大手メーカーからベンチャー・スタートアップへ転職する方法【2026年最新版】黒字リストラ1万7,875人時代の職種別移行マップ・年収・失敗パターンを高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を27年続けているキープレイヤーズの高野です。

「大手メーカーにいますが、この先どうなるか分かりません。ベンチャーに行けますか」——ここ2年で最も増えた相談のひとつです。しかも相談者の質が明らかに変わりました。以前は「大企業に飽きた若手」が中心でしたが、いまは40代の課長・部長クラスが、早期退職の募集通知を手に相談に来ます

まず市況の一次データを置きます。東京商工リサーチによれば、2025年の上場企業の「早期・希望退職募集」は1万7,875人で、リーマン・ショック以降で3番目の高水準でした。特徴は業績悪化型ではなく「黒字リストラ」で、三菱電機、パナソニックホールディングス、三菱ケミカルグループ、ソニーグループといった名門が、好業績のうちに人員構成の入れ替えに踏み切っています。パナソニックHDは国内外で1万人規模、日産自動車はグローバルで2万人規模の削減を発表しました。削減対象の中心は管理職年代です

一方の受け皿側はどうか。スピーダ「Japan Startup Finance」によれば2026年上半期の国内スタートアップ資金調達額は3,779億円で前年同期比+12%。金額は伸びています。ところが調達社数は前年同期比▲35%。つまり「お金は増えたが、お金が入る会社は激減した」——これが2026年の前提です。IPOも2025年は66社(前年86社)、東証グロースは41社(前年64社)まで絞られました。

この記事では、①なぜいま大手メーカー人材が動いているのか/②メーカーとベンチャーの6軸比較/③職種別の移行先マップ/④年収のリアル/⑤メーカー出身者が刺さるスタートアップ4類型と、それぞれのリスク/⑥入社後に直面するギャップ7つ/⑦成功事例3つ/⑧失敗パターン7つ/⑨年代別戦略/⑩見極めチェックリスト12項目/⑪転職ステップ6段階/⑫FAQ8問——を、私自身がメーカー出身者を送り出してきた実感と公的データで整理します。

ベンチャー転職の全体像はベンチャー転職完全ガイド、失敗の型を先に知りたい方はベンチャー転職の失敗・後悔ガイドを併読してください。

目次

結論:大手メーカー出身者が勝てる3つのポジション

27年見てきて、メーカー出身者がベンチャーで明確に価値を出せるのは、この3つに集約されます。逆に言うと、この3つに当てはまらない転職は苦戦します

ポジション 何を売るのか 刺さる企業 想定年収 難易度
①「量産の壁」を越えさせる人 試作から量産への移行実務。工程設計・歩留まり改善・サプライヤー交渉・品質保証体制 ハードウェア/DeepTech/ロボティクス 700〜1,300万円 ★★☆(希少性が高く最も通りやすい)
②「顧客の現場が分かる人」 製造現場の業務理解。何が本当に困っているか、誰が決裁するか 製造DX・SaaS・産業AI 600〜1,100万円 ★★☆(カスタマーサクセス・事業開発として重宝)
③「大企業と話せる人」 大企業の稟議・購買・法務プロセスを内側から知っていること エンタープライズ向け全般/CVC・オープンイノベーション 700〜1,500万円 ★★★(実績と人脈の証明が要る)

ここに入らない場合、たとえば「大手電機で企画をやっていました、成長環境に身を置きたいです」だけでは、正直きついです。ベンチャー側が欲しいのは肩書ではなく、自社の詰まっている工程を溶かしてくれる人だからです。

なぜ今、大手メーカー出身者のベンチャー転職が増えているのか

押し出す力:黒字リストラと管理職ポストの消滅

前述のとおり2025年の早期・希望退職募集は1万7,875人。ポイントは「業績が悪いから切る」ではなく「事業ポートフォリオを組み替えるために、いまの人員構成を入れ替える」という動機に変わったことです。

私が相談を受けていて痛感するのは、50代の部長職より、45歳前後の課長職のほうが焦っているということです。理由は明快で、上が詰まっていて役員ポストが見えず、かといって早期退職の割増退職金を取るには年齢が若すぎる。そしてこの層こそ、ベンチャーが最も欲しい実務力を持っています

