【2026年最新】優秀な人材の離職を防ぐ年収査定と採用強化の完全ガイド|リテンション施策と給与テーブルの作り方を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、キープレイヤーズ代表の高野秀敏です。リクルート出身後に独立し、約25年にわたりベンチャー・スタートアップ・大手企業の採用強化と離職防止のご支援をしてきました。年間でご相談いただく人事課題のうち、最も多いのが「優秀な社員の離職が止まらない」「中途入社と既存社員の給与格差で不満が噴出している」という2つです。

結論から言うと、離職防止と採用強化は、年収査定(給与テーブル)の整備なしには成立しません。「評価制度を作った」「エンゲージメント調査をした」だけでは離職は止まりません。給与の決まり方が納得できない組織では、優秀な人ほど早く辞めます。これは2026年の初任給引き上げ競争と中途相場高騰で、さらに深刻になっています。

この記事では、①2026年の離職・採用市場の実態、②なぜ年収査定が離職防止の起点なのか、③給与テーブルの作り方、④中途入社と既存社員の格差対応、⑤リテンション施策15選、⑥失敗パターン8選、⑦FAQ 8問——を、現場で見てきた実例をもとに率直に解説します。合わせてスタートアップ採用ガイドと年収・手取りガイドも読むと、採用と報酬の設計が立体的に見えてきます。

この記事でわかること

  • 2026年の離職率と人材流出の実態データ
  • 年収査定が離職防止の起点になる3つの理由
  • 給与テーブルの作り方(職務等級・役割等級の設計)
  • 中途入社と既存社員の給与逆転問題の解消方法
  • 金銭的・非金銭的なリテンション施策15選
  • 離職防止で絶対にやってはいけない失敗パターン8選
  • 50人/100人/300人規模別のリテンション設計
  • FAQ 8問と年収査定の実務チェックリスト

▶ あわせて見たい高野の解説動画:「人事評価制度に満足していますか?優秀な社員の離職を防ぐ方法」

目次

2026年の離職・採用市場の3つの事実

①優秀社員の離職は「適正報酬の遅れ」で起きる

2024年の各種人事調査では、既存社員の給与見直しを怠った企業では、優秀社員の離職率が2倍以上になるという結果が繰り返し出ています。離職理由の上位は「人間関係」「仕事内容」が目立ちますが、本音の退職要因としては「市場相場より自分の年収が1〜2割低い」というケースが大半です。

私が約25年支援してきた経験でも、辞める時に「給与が理由」と明言する人は少数で、「成長できない」「文化が合わない」などの表層的な理由で退職します。しかし裏側を聞くと、ほぼ全員が「市場相場と自社の年収ギャップ」を把握しており、転職してギャップを埋めています。

②初任給引き上げで「給与逆転」が全業界で起きている

2026年の初任給引き上げ競争で、新卒・若手の給与が急上昇しました。これに伴い、既存の中堅社員(入社3〜7年目)との給与逆転が全業界で発生しています。「後輩の方が給与が高い」という状態が放置されると、中堅層の離職が連鎖的に進みます。

2026年のCompensation Best Practices Reportでは、33%の雇用主が「新卒と既存社員の小さな給与ギャップが不公平感を生んでいる」と認識している、との結果が出ています。この認識はあっても、給与テーブル全体を見直す決断ができないのが現場の実情です。

③中途採用の相場高騰で「中途>既存」の構造が常態化

ベンチャー・スタートアップでは、中途採用の相場が1〜2割上がったことで、新しく入ってくる中途入社者の方が、同職位の既存社員より給与が高いケースが増えています。既存社員からすると「自分の方が長く貢献しているのに、新人の方が給与が高い」という状況になります。

この格差は、放置すれば必ず社内に漏れ、既存社員のモチベーション低下と離職を招きます。年収査定の整備は、この構造を正面から解消する唯一の方法です。

年収査定が離職防止の起点になる3つの理由

理由① 「評価されている感」の7割は年収で決まる

社員が「会社に認められている」と感じる要素のうち、7割は年収と年収の決まり方の透明性です。評価面談や称賛制度を整備しても、年収が市場相場より低ければ「言葉だけの評価」と見なされます。「言うは易し、金で示せ」が社員のホンネです。

