こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野です。
転職相談では年収や仕事内容の話に時間を使うことがほとんどですが、実際に内定が出たあと、多くの方がつまずくのが「退職と入社の間のお金と手続き」です。退職金の税金、失業保険、健康保険の切り替え、年金、住民税、確定申告——どれも期限があり、しかも期限を逃すと取り返しがつかないものが混ざっています。
私自身、「任意継続の申請期限を過ぎてしまい国保で保険料が倍になった」「企業型DCの移換手続きを放置して自動移換され、数年分の運用機会を失った」といった相談を、毎年のように受けます。いずれも知っていれば防げた損です。
さらに2025年4月には失業保険の給付制限が2ヶ月から1ヶ月に短縮され、2026年1月からは退職金と確定拠出年金の受け取り順序に関する調整期間が5年から10年へ延長されました。ルールが変わった直後は、古い情報のまま判断して損をする方が必ず出ます。
この記事では、退職から入社までに発生するお金と手続きを、期限順・パターン別に整理します。退職日を決める前に読んでいただくのが、最も効果的です。
まず全体像——転職時に発生する手続きと期限の早見表
| 手続き | 期限 | 手続き先 | 放置した場合のリスク |
|---|---|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 資格喪失日から20日以内 | 協会けんぽ/健保組合 | 期限厳守。1日でも遅れると選択不可 |
| 国民健康保険への加入 | 資格喪失日から14日以内 | 市区町村役所 | 遡って保険料は発生。医療費が一時全額負担に |
| 国民年金(第1号)への切替 | 退職日翌日から14日以内 | 市区町村役所 | 未納期間が将来の年金額に影響 |
| 失業保険の受給申請 | 離職日翌日から1年以内(早いほど有利) | ハローワーク | 受給期間が過ぎると権利が消滅 |
| 企業型DCの移換 | 資格喪失日から6ヶ月以内 | iDeCo運営管理機関/転職先 | 自動移換され現金化。運用停止+手数料が発生 |
| 住民税の納付方法決定 | 退職時 | 会社(給与担当) | 一括徴収で最終給与が大幅に減ることも |
| 確定申告 | 翌年2月16日〜3月15日 | 税務署 | 年内未就職なら還付を取り逃す |
この表で最も注意すべきは、健康保険の任意継続「20日以内」です。これは他の手続きと違い、1日でも過ぎると原則として認められません。退職日が決まった時点で、カレンダーに印をつけておいてください。
パターン別——あなたに必要な手続きはどれか
| 手続き | ①空白なし (退職翌日に入社) |
②空白あり (数日〜数ヶ月) |
③独立・フリーランス |
|---|---|---|---|
| 健康保険 | 転職先で加入(手続き不要) | 任意継続/国保/扶養から選択 | 国保/任意継続/組合国保 |
| 年金 | 転職先で厚生年金(手続き不要) | 国民年金第1号へ切替 | 国民年金第1号+付加年金等 |
| 失業保険 | 受給不可 | 条件を満たせば受給可 | 原則不可(再就職の意思が要件) |
| 住民税 | 特別徴収を継続可 | 普通徴収へ切替 | 普通徴収 |
| 年末調整・確定申告 | 転職先で年末調整 | 年内就職なら年末調整/未就職なら確定申告 | 確定申告 |
| 企業型DC | 転職先の企業型DC/iDeCoへ移換 | iDeCoへ移換 | iDeCoへ移換 |
①の「空白なし」がもっとも手続きが少なく、経済的にも有利です。健康保険も年金も転職先が手続きしてくれるため、実質的にやることは住民税とDCの移換だけ。可能なら、退職日の翌日を入社日に設定するのが最善です。
退職金——相場と、2026年に変わった税金のルール
そもそも自分に退職金はあるのか
厚生労働省の調査では、退職給付制度がある企業は全体の約75%。逆に言えば4社に1社は退職金がありません。特にベンチャー・スタートアップは制度自体がなく、その代わりストックオプションで報いる設計が主流です。まず就業規則の「退職金規程」を確認してください。