引っ張る力:スタートアップ側の「大人の人材」不足

2026年のスタートアップ市場は、前述のとおり資金は集中し、社数は絞られています。生き残った会社は一件あたりの調達額が大きく、「PoCから量産へ」「10人から100人へ」という次のフェーズに進まざるを得ません。ここで必ず詰まるのが、品質・原価・調達・安全規格・工場立ち上げといった、まさにメーカーの人が20年やってきた領域です。

もう一段、構造的な話をします。日本のスタートアップの弱点は「作れる人はいるが、作り続けられる人がいない」ことです。プロトタイプは大学発の技術者が作れます。しかし月産1万台を歩留まり98%で回す仕組みは、大企業の生産技術・品質保証の人しか作ったことがない。この非対称性が、メーカー出身者の市場価値の源泉です

大手メーカーとベンチャーの違い:6軸で比較する

「文化が違う」で終わらせず、具体的に何がどう違うのかを整理します。転職前にここを腹落ちさせておかないと、入社3ヶ月で必ず躓きます。

大手メーカー ベンチャー・スタートアップ 移行時のギャップ
意思決定 稟議・部門間調整で数週間〜数ヶ月 その場でCEOが決める。翌週にはひっくり返ることも 「決まらない不満」から「決まりすぎる不安」へ
仕事の定義 職務分掌が明確。仕様書とマニュアルがある 職務分掌なし。仕様書は自分で書く 「指示待ち」が即座に無価値になる
時間軸 3〜5年の開発サイクル。品質が最優先 3ヶ月で結果。8割の品質で出して直す 完璧主義がボトルネック扱いされる
リソース 設備・治具・分析機器・協力会社が揃っている 測定器すら自腹で買うか借りる 「前職では〇〇があった」は禁句
評価 年功と減点法。失敗しないことが評価される 成果と加点法。動かないことが最大の減点 慎重さが「遅い」と翻訳される
報酬 退職金・企業年金・家賃補助・持株会 現金年収+ストックオプション。福利厚生は薄い 手取りベースで年100万円以上下がることも

とくに報酬の「見えない部分」を軽視する人が多い。大手メーカーの家賃補助・退職金積立・企業年金・保養所・団体保険を金額換算すると、年収の15〜25%相当になることが珍しくありません。提示年収が同額でも、実質は下がります。この点は年収・手取りガイドスタートアップ転職で年収は下がるのかで詳しく扱っています。

【重要】職種別・メーカーからベンチャーへの移行マップ

ここが本記事の中核です。「メーカー出身」とひとくくりにされますが、職種によって行き先も難易度もまるで違います。私が実際に決まった事例をもとに整理しました。

前職(メーカー) 相性の良い転職先 ベンチャーでの役割名 難易度 年収レンジ
生産技術・製造技術 ハードウェア/ロボティクス/EV/DeepTech 生産技術責任者、Manufacturing Lead、VP of Manufacturing ★☆☆(最も需要が強い) 800〜1,400万円
品質保証・信頼性評価 医療機器/モビリティ/宇宙/産業機器 QAマネージャー、薬事・規格担当 ★☆☆(有資格・規格経験は極めて希少) 700〜1,300万円
機械設計・電気電子設計 ハードウェア全般/ロボティクス ハードウェアエンジニア、設計リード ★★☆ 650〜1,100万円
研究開発(材料・化学・バイオ) DeepTech/素材/環境/創薬 研究責任者、CTO候補 ★★★(会社の数が少なく、当たり外れが大きい) 700〜1,500万円
調達・購買・サプライチェーン ハードウェア量産期/D2C/物流SaaS SCMマネージャー、調達責任者 ★★☆(量産期に入った会社では引く手あまた) 650〜1,200万円
知的財産・法務 DeepTech/大学発スタートアップ 知財責任者、法務マネージャー ★★☆(特許戦略が生命線の会社では必須) 700〜1,300万円
生産管理・工場管理 製造DX SaaS/産業AI/ロボティクス カスタマーサクセス、導入コンサル、PdM ★★☆(現場の言語を話せる人材として重宝) 600〜1,000万円
法人営業(産業機器・部材) エンタープライズSaaS/製造DX エンタープライズセールス、事業開発 ★★☆(大企業の購買プロセス理解が武器) 600〜1,200万円+インセンティブ
経営企画・事業企画 ミドル〜レイター期の全業種/CVC 経営企画、事業開発、CxO候補 ★★★(数字を作った実績の証明が必要) 700〜1,500万円
人事・総務・経理 N-3〜N-1期のIPO準備企業 管理部長、労務責任者、経理責任者 ★★☆(上場準備の労務・内部統制で価値が出る) 600〜1,200万円

