こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。
宇宙と防衛を別々の業界だと思っている方が多いのですが、転職市場としては、この2つはほとんど地続きです。
そう言い切れるのは、私の印象ではなく、政府が公開している資料にそう書いてあるからです。防衛装備庁が2026年3月に内閣官房へ提出した資料を見ると、防衛予算で契約している企業の上位に、宇宙スタートアップがずらりと並びます。逆に、AI企業やバイオベンチャーが防衛研究に参画しています。
そこで、公表資料をもとに1枚の地図を作りました。どの会社がどの領域にいて、宇宙と防衛のどちらで契約しているのかを一望できるようにしています。
この記事でわかること
- 宇宙・防衛テックの業界地図(領域 × 政府契約の実績からみた位置づけ)
- 宇宙と防衛の両方で契約している企業はどこか
- AI・バイオ・素材の会社が防衛研究に入ってきている実態
- 領域ごとの求人の出方と、刺さる経歴
- 自分はどこを狙うべきかの考え方
宇宙・防衛テック業界地図

縦に技術領域、横に「宇宙領域が主」「宇宙・防衛の双方で契約」「防衛研究に参画」を取りました。
最初に注意書きをひとつ。右列は「防衛専業」という意味ではありません。Sakana AIもPreferred Networksもカワサキモータースも、本業は民生です。防衛研究はポートフォリオの一部にすぎません。ここを誤読すると、業界の実態を見誤ります。
そのうえで、地図を見て気づいていただきたいのは中央の列です。宇宙と防衛の両方で契約実績がある企業が、これだけあります。
中央列|宇宙と防衛の両方で契約している企業

防衛装備庁の資料に記載されている契約実績から、金額とあわせて整理します。
| 企業 | 領域 | 防衛側の契約実績(同資料より) |
|---|---|---|
| スペースワン | 輸送・打上げ | アッパーステージ能力向上に関する研究 令和5年度 約85.0億円 |
| アストロスケールHD | 軌道上サービス | 機動対応宇宙システム実証機の試作 令和6年度 約72.7億円 |
| QPSホールディングス | 衛星・地球観測 | 衛星の試作 約62.1億円+打上げ 約15.7億円(令和5年度) |
| Synspective | 衛星・地球観測 | 安全保障用途に適したSAR衛星の宇宙実証 令和6年度 約11.6億円 |
| インフォステラ | 地上局・通信 | 衛星周波数解析技術の概念実証 令和6年度 約3.0億円 |
| アクセルスペース | 衛星・地球観測 | 画像データの取得 令和6年度 約1.1億円 |
| 岩谷技研 | 素材・製造 | 高高度標的放出 令和6年度 約5.8億円 |
| Preferred Networks | AI・情報処理 | 3次元集積LSI技術による深層学習・推論の超高速化 令和6年度 約10.2億円 |
| イノフィス | 装備・ヒト | 電源不要のアシストスーツを航空自衛隊百里基地ほかで実証導入 |
さらに規模が違うのが、令和7年度の「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」で、契約金額は約2,831億円。ここにSynspective、QPS研究所、アクセルスペースの3社が参画し、SAR衛星・光学衛星の整備運用を実施しているとされています。
スタートアップの資金調達額とは桁が2つ違う売上が、この領域に入っているということです。転職先の安定性を考えるとき、ここは無視できません。
右列|AI・バイオ・素材が防衛研究に入ってきた

地図でもうひとつ見ていただきたいのが、AI・情報処理と素材・バイオの行です。
2024年10月に創設された防衛イノベーション科学技術研究所では、発足以降、スタートアップが参画する計14件・総額約95.0億円のブレークスルー研究が契約されています。その中身がこちらです。
| 研究テーマ | 主契約相手方 | 契約額 |
|---|---|---|
| 陸上におけるゼロカジュアリティを実現するオートノミーの研究 | カワサキモータース | 約25.2億円 |