退職金の相場
| 区分 | 定年退職(大卒) | 備考 |
|---|---|---|
| 大企業 | 約2,140万円 | 制度が手厚い |
| 中小企業 | 約1,150万円 | 大企業の約半分 |
| 自己都合退職 | 会社都合より少ない | 勤続30年で大企業約300万円、中小約100万円の差 |
ここで重要なのは、ほとんどの企業で「自己都合退職」は「会社都合退職」より支給額が減るという点です。勤続30年で数百万円の差がつきます。また、勤続3年未満では支給されない規程も多いため、転職を繰り返すと退職金は積み上がりにくい構造だという前提は押さえておいてください。
退職金にかかる税金——退職所得控除の計算
退職金は「退職所得」として、給与とは分離して課税されます。しかも控除が非常に手厚く、多くの人は税金がほぼかかりません。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 | 控除額の例 |
|---|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) | 勤続10年 → 400万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) | 勤続30年 → 1,500万円 |
課税対象となる退職所得は(退職金 − 退職所得控除額)× 1/2。たとえば勤続15年で退職金1,000万円なら、控除額は40万円×15年=600万円、退職所得は(1,000万円−600万円)×1/2=200万円。この200万円に対して課税されます。勤続10年で退職金400万円以下なら、税金はゼロということです。
なお、勤続年数の端数は切り上げです。勤続10年3ヶ月なら11年として計算されるため、あと数ヶ月で勤続年数が1年増えるタイミングなら、退職日をずらす価値があります。
【2026年1月から変更】確定拠出年金との「10年ルール」
これは2026年に転職・退職する方が必ず知っておくべき改正です。
従来は、iDeCoや企業型DCの一時金を先に受け取り、5年空けてから会社の退職金を受け取れば、それぞれで退職所得控除を満額使えました(いわゆる5年ルール)。ところが令和7年度税制改正により、2026年(令和8年)1月1日以後に支払われる退職手当等から、この調整期間が「前年以前9年以内」=実質10年に延長されました。
| 受け取り順序 | 改正前 | 2026年1月以降 |
|---|---|---|
| DC一時金 → 会社の退職金 | 5年空ければ控除を満額利用可 | 10年空ける必要がある |
| 会社の退職金 → DC一時金 | 前年以前14年以内で調整 | 変更なし(従来どおり) |
影響を受けるのは、60歳前後でiDeCoを一時金で受け取り、その後に会社の退職金を受け取る予定だった方です。調整期間内だと勤続年数の重複分だけ控除が削られ、税負担が増えます。40代・50代で転職を考えている方は、受け取り時期の設計をこの機会に見直してください。判断に迷う場合は税理士かFPへの相談をおすすめします。
失業保険——2025年4月の改正で「1ヶ月」に短縮された
そもそも受給できるのは誰か
最大の誤解を先に潰しておきます。失業保険は「次の仕事が決まっていない人」のための制度です。転職先が決まっている状態では受給できません。「退職したから当然もらえる」と思っている方が本当に多いのですが、受給要件は「就職しようとする積極的な意思と能力があるのに職業に就けない状態」です。
受給には原則として、離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上必要(会社都合など特定受給資格者は離職前1年間に6ヶ月以上)です。
【重要】2025年4月改正——給付制限が2ヶ月から1ヶ月へ
自己都合退職の場合、従来は7日間の待期期間のあと2ヶ月間の給付制限があり、実際に振り込まれるまで3ヶ月近くかかっていました。これが2025年4月から原則1ヶ月に短縮されています。
| ケース | 給付制限期間 | 最初の支給までの目安 |