この表で最も伝えたいのは、生産技術と品質保証の希少価値です。ソフトウェア人材は市場に大量にいますが、「量産立ち上げをゼロからやった人」は日本に数千人しかいません。大手メーカーの中では「地味な職種」とされてきた人ほど、ベンチャー市場では最も高く売れます。ここは自己評価と市場評価が最も乖離するポイントです。

職種別のさらに詳しい相場はベンチャー企業の年収相場、メーカー出身者全般の転職先の広がりはメーカー出身者の転職先を参照してください。

年収のリアル:下がる人・上がる人

厚生労働省の統計ベースでは製造業の平均年収は約396万円、dodaの調査ではメーカー業界全体で481万円。ただしこの記事の読者層である大手メーカーの30〜40代総合職は、実際には700〜1,000万円のレンジにいます。キーエンス、ディスコをはじめ平均年収1,000万円超のメーカーも複数あります。

ケース 入社時の年収変化 3年後 典型例
アーリー期(シリーズA前後)へ幹部候補として ▲15〜30% SO次第で大きく振れる。上場すれば数千万円、失敗すればゼロ 40代生産技術部長→ロボティクスVP
ミドル期(シリーズB〜C)へ即戦力として ▲5%〜+10% +20〜40%(役割拡大に連動) 30代品質保証→医療機器QAマネージャー
レイター・IPO準備企業へ ±0〜+15% +10〜30%。SOは薄いが現金が出る 40代経理課長→管理部長
上場ベンチャー・メガベンチャーへ +10〜30% +20〜50% 30代設計→上場ハードウェア企業リード
製造DX SaaSの営業・CSへ ±0〜+20%(インセンティブ込み) 成果連動で青天井にも、伸び悩みにも 40代産業機器営業→エンタープライズセールス

正直に申し上げると、「年収を上げるためにアーリー期のスタートアップへ行く」は、ほぼ必ず裏切られます。アーリー期で年収が上がるのは、CxOクラスで採用されるか、その会社が異常な調達をした直後だけです。年収の絶対値を上げたいなら、ミドル期以降か上場ベンチャーを狙うのが定石です。ストックオプションの評価方法はストックオプション完全ガイドで解説しています。

大手メーカー出身者に向いているスタートアップ4類型(とそのリスク)

類型1:ハードウェア・ロボティクス系

もっとも素直に経験が活きる領域です。ティアフォー(自動運転)、Telexistence(遠隔操作ロボット)、GITAI(宇宙ロボット)のように、量産と安全性の壁を越えなければならない会社では、生産技術・品質保証の経験者が中核人材になります。

リスク:ハードは資金を食います。試作→量産の各段階で追加調達が必要で、市況が悪化すると一気に資金が詰まります。入社前に「あと何ヶ月の運転資金があるか」を必ず聞いてください

類型2:DeepTech・素材・宇宙

研究開発職の受け皿です。アストロスケール(宇宙デブリ除去、2024年6月に東証グロース上場)、TBM(石灰石由来素材LIMEX)などが代表格です。

リスク:ここは率直に書きます。2026年3月、慶應大学発のユニコーン企業スパイバー(Spiber)が私的整理に入り、事業を新会社CRANEへ譲渡しました。東京商工リサーチによれば2025年12月期は438億円の最終赤字。国内ユニコーンが私的整理に至った初のケースです。DeepTechは「技術がすごい=生き残る」ではありません。研究開発から売上化までの距離が長いほど、資金の壁は高くなります。日系VCへの調査でも2026年のDeepTech領域は向かい風が続くとの見方が優勢です。夢のある領域ですが、入るなら覚悟と、家計の余力を持ってください。