| 海洋監視制御システムの研究 | ニューメディア開発協会 | 約24.8億円 |
| 生成AIを活用したナラティブ分析装置の研究 | デジタルレシピ | 約20.5億円 |
| 複数AI技術の組み合わせによる観測・報告・情報統合・資源配分高速化の研究 | Sakana AI | 約9.7億円 |
| 戦術行動迅速化に資する情報統合可視化技術の研究 | アジア航測 | 約9.7億円 |
| 脳情報の新たな活用可能性に関する検討役務 | アラヤ | 約1.3億円 |
| 革新的な社会シミュレーションに係る検討役務 | MEMORY LAB | 約0.5億円 |
| 隊員活動支援基盤におけるヒトのパフォーマンス推定 | Preferred Networks | 約0.5億円 |
| iPS細胞抽出成分による体内恒常性維持及び疾病治癒促進に関する検討 | アイ・ピース | 約0.2億円 |
| 生体バリア機能評価用ヒト肺胞3次元組織モデルの試作検討 | HiLung | 約0.1億円 |
iPS細胞と肺胞の3次元組織モデルが、防衛の予算で動いています。「防衛テック=武器」という理解では、この表はまったく説明がつきません。
実態は、隊員の健康、疲労の推定、情報の統合、災害時にも使える監視と通信です。だから参画企業がAI、バイオ、航測、二輪メーカーと多彩になります。詳しくは防衛テック転職ガイドに書きました。
領域別|求人の出方と刺さる経歴
| 領域 | 求人の出方 | 刺さる経歴 |
|---|---|---|
| 輸送・打上げ | 少数精鋭。採用は散発的だが大型案件時に動く | 重工、推進系、構造、試験 |
| 衛星・地球観測 | 最も採用が活発。上場企業が多く増産局面 | 自動車・家電の量産設計、品質保証、組込 |
| 軌道上サービス・回収 | 技術難度が高く、経験者をじっくり探す | GNC、ランデブ・ドッキング、熱・構造 |
| 地上局・通信・データ | ソフト人材の受け皿として入りやすい | Web系、クラウド、信号処理、データサイエンス |
| AI・情報処理 | 民生の採用枠から入り、防衛案件は一部が担当 | 機械学習、LLM、画像解析 |
| 無人機・装備・ヒト | 実証フェーズで人を増やす | ロボティクス、制御、ウェアラブル、生体計測 |
| 素材・製造・バイオ | 研究職中心。大学との行き来が多い | 材料、積層造形、細胞生物学 |
私の実感として、いちばん間口が広いのは「衛星・地球観測」と「地上局・通信・データ」です。前者は量産フェーズに入っていて人がいくらでも要る。後者は宇宙の専門知識がなくてもソフトウェアの力で入れます。
逆に輸送と軌道上サービスは、採用枠が小さく、専門性の要求が高い。ここを狙うなら、求人が出るのを待つより、まず業界に入って内部で移るほうが早いことがあります。
地図に載っていない会社のほうが多い
念のため書いておきます。この地図に載せたのは、政府資料と各社IRで裏が取れた企業だけです。国内の宇宙関連企業はこれよりはるかに多く、防衛領域では、政府が参入候補として非公式に200社ほどを選んだと報じられています。
つまり名前が知られていない会社に、むしろ機会があるということです。特に防衛領域は制度が新しく、スタートアップ技術提案評価方式では公募から契約締結まで約3か月半と、従来の1年以上から大きく短縮されました。小さい会社でも契約が取れる構造になっています。
宇宙戦略基金19テーマが示す、技術者の需要

地図を補う情報として、宇宙戦略基金の第三期で設定されたテーマを見ておきます。国が開発費を出すと決めた領域=今後3〜5年で人が要る領域だからです。
内閣府の資料には全19テーマが掲げられており、「輸送」「衛星等」「探査等」の3領域に分かれています。主なテーマを、必要になる職種に翻訳するとこうなります。
| 技術開発テーマ(抜粋) | 担当省庁 | 必要になる職種 |
|---|---|---|
| 宇宙輸送機の大気圏再突入に関する技術 | 文科省 | 熱設計、空力、構造、材料 |