|---|---|---|
| 会社都合退職 | なし | 待期7日後、約1ヶ月 |
| 自己都合退職(原則) | 1ヶ月 | 約1ヶ月半〜2ヶ月 |
| 自己都合+教育訓練を受講 | なし(解除) | 待期7日後、約1ヶ月 |
| 5年以内に3回以上の自己都合退職 | 3ヶ月 | 約4ヶ月 |
特筆すべきは「教育訓練を受講すると給付制限が解除される」という新設ルールです。離職期間中または離職日前1年以内に、厚生労働大臣が指定する教育訓練を受けた場合、給付制限がなくなります。学び直しをしながら失業給付を早く受け取れる——キャリアチェンジを考えている方には、非常に使い勝手のよい制度になりました。
一方で「5年以内に3回以上の自己都合退職は3ヶ月」という制限も設けられています。短期間での転職を繰り返している方は注意してください。転職回数が評価に与える影響については転職回数が多いと不利?完全ガイドで解説しています。
いくら、何日もらえるのか
1日あたりの支給額(基本手当日額)は、離職前6ヶ月の賃金日額のおよそ50〜80%(賃金が低い人ほど率が高い)。給付日数は次のとおりです。
| 被保険者であった期間 | 自己都合(一般の受給資格者) | 会社都合(特定受給資格者・年齢により変動) |
|---|---|---|
| 1年未満 | 受給不可 | 90日 |
| 1年以上10年未満 | 90日 | 90〜240日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | 120〜270日 |
| 20年以上 | 150日 | 150〜330日 |
会社都合か自己都合かで、給付日数は最大2倍以上変わります。会社から退職勧奨を受けた場合、離職票の離職理由が「自己都合」になっていないか必ず確認してください。事実と異なる場合はハローワークで異議を申し立てられます。ここは遠慮すべきところではありません。
再就職手当——早く決まったほうが得をする仕組み
「失業保険を満額もらってから就職したい」という方がいますが、私は早期の再就職をおすすめします。給付日数を3分の1以上残して就職すると再就職手当が支給され、残日数が3分の2以上なら残額の70%、3分の1以上なら60%がまとめて受け取れるためです。
加えて、ブランクが長引くほど選考で不利になります。空白期間の説明の仕方は転職の空白期間(ブランク)完全ガイドに詳しくまとめていますが、原則は短いに越したことはない、です。
健康保険——3つの選択肢を保険料で比較する
退職翌日に入社するなら、この手続きは不要です。空白がある場合のみ、以下の3択から選びます。
| 任意継続 | 国民健康保険 | 家族の扶養 | |
|---|---|---|---|
| 保険料 | 在職時の約2倍(会社負担分がなくなる)。ただし上限あり | 前年所得に応じて変動。軽減制度あり | 0円 |
| 期限 | 資格喪失日から20日以内 | 資格喪失日から14日以内 | 速やかに |
| 加入できる期間 | 最長2年 | 制限なし | 条件を満たす間 |
| 扶養家族 | 追加保険料なしで扶養に入れられる | 人数分の保険料が加算 | — |
| 主な条件 | 継続2ヶ月以上の被保険者期間 | 誰でも加入可 | 年収130万円未満など |
どれを選ぶべきかの判断軸
- 扶養家族がいる/前年の所得が高い→ 任意継続が有利になりやすい。保険料に上限があり、扶養家族が何人いても保険料は変わりません。
- 独身で前年より収入が大きく下がる→ 国民健康保険が有利になりやすい。所得連動で、軽減制度もあります。
- 配偶者や親が会社員で、収入見込みが条件内→ 迷わず扶養へ。保険料が0円になります。
実務上のおすすめは、退職前に両方の金額を調べておくことです。任意継続の保険料は加入している健保組合に、国保の保険料は市区町村の窓口に問い合わせれば試算してもらえます。20日という期限を考えると、退職後に調べ始めると間に合いません。
なお、空白がわずか数日でも「国民健康保険に入らない」という選択肢はありません。日本は国民皆保険であり、無保険の期間があっても保険料は遡って請求されます。「数日だから」と手続きを飛ばすと、後で請求書が届きます。