類型3:製造DX・産業SaaS

いま最もバランスが良い選択肢だと思っています。ソフトウェアビジネスなので資金効率が良く、かつ顧客が製造業なので、メーカー出身者の現場理解がそのまま武器になる。エンジニアでなくても、生産管理・品質管理の経験があればカスタマーサクセスやプロダクトマネージャーとして入れます。詳しくは製造業DX・スマートファクトリー業界の転職ガイドをご覧ください。

リスク:SaaSは競合が多く、顧客単価と解約率で勝負が決まります。ARRの成長率と解約率を必ず聞いてください

類型4:大企業のCVC・カーブアウト・出向

「いきなり転職は怖い」という方に最も現実的な選択肢です。所属を大企業に残したまま、スタートアップに出向・兼業する形が増えました。企業側の狙いはスタートアップ採用ガイドで解説しています。

リスク:中途半端になりやすい。「戻る前提」で行くと、スタートアップ側からは本気度を疑われます

入社後に直面する7つのギャップ

  1. 仕様書がない:前職では上流から降りてきた要求仕様を、自分で顧客に聞いて書く側に回ります
  2. 承認がない代わりに、責任もない:誰も止めてくれない。判断を先送りすると全部止まります
  3. 設備がない:分析装置も恒温槽も試験機もない。外注先を自分で探すところから
  4. 「品質」の基準が違う:不具合ゼロを目指すのではなく、「どこまでの不具合なら出荷して良いか」を経営判断として決める
  5. 人が辞める:前職では珍しかった退職が日常になります。動揺しないこと
  6. 手取りが減る:家賃補助・退職金積立がなくなるインパクトを、生活設計に必ず織り込む
  7. 肩書が効かない:「〇〇電機の部長でした」は、社内で3日、社外で3ヶ月しか通用しません

とくに6番目は軽視されがちです。住宅ローンを組む予定がある方は、転職のタイミングを間違えると融資そのものが受けられません。詳細は転職と住宅ローン完全ガイドにまとめました。ここは本当に相談が多い論点です。

成功事例3つ

事例1:自動車部品メーカー 生産技術課長(41歳)→ EV系スタートアップ 生産技術責任者

前職年収950万円、転職後860万円(+SO)。下がっています。それでも本人が動いたのは、量産ラインをゼロから設計できるポジションが前職では40代後半まで回ってこないと分かったからです。入社1年で試作から小ロット量産への移行を完了させ、2年目に年収1,080万円。この方の勝因は明確で、「自分は工程設計と歩留まり改善で貢献する」と役割を1文で言い切れたことです。

事例2:電機メーカー 品質保証(34歳)→ 医療機器スタートアップ QAマネージャー

前職年収680万円、転職後780万円。医療機器は薬機法・ISO13485の壁があり、規格対応の経験者がいないと製品を出荷できません。この希少性がそのまま年収に反映されました。品質保証は社内では「守りの部署」扱いですが、スタートアップでは売上を出せるかどうかを握る攻めのポジションになります。

事例3:素材メーカー 生産管理(38歳)→ 製造DX SaaS カスタマーサクセス責任者

前職年収720万円、転職後700万円+インセンティブで実質760万円。エンジニアではありません。「工場の人が何に困っていて、誰に話を通せば導入が決まるか」を知っていることが、そのまま商品になったケースです。3年目にVP of Customer Successとなり年収1,000万円超。技術職以外のメーカー出身者にとって、最も再現性が高いルートだと思っています

失敗パターン7つ

失敗パターン 何が起きるか 回避策
①「大手の常識」を持ち込む 「まず仕様を固めましょう」で3ヶ月止まる 最初の3ヶ月は自分の型を封印し、会社のやり方で回す
②看板を頼りにする 前職名を出すほど社内で浮く 入社初月に小さくても具体的な成果を1つ出す
③資金状況を確認しない 入社半年で減給・レイオフ 直近調達時期・調達額・ランウェイ(残り月数)を面接で聞く
④年収ダウンを軽く見る 家計が回らず1年で出戻り検討 家賃補助・退職金・企業年金を含めた実質手取りで比較する
⑤ストックオプションを年収の一部として計算する 行使できず、税金だけ払う結果に 現金年収だけで生活が成立する水準か確認。SOは宝くじ扱い
⑥カオスを甘く見る 方針が毎週変わることに耐えられず消耗 体験入社・業務委託で1〜3ヶ月お試ししてから決める
⑦家族に相談せず走る 内定後に配偶者が反対し辞退 選考の初期段階で家族に話す