理由② 給与テーブルが無いと、評価の納得感が得られない

給与テーブルが整備されていない会社では、「なぜAさんは年収800万円で、Bさんは700万円なのか」が説明できません。説明責任を果たせない評価は、受け手の納得感を得られません。給与テーブル(職務等級・役割等級と給与の対応表)は、評価制度の背骨です。

理由③ 相場との乖離を定期的に埋めないと、リファラル採用も崩れる

優秀社員からのリファラル採用は、「自分の会社の報酬が市場相場並み」であることが前提です。既存社員が自分の年収に不満を持っていると、「ウチに来ない方がいいよ」と内側からブレーキがかかります。採用強化と離職防止は、年収査定で地続きなのです。

給与テーブルの作り方(職務等級・役割等級の設計)

ステップ① 職務等級(グレード)を定義する

まず5〜8段階のグレードを設計します。例えばG1(オペレーター)、G2(担当)、G3(シニア担当)、G4(リーダー)、G5(マネージャー)、G6(シニアマネージャー)、G7(部長)、G8(事業部長・CxO)のような構造です。会社規模が小さい場合は5段階で十分。

ステップ② グレードごとの役割を言語化する

各グレードで「何を期待されるか」を1枚で言語化します。G3は「担当業務の中で改善提案ができる」、G5は「3〜5名のメンバーの採用・育成に責任を持つ」、など。曖昧なら「G4の人と G5の人は何が違うか」を上司・社員の両方に聞いて精緻化します。

ステップ③ 市場相場を調べ、レンジを決める

グレードごとの市場相場レンジを外部データ(人材紹介会社の提示する相場、採用媒体のオファーレンジ、競合企業の求人)から調べます。レンジは「下限・中央・上限」の3点で設定し、下限は中央の90%、上限は中央の115%程度に。

ステップ④ 既存社員を仮配置してギャップを可視化

既存社員全員をグレードとレンジ上にプロットします。レンジの下限より下に落ちている人、上限を超えている人を可視化。下限より下の人は是正対象、上限を超えている人は特別な理由があるか確認。

ステップ⑤ 是正スケジュールを決める

一度にすべてを是正すると人件費が爆発するので、2〜3年かけて是正するのが実務的。優先順位は「市場相場との乖離が大きい」「離職リスクが高い」「代替困難なキーパーソン」から。年次評価のタイミングで段階的に是正します。

ステップ⑥ 社員に給与テーブルを開示する(または説明する)

完全開示が難しくても、「どの等級がどのレンジか」の説明責任は果たす。「自分がどの等級で、どのレンジのどこにいるか」を説明できる状態にします。この透明性が、離職防止の最大の武器になります。

比較表:給与テーブル有りvs無しの組織

観点 給与テーブル有り 給与テーブル無し
評価の納得感 説明可能・透明 「社長の気分」と疑われる
中途入社の給与設定 既存社員とのバランスが取れる 案件ごとに相場で決まり逆転発生
市場相場との整合 年1回の見直しで是正可能 1〜2割の遅れが常態化
キャリアパスの明示 「次のグレードに行くには〇〇」が示せる 昇進基準が不透明で成長感が弱い
リファラル採用 社員が自信を持って誘える 「ウチは給与がね」とブレーキ
離職の予兆把握 レンジ下限者を事前にケア 辞表が出てから慌てる
マネージャーの納得 自分の報酬の立ち位置が分かる 役職と報酬の整合に疑問
昇給交渉 ルールベースで感情的にならない 個別交渉で不公平発生
採用の意思決定 「このレンジで出せるか」が即判断可 毎回社内調整で遅くなる
辞める時の本音 年収理由が減り成長・挑戦理由が増える 年収理由が隠れた本音になる

中途入社と既存社員の給与逆転の解消方法

対応① 給与テーブルを基準に全員のレンジを再計算

中途入社者を特別扱いせず、給与テーブル上のレンジに全員を乗せるのが基本。中途入社がレンジの中央より上の場合、既存社員のレンジ内位置と比較して不公平が起きていないか確認。

