こんにちは、ベンチャー・スタートアップ・CxO転職の支援をしているキープレイヤーズの高野秀敏です。インテリジェンス(現パーソルキャリア)を経て2005年にキープレイヤーズを設立し、27年この仕事をしてきました。1万2,000人以上のキャリア面談と、数えきれないほどのリファレンス(前職の上司・同僚へのヒアリング)をしてきた中で、YouTubeやX(旧Twitter)でもよく聞かれるのが「高野さんが考える優秀な人って、どんな人ですか?」という質問です。
私の答えはシンプルで、「結果を出せる人」です。ただ、この一言だけだと誤解も生みます。結果の出し方が健全か、周りから信頼されているか、環境が変わっても同じように結果を出せるか——転職市場で本当に評価されるのは、この3つが揃った人です。
この記事では、2023年に書いた記事を2026年の転職市場に合わせて全面的に書き直し、優秀な人の定義、仕事ができる人の12の特徴、「優秀な人」と「優秀そうな人」の違い、転職で評価される優秀さ、優秀な人がいる会社に行くべきかどうか、優秀な人ほど会社を辞める理由と会社側の引き止め方までを、データと私の現場感で整理しました。
- 転職のプロが考える「優秀な人」の定義——結果×信頼×再現性
- リファレンスで一瞬でわかる「仕事ができる人」と「そうでない人」の言われ方
- 仕事ができる人の12の特徴(思考・行動・対人の3分類)
- 「優秀な人」と「優秀そうな人」の違いを比較表で整理
- 企業の62.1%が「要件未満なら採用しない」時代に、転職市場で評価される優秀さ
- 「優秀な人がいる会社で働きたい」という転職理由は正しいのか
- 優秀な人ほど辞める理由と、会社が引き止めるためにできること(税制適格ストックオプションの最新ルールを含む)
- 年代別のポイント、失敗パターン、FAQ
結論:優秀な人とは「結果を出し、信頼され、環境が変わっても再現できる人」
先に結論を書きます。
- 優秀さの第一条件は結果。ビジネスは結果で評価されます。プロセスが美しくても、結果が出なければ評価されません。
- ただし、結果の「出し方」まで見られる。数字を作るために周りを踏み台にする人、コンプライアンスを軽視する人は、短期的に結果が出ても、長期的には信頼を失います。
- 転職市場で評価されるのは「再現性」。前職の看板や上司の力ではなく、自分の力で出した結果か。別の会社でも同じように出せるか。面接やリファレンスチェックで企業が確かめているのはここです。
- 「優秀な人がいる会社」より「自分が活躍できる会社」を選ぶ。転職の成否は、周りのレベルよりも、自分の強みがその会社の弱いところにハマるかで決まります。
- 優秀な人ほど辞めるのは、社外に選択肢があるから。会社が引き止めたいなら、社内に「大きなチャンス」と「フェアな報酬」を用意するしかありません。
転職のプロが考える「優秀な人」の定義
優秀な人とは、結果が出せる人
優秀な人の定義はいろいろあります。地頭がいい、学歴が高い、話がうまい、資格を持っている——どれも間違いではありませんが、私が考えるビジネスパーソンの優秀さは、結果が出せることです。
中日ドラゴンズの監督を2004年から2011年まで務め、8年間すべてでAクラス入り、リーグ優勝4回・日本一1回を達成した落合博満さんも、結果にこだわる姿勢で知られています。結果が評価になる。仕事もまったく同じです。
もちろん、間接部門のように結果が数字で見えにくい仕事もあります。経理、法務、人事、情報システムなど。そうした仕事でも、「決算を一度も遅らせなかった」「契約トラブルを未然に防いだ」「採用目標を達成した」「システム障害をゼロにした」といった形で、結果は必ず言語化できます。結果を言語化できない人は、実は結果を意識して仕事をしていないことが多いのです。
リファレンスで「仕事ができる人」は即答される
私はCxOや経営幹部の転職支援で、前職の上司や同僚にリファレンス(評判の確認)をとらせていただくことがよくあります。ここで面白いほどはっきり分かれます。