⑦は本当に多い。内定が出てから配偶者に伝えて破談になるケースを、毎年何件も見ています。転職を家族に相談する完全ガイド既婚者のベンチャー転職ガイドを先に読んでおいてください。

同じ「大手から」の転職でも、銀行員の場合は活きる職種と壁が異なります。銀行の年収は上がっているのに離職率が3年で1.7倍になった構造、経営者と話し慣れている強みをBizDevやエンタープライズ営業に活かす道、CFOが狭き門である理由は銀行員からベンチャー・スタートアップへ転職する方法で解説しています。

年代別戦略

年代 市場での見られ方 狙うべきフェーズ やるべきこと
20代後半 ポテンシャル採用が効く。失敗しても取り返せる アーリー〜ミドル。何でもやれる環境へ 設計・生技いずれかで手を動かせる状態を作ってから動く
30代前半 最も市場価値が高い。即戦力かつ伸びしろあり ミドル期。リードポジション 「自分の担当工程で何をどれだけ改善したか」を数字で語れるように
30代後半 マネジメント経験の有無で評価が二分 ミドル〜レイター。チームを持つ前提 部下人数・予算規模・意思決定範囲を職務経歴書に明記
40代 「組織を作れるか」だけが問われる レイター・IPO準備企業。責任者ポジション 年収ダウンを受け入れる覚悟と、家計の3年分の余力
50代 顧問・業務委託からの入り口が現実的 フェーズ不問。専門特化 週2〜3日の業務委託で入り、成果が出たら正社員化を交渉

年代別の詳細は年齢別転職ガイドにまとめています。40代の方は40代のベンチャー転職は遅いのかもあわせてどうぞ。

入社前の見極めチェックリスト12項目

面接で必ず確認してください。答えを渋る会社は、その時点で候補から外して構いません

  1. 直近の調達はいつ、いくらか。リードVCはどこか
  2. 現在のランウェイ(無調達で何ヶ月持つか)は何ヶ月か
  3. 売上は立っているか。ARR/年商はいくらで、成長率は何%か
  4. 量産・生産に関する意思決定を、いま誰がしているか
  5. 製造委託先(EMS・協力工場)は決まっているか。単価交渉は誰の担当か
  6. 直近1年の退職者は何人か。うち入社1年未満は何人か
  7. 採用しようとしているこのポジションは、新設か、欠員補充か
  8. 欠員補充なら、前任者はなぜ辞めたのか
  9. 創業メンバーは全員在籍しているか
  10. ストックオプションの発行済み枠・付与予定株数・想定行使価額はいくらか
  11. 労務管理(36協定・みなし残業時間・勤怠システム)は整備されているか
  12. 自分の1年後の成功状態を、CEOは何と定義しているか

企業の見極め全般はベンチャー企業の選び方・見極め方で15のポイントに整理しています。

転職活動の進め方6ステップ

  1. 棚卸し(1〜2週間):担当工程・改善実績・数値成果・扱った予算規模を書き出す。「〇〇の歩留まりを92%→97%に」のように必ず数字で
  2. 情報収集(2〜4週間):STARTUP DB・スピーダなどで調達情報を追い、行きたい領域を3つに絞る
  3. エージェント面談(2〜3社):大手総合型1社+ベンチャー特化型2社が基本。転職エージェントの選び方ガイドを参照
  4. カジュアル面談(5〜10社):選考ではなく情報収集。ここでランウェイと量産体制を聞く
  5. 選考(1〜2ヶ月):職務経歴書は「工程×課題×打ち手×数値」の型で。ベンチャー転職の職務経歴書完全ガイドが使えます
  6. オファー面談・条件交渉:現金年収・SO・役割・レポートラインを文書で確認。オファー面談・条件交渉完全ガイド

期間の目安は3〜6ヶ月。在職中に進めることを強くおすすめします。辞めてから探すと、足元を見られて条件が下がります

大手メーカー→ベンチャー転職でよくある質問(FAQ)

Q1. 文系職(営業・経営企画・調達)でもベンチャー転職できますか?