| 衛星を取り巻くセキュリティ技術(電波) | 総務省 | 通信、信号処理、セキュリティ |
| デジタル技術を前提とした衛星開発・製造 | 経産省 | 生産技術、モデルベース開発、量産設計 |
| 宇宙実証機会の拡大に資する衛星 | 経産省 | 衛星システム設計、試験 |
| 衛星応用に向けた光・量子センシング技術 | 文科省 | 光学、量子、計測 |
| 次世代衛星通信を実現する革新的衛星搭載アンテナ | 総務省 | アンテナ設計、高周波回路 |
| 衛星統合運用基盤・衛星運用を支える技術 | ー | ソフトウェア、クラウド、運用自動化 |
| 月面開発・深宇宙探査 | ー | ロボティクス、自律制御、電源 |
この表で注目していただきたいのは太字にした2行です。
ひとつめは「デジタル技術を前提とした衛星開発・製造」。これは要するに、衛星を手作りから量産へ移すという話です。自動車や家電で量産設計をやってきた方が、いちばん必要とされているのがここです。宇宙の知識は後から付きます。
ふたつめが「衛星統合運用基盤」。衛星が増えれば運用の自動化が必須になります。これはソフトウェアの仕事で、宇宙の専門知識がなくても入れる数少ない領域です。Web系やクラウドの経験がそのまま効きます。
逆に言うと、熱設計、空力、アンテナ、光学といった領域は、専門性が要求される代わりに競合が少ない。すでにその専門を持っている方には、大きなチャンスがあります。
基金のテーマは公開されていて、採択結果も公表されます。どの会社がどのテーマで採択されたかを見れば、その会社がこれから何の技術者を採るかが読めます。求人が出る前に動けるということです。
なぜ宇宙と防衛が地続きになったのか

この重なりは偶然ではありません。防衛装備庁の資料に、理由がはっきり書かれています。
同資料は、2022年2月から継続しているロシアによるウクライナ侵略において、民生先端技術の取り込みや既存技術の組み合わせを通じて、従来の装備品等の常識にとらわれない斬新な発想が戦いのニーズを満たしたと指摘しています。そのうえで、日本においても無人装備、人工知能(AI)、宇宙といった分野で民生先端技術を防衛目的に活用することが重要だとしています。
資料には、もうひとつ踏み込んだ記述があります。防衛省として、契約を通じてスタートアップの信用力を高め、民間資金の呼び込みを促進すること等も通じて、将来性あるスタートアップの経営基盤強化に貢献していくという趣旨の一文です。
つまり国は、調達を「買い物」ではなく産業政策として位置づけているということです。契約実績があればVCからも調達しやすくなる。この構造を理解しておくと、企業が防衛案件を取りに行く動機が見えてきます。
| 企業にとっての意味 | 候補者にとっての意味 |
|---|---|
| 政府契約が信用力になり、民間調達もしやすくなる | 防衛契約の有無が、会社の資金繰りの安定度を測る指標になる |
| 研究開発費を売上として立てられる | 「赤字でも現金が回っている」会社を見分けられる |
| 民生技術をそのまま持ち込める | 宇宙や防衛の経験がなくても入れる |
この地図は半年で変わります
最後に、賞味期限の話をしておきます。
この領域は制度が動いている最中です。宇宙側では宇宙戦略基金の採択が毎年進み、第三期だけで全19テーマ・2,000億円が動きます。防衛側では令和8年度から防衛省版SBIR制度が始まり、スタートアップ技術提案評価方式も活用が広がる見込みです。
| 動いているもの | 内容 |
|---|---|
| 宇宙戦略基金 | 総額1兆円規模を目指す。第三期は全19テーマ・2,000億円 |
| 防衛省版SBIR | 令和8年度から防衛省で開始。複数企業と同時契約 |
| スタートアップ随契 | 公募から契約締結まで約3か月半 |
| アジャイル型調達 | 部隊と企業が一体でフィードバックを回す方式を制度化 |
繰り返しになりますが、この地図に載っていない会社のほうが圧倒的に多い。
私が転職のご相談でお伝えしているのは、有名な会社の枠が空くのを待つより、いま制度の追い風を受けている会社を探すほうが早いということです。知名度が低い会社ほど競争率は下がります。
