日立製作所。燃料、空調、建設機械、ITです。防衛の裾野は想像よりずっと広い。

3つめ、件数と金額が比例していません。NECは282件で3,117億円、ジャパンマリンユナイテッドは3件で1,614億円。前者は小口の案件を数多く、後者は艦艇という大型案件を少数。どちらのタイプの会社で働きたいかは、キャリアの性格をかなり左右します。

日本の調達は、金額の8割が随意契約

日本の調達は、金額の8割が随意契約

同じ資料に、転職を考えるうえで決定的に重要な数字があります。契約方式別の内訳です。

契約方式 件数 金額 金額の構成比
一般競争契約 3,072件 2,354億円 約4%
指名競争契約 0件 0億円 ー
随意契約 4,710件 46,755億円 約81%
FMS(対外有償軍事援助) 212件 8,834億円 約15%
総計 7,994件 57,943億円 100%

件数では一般競争が3,072件と約4割を占めるのに、金額では約4%しかありません。大型案件はほぼ随意契約です。

これが、新規参入が難しいと言われてきた理由です。入札に勝てば入れる世界ではなく、随意契約の相手として認められないと大きな仕事は来ない。そして従来の随意契約は「提案の唯一性の証明」が必要で、契約締結まで最低1年以上かかっていました。

だからこそ、防衛装備庁が整備した「スタートアップ技術提案評価方式(スタートアップ随契)」が効きます。公募から契約締結まで約3か月半で、スタートアップには大幅な加点が実施されます。この表の81%の側に、新しい入口ができたということです。制度の詳細は防衛テック転職ガイドに書きました。

日本のスタートアップはどこにいるか

日本のスタートアップはどこにいるか

では日本のスタートアップはどうなっているか。防衛装備庁の別の公表資料から、契約実績のある企業を挙げます。

企業 領域 契約実績(同資料より)
スペースワン 宇宙輸送 令和5年度 約85.0億円
アストロスケール 軌道上サービス 令和6年度 約72.7億円
QPS研究所 SAR衛星 令和5年度 約62.1億円+約15.7億円
カワサキモータース 陸上オートノミー 約25.2億円
デジタルレシピ 生成AIによる分析 約20.5億円
Synspective SAR衛星 令和6年度 約11.6億円
Preferred Networks AI・半導体 約10.2億円+約0.5億円
Sakana AI AI 約9.7億円
岩谷技研 高高度 令和6年度 約5.8億円
インフォステラ 地上局・周波数解析 令和6年度 約3.0億円
アラヤ 脳情報 約1.3億円
アクセルスペース 衛星データ 令和6年度 約1.1億円

金額の桁を見比べてください。上位20社が数千億円の世界なのに対し、スタートアップは数億円から数十億円です。

ただ、これを「まだ小さい」と読むか「ここから」と読むかで、見方が変わります。制度ができたのがここ2年で、スタートアップ随契の政府1号案件はインフォステラの約3.0億円の案件でした。始まったばかりだということです。

世界と日本のギャップが意味すること

世界と日本のギャップが意味すること

ここまでの数字を並べると、構図がはっきりします。

  世界(米欧) 日本
資金の出し手 VCが主役。2026年1〜5月で146億ドル 政府予算が主役。VCは軍事関連投資に制約がある場合も
スタートアップの規模 評価額が数十億〜数百億ドル 契約額が数億〜数十億円
主要プレイヤー 創業10年前後のスタートアップが上位 重工・電機の大手が圧倒的
調達の速さ 短期の反復が前提 制度改革で1年以上が約3か月半に

転職者にとって、このギャップは2つの意味を持ちます。

ひとつは、日本のこの領域は人材の層が薄いということ。世界で数万人規模が働いている分野に、日本ではまだ数百人しかいません。いま入れば、数年で「国内では数少ない経験者」になります。

もうひとつは、世界の動きが日本に来るまでに時間差があるということ。米欧で起きたことは、形を変えて日本でも起きます。先に知っている人が有利です。

こうした会社が実際にどこから人を採っているのかは、ビッグテックの人材が防衛テックに移っているで採用データから分析しました。

転職先としての3つの選択肢

転職先としての3つの選択肢

選択肢 向いている人 注意点
プライム企業(三菱重工、川崎重工、三菱電機、NEC など) 大型の装備品開発に関わりたい。安定を重視する 意思決定が重い。1つの案件が長い
スタートアップ(AI、無人機、衛星、素材) 速く回したい。制度の追い風を使いたい 防衛は売上の一部。会社の継続性を自分で見極める必要
外資・海外 英語力があり、世界水準の開発に関わりたい 日本法人の求人は少ない。輸出管理・国籍要件の制約がある場合も

私がご相談でお伝えしているのは、裾野の広さを使ってくださいということです。上位20社にENEOS、ダイキン、小松製作所、日立が入っていることが示すとおり、「防衛専業の会社に入る」以外の関わり方がたくさんあります。燃料、空調、建機、IT。いまの専門性のまま、防衛の裾野に入る道があります。