できます。むしろ製造DX SaaSやエンタープライズ向け事業では、「大企業の購買・稟議プロセスを内側から知っている人」が決定的に不足しています。技術が分からないことを引け目に感じる必要はありません。

Q2. 40代でも大手メーカーからベンチャーに転職できますか?

できますが、条件が変わります。40代に求められるのは「自分で手を動かす」ではなく「組織と仕組みを作る」こと。部下人数・予算規模・意思決定範囲を語れるかが分岐点です。年収は一時的に下がる前提で臨んでください。

Q3. 技術が古くなっていることが不安です

技術の新しさより「問題の切り分け方」と「量産まで持っていく段取り」が評価されます。20年やってきた工程管理の思考法は、新しい技術領域にも移植できます。ただし製造DXやAI領域を狙うなら、用語レベルの基礎知識は入れておいてください。AI時代に求められるスキルが参考になります。

Q4. 年収はどのくらい下がりますか?

アーリー期なら15〜30%減、ミドル期なら±10%、レイター・上場ベンチャーなら維持〜増が目安です。ただし家賃補助・退職金積立・企業年金を含めた実質では、提示額が同じでも下がります。手取りベースで試算してください。

Q5. ストックオプションはどう評価すればいいですか?

現金年収だけで生活が成立するかで判断し、SOはゼロ評価で意思決定する——これが私の基本的な助言です。付与株数だけでなく発行済株式総数・行使価額・権利確定条件(ベスティング)まで確認してください。

Q6. 早期退職に応募してから転職活動をするのと、在職中に動くのはどちらが得ですか?

割増退職金の額次第ですが、原則は「在職中に内定を取り、それから退職の意思決定をする」です。割増退職金は魅力的ですが、無職期間があると住宅ローン・賃貸審査・保育園の就労証明など生活面の制約が一気に増えます。

Q7. 出向・副業から始めることはできますか?

できます。特に50代の方には最も現実的な入り口です。週2〜3日の業務委託で入り、双方が納得したら正社員化を交渉する流れが増えています。副業・業務委託からのスタートアップ転職ガイドを参照してください。

Q8. DeepTech系は本当に危ないのでしょうか?

「危ない」ではなく「時間軸が長く、資金の壁が高い」と理解してください。前述のスパイバーの私的整理は、技術力があっても売上化までの距離が長ければ資金が尽きるという現実を示しました。行くなら、ランウェイの確認と、家計の3年分の余力を確保したうえで。逆に言えば、その覚悟があるなら、日本の産業構造を変える仕事に関われる稀有な領域です。

まとめ:メーカーの「地味な20年」が最も高く売れる時代

整理します。

  • 押し出す力:2025年の早期・希望退職は1万7,875人。黒字リストラが管理職年代を直撃している
  • 引っ張る力:スタートアップは資金が集中し、量産・組織化のフェーズへ。生産技術・品質保証・調達の経験者が決定的に不足している
  • ただし選別は厳しい:2026年上半期の調達社数は前年比▲35%。会社選びを間違えると本当に沈む
  • 勝ち筋は3つ:量産の壁を越えさせる/顧客の現場が分かる/大企業と話せる
  • 年収は一時的に下がる前提で:実質手取りで比較し、SOはゼロ評価で意思決定する

27年この仕事をしていて確信しているのは、大手メーカーで「地味」とされてきた職種の人ほど、ベンチャー市場では希少だということです。歩留まりを1%上げるために半年かけた経験、協力工場と単価を詰めた経験、規格認証を取り切った経験——これらは、資金は集めたけれど物を作り続けられないスタートアップにとって、喉から手が出るほど欲しい能力です。

キープレイヤーズでは、ハードウェア・DeepTech・製造DX領域のスタートアップを中心に、メーカー出身者のご相談を数多くお受けしています。「自分の経験がどこで一番高く売れるのか」を一緒に整理するところから始めましょう。転職を決めていない段階のご相談でも構いません。お気軽にお声がけください。

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東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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