対応② レンジ下限の既存社員を優先的に是正

中途入社の受け入れと同時に、既存社員のレンジ下限者の昇給を同じサイクルで実施します。「中途は上げるが既存は据え置き」が社員の最大の離職誘因。

対応③ 役割変更をセットにする

単に昇給するだけでなく、「〇〇の役割を担うので、グレードが上がり給与が上がる」というロジックを作ります。役割なき昇給は「場当たり」と見られるため、必ずセットで。

対応④ 市場相場の情報を社員と共有

人事担当者が入手する市場相場情報を社員にも開示すると、「ウチだけ低い」の誤解が解けます。「市場相場はこうで、ウチは中央に対してこの位置」と説明できると、信頼感が増します。

対応⑤ 中途入社の報酬は「レンジ内」で絞る

中途入社者に市場相場より1〜2割高いオファーを連発すると、短期で採用強化はできても、既存社員の離職が加速。中途入社も「レンジ内」に収める方が、組織の持続性は高い。

金銭的・非金銭的なリテンション施策15選

金銭的施策(7選)

  • ① 市場相場との乖離を年1回チェック・是正:外部データとの比較を年次イベント化
  • ② 給与テーブル・レンジの明文化:グレードと報酬レンジの対応表を社内公開
  • ③ 業績連動賞与の設計:会社業績と個人業績の両方を反映
  • ④ ストックオプション(SO)の付与:ベンチャー・スタートアップはSOで中長期インセンティブ
  • ⑤ 退職金・企業型DC:長期インセンティブとして見直し
  • ⑥ 住宅手当・通勤手当の見直し:生活コストに応じた柔軟な設計
  • ⑦ 子育て・介護支援の金銭的サポート:家族サポートが離職防止に直結

非金銭的施策(8選)

  • ⑧ キャリアパスの明示:「次のグレードに行くには何が必要か」を文書化
  • ⑨ 1on1の定着:月1回以上、キャリア・業務・コンディションを対話
  • ⑩ 学習支援(書籍・勉強会・外部研修):成長機会への投資
  • ⑪ 社内公募・副業制度:キャリア選択肢の拡張
  • ⑫ リモート・フレックス制度:柔軟な働き方で離職抑制
  • ⑬ 心理的安全性の醸成:失敗を責めない文化、建設的フィードバック
  • ⑭ サンクスカード・称賛制度:日常的な承認の仕組み化
  • ⑮ エクジットインタビュー&オフボーディング改善:辞める人から学ぶ

絶対やってはいけない失敗パターン8選

失敗① 中途は上げるが既存は据え置き

最大のタブー。「中途入社だけ給与を引き上げる」のは、既存社員への最強の離職誘因になります。中途と既存は常にセットで見直す。

失敗② エンゲージメント調査だけやって施策に落とさない

調査は実行の前提であって、ゴールではありません。「調査しただけで何も変わらない」が続くと、社員の信頼を一気に失います。調査結果に対する具体的アクションを3つ以上公開する。

失敗③ 給与の決まり方をブラックボックスにする

「社長の判断で決める」は、規模30人を超えた瞬間に機能しなくなる方式。グレード・レンジ・評価ロジックを明文化し、少なくともマネージャーには開示します。

失敗④ 一律の福利厚生で満足感を狙う

社員食堂・社内イベント・社内ジムなど、一律の福利厚生は離職防止効果が限定的。個別のニーズ(子育て・介護・学習・住居)に合わせたカフェテリアプランの方が効果が高い。

失敗⑤ 業績が下がった時に報酬だけ下げる

業績悪化時に報酬だけ下げると、優秀社員から順に辞めます。業績悪化こそ、優秀社員の定着が最重要。報酬維持と非金銭施策の強化でカバー。

失敗⑥ マネージャー教育を疎かにする

離職の7割は「直属の上司との関係」で起きます。マネージャー教育(1on1・フィードバック・評価)に投資せず、人事施策だけ整備しても離職は止まらない。

失敗⑦ 「辞めそうな人」だけに個別対応

辞める予兆が出てから個別対応すると、「予兆を出せば交渉で得する」という文化が生まれます。レンジ下限者には全員同じ対応をするのが公平。

失敗⑧ 退職者のインタビューをしない

退職者は組織の課題を最も正直に語る存在です。エクジットインタビューで本音を聞かないのは、組織改善の機会損失。退職後3ヶ月のタイミングで聞くと、本音が出やすい。

規模別のリテンション設計

50人規模:まず給与テーブルの骨格を作る

50人規模では、完璧なテーブルは不要。5グレード程度の骨格と、各グレードの役割言語化、市場相場レンジの大枠が揃えば十分。社長・CxOが直接関与できる規模なので、人間関係での離職防止もしやすい。