日本で次に動くもの

最後に、これから変わる部分を整理しておきます。転職のタイミングを計るうえで効きます。

動くもの 内容 時期
防衛省版SBIR制度 これまで内閣府のスキームを各省庁が活用し、防衛省は未活用だった。複数企業と同時契約し、装備品の早期装備化を図る 令和8年度から開始
スタートアップ随契の拡大 公募から契約締結まで約3か月半。スタートアップに大幅な加点 活用を推進中
アジャイル型の調達 部隊と企業が一体でフィードバックサイクルを回し、早期に運用ニーズへ適合させる 制度化を予定
VC経由の出資制度・新法人 報道ベース。VCを通じたスタートアップへの出資制度を設け、装備品輸出の窓口も担わせる方針と伝えられている 2027年度にも

私がご相談でお伝えしているのは、制度が変わる前後は、採用が動くということです。新しいスキームで契約が取れた会社は、実行する人を増やさなければなりません。令和8年度のSBIR開始は、ひとつの節目になるはずです。

宇宙領域と重なる部分も大きいので、あわせて宇宙スタートアップ転職ガイドもご覧ください。ディープテック全般のキャリア設計はディープテック業界の転職ガイドにまとめています。

よくある質問

Q1. 日本で防衛テックのスタートアップに転職するのは早すぎませんか

判断が分かれるところです。契約額は数億〜数十億円とまだ小さい。ただし制度が整ったのがここ2年で、令和8年度からは防衛省版SBIRも始まります。経験者がほとんどいない領域なので、早く入るほど希少性は高くなります。

Q2. プライム企業とスタートアップで、年収はどちらが高いですか

一般に大手プライムのほうが安定していて、年次に応じた水準があります。スタートアップは会社によって差が大きく、政府契約が取れている会社は上がってきています。防衛装備庁の公表資料で契約実績を確認してから判断してください。

Q3. 海外の防衛テック企業に転職できますか

難易度は高いです。多くの国で防衛関連は国籍要件やセキュリティクリアランスの制約があります。現実的なのは、海外企業の日本法人か、日本から海外企業と組んでいる会社を選ぶ道です。

Q4. 文系でも入れますか

入れます。この領域でいちばん足りないのは、実は調達制度を理解して提案を書ける人材です。スタートアップ随契、防衛省版SBIR、アジャイル型調達。制度は整ったのに、使える人が社内にいない会社がたくさんあります。官公庁営業や公共調達の経験がある方は、そのまま武器になります。

Q5. この一覧はどのくらいで変わりますか

世界の評価額は半年で倍になる世界なので、数字はすぐ古くなります。日本の調達実績は年度ごとの公表なので、年1回更新されます。最新の数値は防衛装備庁の公表情報と各社のリリースをご確認ください。

まとめ|裾野は、思っているより広い

この記事でお伝えしたかったのは3点です。

1つめ、世界では防衛テックが巨大な資金を集めていること。Andurilが評価額610億ドル、Helsingが180億ドル。2026年の最初の5か月だけでVC資金146億ドルです。

2つめ、日本は大手プライムが圧倒的で、調達金額の約81%が随意契約という構造だったこと。だからこそ、スタートアップ随契という新しい入口ができた意味が大きい。

3つめ、防衛の裾野は想像よりずっと広いこと。上位20社にENEOS、ダイキン、小松製作所が入っています。防衛専業でなくても関わる道があります。

キープレイヤーズでは、21年にわたりベンチャー・スタートアップの転職支援と採用支援を行ってきました。私自身がエンジェル投資家として80社以上に投資しており、ディープテック領域の経営者とも日常的に情報交換をしています。この領域は求人が表に出にくいので、関心のある方は一度ご相談ください。お問い合わせからご連絡いただければと思います。

すぐに転職をお考えでない方には、オンラインサロンもご用意しています。

出典

  • 防衛装備庁「令和6年度中央調達における調達実績」— 総計7,994件・57,943億円、要求機関別・契約方式別の内訳、上位20社の契約実績
  • 防衛装備庁「防衛分野におけるスタートアップとの連携について」令和8年3月(内閣官房 日本成長戦略会議 第2回 資料4)— スタートアップ別の契約実績、スタートアップ技術提案評価方式
  • Anduril Industries シリーズH(2026年5月13日発表、50億ドル・評価額610億ドル、Thrive Capital/a16zリード)に関する各種報道
  • Defense News、CNBC、TechCrunch、Sifted、EU-Startups 等による欧米防衛テック企業の資金調達報道(Helsing、Quantum Systems、Tekever、Stark、ICEYE、Harmattan AI、Kraken Technology、Shield AI ほか)

※海外企業の調達額・評価額は報道ベースであり、各社の公式発表と異なる場合があります。為替は変動するため、円換算は目安です。

※本記事は転職・採用の観点で企業を整理したものであり、投資判断を目的とした情報ではありません。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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