年金——切替忘れが将来の受給額を削る
会社員は厚生年金(第2号被保険者)ですが、退職して空白ができると国民年金の第1号被保険者への切替が必要です。期限は退職日翌日から14日以内、手続き先は市区町村役所です。
保険料を払うのが苦しい場合は免除・納付猶予制度があります。ここで大切なのは、未納と免除はまったく別物だということ。未納は将来の年金額に一切反映されませんが、免除なら一部が反映され、あとから追納もできます。払えないなら放置せず、必ず免除申請をしてください。
企業型DC・iDeCo——6ヶ月放置すると自動移換される
これが、私が最も「もったいない」と感じる手続きです。企業型確定拠出年金に加入していた方が退職すると、6ヶ月以内に移換手続きをしなければ、資産は自動的に国民年金基金連合会へ移されます(自動移換)。
| 自動移換で起きること | 影響 |
|---|---|
| 資産がすべて現金化される | その後の運用ができず、資産が増えない |
| 管理手数料が引かれ続ける | 放置期間が長いほど資産が目減りする |
| 加入者期間に算入されない | 受給開始年齢が後ろ倒しになる可能性 |
転職先に企業型DCがあればそちらへ、なければiDeCoへ移換します。やるべきことは書類を1枚出すだけですが、これを忘れて何年も放置している方が実際に少なくありません。退職時のチェックリストに必ず入れてください。
【2026年12月から】iDeCoの上限額と加入年齢が引き上げ
あわせて押さえておきたい改正です。2026年12月から、iDeCoの掛金上限が会社員・公務員は月6.2万円(企業年金がある場合は合算して6.2万円)、自営業者は月7.5万円に引き上げられます。さらに加入可能年齢が最大70歳未満まで拡大されます(適用は2026年12月分の掛金から)。転職を機に老後資金の設計を見直すなら、この改正を織り込んでおくとよいでしょう。
住民税——退職月によって手取りが激変する
住民税は前年の所得に対して、6月から翌年5月までの12回に分けて給与天引き(特別徴収)されます。この「1年遅れ」の仕組みが、転職時に思わぬ影響を及ぼします。
| 退職時期 | 住民税の扱い | 手取りへの影響 |
|---|---|---|
| 1月〜4月末 | 5月分までを最終給与から一括徴収(強制) | 最終給与が大きく減る。場合によっては手取りがほぼ残らない |
| 5月中 | 5月分のみ通常どおり徴収 | 影響なし |
| 6月〜12月 | 一括徴収か普通徴収を本人が選択 | 普通徴収なら自分で納付書払い(年4回) |
最も注意が必要なのは1月〜4月の退職です。翌5月分までの住民税がまとめて最終給与から引かれるため、「最終月の給与がほとんど振り込まれなかった」という事態が起こり得ます。この時期に退職するなら、事前に会社の給与担当へ徴収額を確認し、生活費を確保しておいてください。
転職先が決まっている場合は、「給与所得者異動届出書」を前職から転職先へ回してもらうことで、特別徴収を継続できます。空白がある場合は一度普通徴収に切り替わり、納付書が自宅に届きます。この納付書を「なんだか分からない請求書」と放置してしまう方がいるので、必ず期限内に納めてください。
年末調整と確定申告——還付を取り逃さない
| 状況 | 必要な対応 | ポイント |
|---|---|---|
| 年内に転職先へ入社 | 転職先で年末調整 | 前職の源泉徴収票を必ず提出。ないと年末調整できない |
| 年をまたいで無職 | 翌年に確定申告 | 払いすぎた所得税が戻る可能性が高い |
| 年内に再就職しなかった | 翌年に確定申告 | 働いた月数が少ないほど還付額は大きい |
| 退職金を受け取った | 原則不要 | ただし「退職所得の受給に関する申告書」未提出だと20.42%源泉徴収→要申告 |
特に見落とされがちなのが、年内に再就職しなかったケースの確定申告です。毎月の給与から源泉徴収されている所得税は「1年間その給与が続く前提」で計算されているため、途中で働かなくなった年はほぼ確実に払いすぎになっています。確定申告をすれば戻ってきます。数万円〜十数万円になることも珍しくありません。