日本と世界の企業を名前と金額で並べた一覧は、防衛テック企業リストにまとめました。
自分はどこを狙うべきか

| いまの経歴 | 狙う列 | 理由 |
|---|---|---|
| 自動車・重工・精密の設計/品質 | 中央(衛星・観測) | 量産と品質の経験が最も不足している |
| Web・クラウド・データ | 中央〜右(地上局、AI) | 宇宙の専門知識がなくても入れる数少ない入口 |
| 機械学習・LLM | 右(AI・情報処理) | 民生の採用枠から入り、防衛案件は選べることが多い |
| 研究者・博士(材料・バイオ) | 右(素材・バイオ) | 令和8年度から医療・医工学が研究テーマに追加された |
| 官公庁営業・調達実務 | 全列 | 制度を使いこなせる人が決定的に足りない |
| 法務・輸出管理 | 全列 | 宇宙活動法、周波数調整、輸出管理は避けて通れない |
下の2行を強調しておきます。技術者でなくても、この業界には明確な入口があります。むしろ制度と調達が分かる人のほうが、いま希少です。
宇宙側の詳しい話は宇宙スタートアップ転職ガイドに、ディープテック全般のキャリアはディープテック業界の転職ガイドにまとめています。
よくある質問
Q1. 宇宙スタートアップに入ると防衛の仕事をすることになりますか
可能性はあります。地図の中央列を見ていただければ分かるとおり、主要な宇宙スタートアップの多くが防衛関連の契約を持っています。気になる方は選考段階で「防衛領域の売上比率と自分の担当範囲」を確認してください。
Q2. この地図はどのくらいの頻度で変わりますか
かなり速いです。防衛領域は制度が動いている最中で、令和8年度から防衛省版SBIRが始まります。宇宙側も宇宙戦略基金の採択が毎年進みます。半年で景色が変わる前提で見てください。
Q3. 大企業から転職すると年収は下がりますか
下がることが多いのは事実です。ただし政府契約が取れている会社は売上が安定するので、処遇も上がってきています。防衛装備庁の公表資料で契約実績を確認してから判断してください。
Q4. 文系でも入れますか
入れます。事業開発、官公庁営業、規制・渉外、資金調達。いずれも足りていません。特に調達制度を理解して提案を書ける人材は、どの会社でも取り合いになっています。
まとめ|2つの業界ではなく、1つの地図で見てください
宇宙と防衛を別々に見ていると、求人を半分しか見ないことになります。
実際には、同じ企業が両方で契約し、同じ技術が両方で使われています。だから転職活動も、2つの業界ではなく1枚の地図として見たほうが、選択肢が広がります。
そしてこの地図に載っていない会社のほうが、圧倒的に多い。知名度のない会社ほど採用の競争率は低く、制度の追い風も受けています。
キープレイヤーズでは、21年にわたりベンチャー・スタートアップの転職支援と採用支援を行ってきました。私自身がエンジェル投資家として80社以上に投資し、東北大学の特任教授(客員)として大学発スタートアップにも関わっています。公開されていないポジションの状況についてもお話しできることがあります。お気軽にお問い合わせください。
すぐに転職をお考えでない方には、オンラインサロンもご用意しています。
出典
- 防衛装備庁「防衛分野におけるスタートアップとの連携について」令和8年3月(内閣官房 日本成長戦略会議 第2回 資料4)— 企業別契約実績、防衛イノベーション科学技術研究所の14件・約95.0億円、衛星コンステレーション事業 約2,831億円、スタートアップ随契の約3か月半
- 内閣府 宇宙開発戦略推進事務局「宇宙戦略基金第3期について(全体概要)」令和8年2月
- 各社IR・東京証券取引所 — ispace(9348)、QPSホールディングス(464A)、アストロスケールHD(186A)、Synspective(290A)
※各社の位置づけは公表資料にもとづく筆者の整理です。企業の主たる事業は各社の公式情報をご確認ください。
※本記事に記載した企業のうち、株式会社ElevationSpaceには筆者が個人として出資しています。