100人規模:マネージャー育成に投資

100人を超えると、社長の目が全員に届かなくなり、マネージャーの質が離職率を左右します。マネージャー教育プログラム(1on1・評価・フィードバック)に本格投資。採用の詳細はスタートアップ採用ガイドにまとめています。

300人規模:等級制度の精緻化とキャリアパス明示

300人規模になると、キャリアパスが見えないことが離職の最大要因。「このグレードから次のグレードに行くには何が必要か」を全社員が理解できる状態にします。社内公募・副業制度も必要になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 給与テーブルを一度作ると変更できないのでは?

いいえ、年1回の市場相場見直しで、レンジを柔軟に動かすのが前提です。固定的な制度ではなく、生き物として毎年更新していくのが実務。初版は粗くて構いません。

Q2. 社員に給与テーブルを開示すべきですか?

完全開示(個人の年収を全員が見られる)は賛否がありますが、グレードとレンジの対応表は原則開示すべきです。少なくともマネージャー層には開示しないと、評価面談で説明できません。

Q3. 中途入社の年収交渉はどう対応すればいいですか?

「レンジの中で、どの位置に置くか」を基準に判断します。レンジを超える要求は、グレードを一段上げる要件を満たしているかで判断。レンジを超えて個別対応すると、既存社員との不整合が起きます。

Q4. 給与テーブルを作る前に、既存社員の格差を是正すべき?

順序としては①テーブル作成→②既存社員の仮配置→③ギャップ是正です。テーブル無しで是正すると、是正の根拠が主観的になり不公平が生まれます。

Q5. 年収を上げる以外に離職防止で効果があるのは?

最も効果が高いのは「キャリアパスの明示」と「マネージャーとの関係」です。年収は最低ラインを満たせば、それ以上は限界効用が逓減します。市場相場の下限を下回っていなければ、非金銭施策の方が ROI が高い。

Q6. 退職者を引き止めるべきですか?

原則引き止めない方が良いです。引き止めで残る人は、翌年に再度辞表を出す確率が極めて高い。引き止めるコストより、退職理由を聞き次の離職予防に活かす方が ROI が高い。

Q7. 役員・CxOクラスの報酬はどう設計しますか?

役員クラスは固定給+業績連動+ストックオプションの3層設計が基本。市場相場より、会社のステージと役員の責任範囲で決めます。詳しくはCXO転職ガイドも参考に。

Q8. 離職率は何%以下に抑えるべきですか?

業界によりますが、IT・ベンチャーで年間離職率10〜15%、大手で5〜8%が目安。ただし「どの層が辞めているか」が重要。優秀社員の離職率を分けて計測し、優秀層の離職率が全社平均より高い場合は要注意です。

まとめ:離職防止と採用強化は年収査定で地続き

約25年の経験で見てきた結論は、「離職防止と採用強化は、年収査定(給与テーブル)を起点に設計しないと機能しない」ということです。評価制度・エンゲージメント施策・1on1——どれも大切ですが、報酬の設計が歪んでいれば、他の施策はすべて砂上の楼閣になります。

大切なのは、①給与テーブルの骨格を作る、②市場相場と年1回比較する、③中途入社と既存社員の格差を同じサイクルで是正する、④マネージャー教育に投資する、⑤キャリアパスを明示する、⑥退職者から学ぶ、⑦金銭的・非金銭的施策を両輪で回す——この7つです。

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップ・成長企業の法人向け年収査定サービス(給与テーブル作成、市場相場比較、既存社員のレンジ診断)と、採用強化・リテンション設計を25年提供してきました。「優秀社員の離職が止まらない」「中途と既存の給与格差で困っている」とお悩みの経営者・人事責任者の方は、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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