また、退職金を受け取る際は「退職所得の受給に関する申告書」を必ず会社へ提出してください。提出しないと退職所得控除が適用されず、退職金の20.42%が源泉徴収されます。確定申告で取り戻せますが、手間を考えれば最初から出すべきです。
損しない退職日の決め方——3つのチェックポイント
1. 月末退職か、月末前日退職か
| 月末日に退職(例:3月31日) | 月末前日に退職(例:3月30日) | |
|---|---|---|
| 社会保険の資格喪失日 | 4月1日 | 3月31日 |
| 3月分の社会保険料 | 発生する | 発生しない |
| 3月31日の保険加入状態 | 会社の健康保険に加入済み | 無保険(国保加入が必要) |
| おすすめ | 翌日入社ならこちら | 保険料を抑えたい+国保が安い場合 |
社会保険料は「資格喪失日が属する月の前月分まで」発生します。月末前日に辞めれば当月分の保険料は不要ですが、その1日だけ無保険になるため国民健康保険への加入が必要です。転職先に翌日入社するなら、月末日での退職が圧倒的にシンプルで安全です。
2. 賞与の支給日を確認する
多くの企業では「支給日に在籍していること」が賞与の条件です。支給日の前日に退職すれば、数十万円が丸ごと消えます。退職交渉に入る前に、就業規則の賞与条項を必ず確認してください。数週間退職を遅らせるだけで、まとまった額が守れます。
3. 有給休暇の残日数を消化する
有給の買い取りは原則として認められていません(退職時の未消化分について会社が任意で買い取ることは可能)。残日数はきちんと消化してから退職日を設定するのが基本です。引き継ぎスケジュールと合わせて、早めに逆算しておきましょう。退職交渉の進め方はベンチャー転職の退職交渉完全ガイド、切り出し方は退職の伝え方を参考にしてください。
転職のお金でよくある失敗パターン8選
- 任意継続の20日を過ぎる——最も多く、最も取り返しがつかない失敗。国保のほうが高くなるケースでは、2年間で数十万円の差が出ます。
- 企業型DCを放置して自動移換される——6ヶ月の期限。資産は現金化され、手数料を取られながら運用機会を失い続けます。
- 1〜4月に退職して最終給与が消える——住民税の一括徴収を知らず、生活費が足りなくなる。
- 賞与支給日の直前に辞める——数十万円を自ら手放すことになります。
- 離職理由が事実と違うまま受け取る——退職勧奨なのに「自己都合」だと、給付日数が半分以下になることも。
- 転職先が決まっているのに失業保険をあてにする——受給できません。生活資金の計画が崩れます。
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出さない——退職金から20.42%が源泉徴収されます。
- 前職の源泉徴収票を転職先に出さない——年末調整ができず、自分で確定申告することになります。
年代別——特に気をつけるべきポイント
| 年代 | 優先して確認すべきこと |
|---|---|
| 20代 | 退職金は少額。それより空白を作らないことを最優先に。企業型DCの移換忘れが最も多い年代でもあります |
| 30代 | 扶養家族が増える時期。健康保険は任意継続が有利になりやすい。住宅ローン審査を控えるなら転職時期の調整を |
| 40代 | 退職金がまとまった額に。勤続年数の端数切り上げを意識して退職日を決める価値があります |
| 50代 | 2026年1月からの10年ルールが直撃する年代。iDeCo・企業型DCと退職金の受け取り順序を必ず設計してください |
よくある質問(FAQ)
Q1. 転職先が決まっていても失業保険はもらえますか?
もらえません。失業保険は「就職の意思と能力があるのに就職できない状態」に対する給付です。転職先が決まっている場合は受給要件を満たしません。なお、受給資格そのものは離職日翌日から1年間有効なので、将来また離職した際の被保険者期間として通算されます。
Q2. 退職から入社まで1週間だけ空きます。手続きは必要ですか?
必要です。1日でも空白があれば、健康保険と年金の切替が発生します。国民健康保険と国民年金第1号への加入手続きを行い、入社後に転職先の社会保険へ切り替えます。月をまたがない空白(同月内)であれば保険料負担は最小限で済むことが多いですが、手続き自体は省略できません。可能なら退職日の翌日を入社日にするのが最善です。
Q3. 任意継続と国民健康保険、どちらが安いですか?
一概には言えません。判断軸は3つ。①扶養家族の人数(多いほど任意継続が有利。国保は人数分加算される)、②前年の所得(高いほど任意継続が有利。任意継続には上限がある)、③退職後の収入見込み(大きく下がるなら国保の軽減制度が効く)。退職前に、健保組合と市区町村の両方に試算を依頼してください。20日という期限を考えると、退職後に動き始めては間に合いません。
Q4. 退職金に税金はかかりますか?
多くの場合、ほとんどかかりません。勤続20年以下なら「40万円×勤続年数」、20年超なら「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」が控除され、超過分の1/2だけが課税対象になります。勤続10年なら400万円まで非課税です。ただし「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していないと20.42%が源泉徴収されるので、必ず提出してください。
Q5. 2026年からの「10年ルール」は自分に関係ありますか?
iDeCoや企業型DCの一時金と、会社の退職金の両方を受け取る予定がある方に関係します。DC一時金を先に受け取ってから会社の退職金を受け取る場合、その間隔が10年未満だと退職所得控除が調整され、税負担が増える可能性があります。2026年1月1日以後に支払われる退職手当等から適用されるため、40代・50代の方は受け取り時期の設計を見直すことをおすすめします。金額が大きくなるため、税理士やFPへの個別相談を推奨します。
Q6. 住民税の納付書が届きました。払わないとどうなりますか?
延滞金が発生し、放置すると財産差押えに至ることもあります。住民税は前年の所得に対する課税なので、収入が途絶えていても納付義務は残ります。支払いが難しい場合は、市区町村の窓口で分割納付の相談ができます。放置だけは避けてください。
Q7. 転職活動中の生活費はどれくらい用意すべきですか?
私は最低3ヶ月分、できれば6ヶ月分の生活費を確保してから動くようにお伝えしています。在職中の転職活動なら不要ですが、退職してから探す場合、失業保険は自己都合だと最初の入金まで1ヶ月半〜2ヶ月かかります。加えて国民健康保険料・国民年金保険料・住民税が新たに自己負担として発生するため、想定より支出が増える点にご注意ください。生活資金に不安があるなら、在職中に活動するのが鉄則です。
まとめ——手続きは「退職日を決める前」に設計する
転職のお金と手続きで損をする方に共通しているのは、退職日を決めてから調べ始めているという点です。任意継続の20日、企業型DCの6ヶ月、住民税の一括徴収、賞与の支給日、勤続年数の端数——これらはすべて、退職日を決める段階で織り込めば最適化できるものばかりです。
最後に、優先順位の高い順にもう一度お伝えします。①空白を作らないのが最善(退職翌日入社なら手続きの大半が不要)、②健康保険の20日期限だけは絶対に落とさない、③企業型DCの移換を忘れない、④1〜4月退職なら住民税の一括徴収に備える。この4つを押さえるだけで、大きな損はほぼ防げます。
年収そのものの考え方は年収・手取りガイド、手取り額の具体的なイメージは手取り30万円の生活レベルと年収にまとめています。入社後の立ち上がりについては転職後の最初の90日、試用期間の扱いは転職の試用期間完全ガイドもあわせてご覧ください。ベンチャー・スタートアップへの転職を検討している方は、報酬設計が大手と大きく異なるためベンチャー転職 完全ガイドを、経営幹部ポジションならCXO転職ガイドを参考にしてください。
キープレイヤーズでは、条件面の交渉から退職日の設計まで含めて、転職の実務をお手伝いしています。「オファーは出たが、いつ辞めるのが得なのか分からない」といったご相談も歓迎です。ぜひお問い合わせください。
※本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづく一般的な解説です。税額・保険料は個別事情により異なります。金額の大きい判断については、税理士・社会保険労務士・FPなど専門家にご確認ください。