| リファレンスでの言われ方 | 私の読み取り |
|---|---|
| 「あの人は本当に仕事ができますよ!」(即答) | 仕事ができる人。周囲が結果を認めている |
| 「信頼できる人です。また一緒に働きたい」 | 結果+信頼が揃っている。最も評価が高いパターン |
| 「悪い人ではないですよ」 | 仕事の評価は高くない可能性が高い |
| 「結構いい人かなとは思いますが……」 | 人柄は認めるが、仕事ぶりには留保がある |
| 「仕事はすごくできます。ただ……」 | 結果は出すが、パワハラ傾向・敵に回すと怖いなど、何らかの「いわく」がある |
「悪い人ではない」という枕詞がついた瞬間、私は「仕事はいまいちなんだろうな」と判断します。仕事ができる人は、聞いた瞬間に「凄くできますよ!」と返ってくるものです。人は「人」をよく見ていて、仕事ができるかどうかについてはほぼ即答します。
逆に「仕事はできる。ただ……」と続く人は要注意です。結果は出していても、周囲との摩擦や、ハラスメント傾向があるケース。ベンチャー・スタートアップの幹部採用では、この「ただ……」の中身が入社後の組織崩壊につながることもあるので、私は必ず深掘りします。リファレンスの実務については転職のリファレンスチェック完全ガイドで詳しく書いています。
優秀さ=結果×信頼×再現性
ここまでをまとめると、私が考える優秀さは3つの掛け算です。
| 要素 | 中身 | 欠けるとどうなるか |
|---|---|---|
| 結果 | 数字・成果物・課題解決など、事業への貢献を出せる | 「いい人」止まり。評価も年収も上がらない |
| 信頼 | 約束を守る、嘘をつかない、周りを巻き込み、また一緒に働きたいと思われる | 短期的には評価されても、チームが離れ、長くは続かない |
| 再現性 | 環境・会社・チームが変わっても同じように結果を出せる | 前職の看板頼み。転職後に活躍できない |
掛け算なので、どれか1つがゼロだと全体もゼロに近づきます。特に転職では「再現性」が問われます。大手企業で大きな数字を出していた人が、ベンチャーに来て全く結果を出せないケースを私は何度も見てきました。ブランドや仕組みの力で出していた結果を、自分の実力と勘違いしていたパターンです。
仕事ができる優秀な人の特徴12選
仕事ができる人を要素分解すると、地頭、コミュニケーション能力、チームで動く力、そしてやり切る力に行き着きます。私が27年間で見てきた「本当に優秀な人」の共通点を、思考・行動・対人の3つに分けて12個にまとめました。
| 分類 | 特徴 | 面接・リファレンスでの見え方 |
|---|---|---|
| 思考 | 1. 目的から考える | 「何のためにやったか」を最初に話せる |
| 2. 地頭がいい(構造化・抽象化) | 話が短く、要点から入る | |
| 3. 自分の実力を正しく把握している | できること・できないことを率直に言える | |
| 4. 学び続ける | 直近1年で新しく身につけたことを具体的に語れる | |
| 行動 | 5. やり切る力(グリット) | 困難を乗り越えた経験を数字で語れる |
| 6. スピードが速い | 返信・日程調整・宿題の提出が速い | |
| 7. 優先順位をつけられる | 「やらないこと」を決めた話が出てくる | |
| 8. 失敗から学べる | 失敗談を他責にせず、学びとセットで話せる | |
| 対人 | 9. チームプレーができる | 主語が「私」だけでなく「チーム」になる |
| 10. 周りを巻き込める | 他部署・社外を動かした経験がある | |
| 11. 約束を守る(信頼) | リファレンスで「信頼できる」と即答される | |
| 12. 聞く力がある | 質問の意図を正確につかんで答える |
思考編:目的・地頭・自己認識・学習
1. 目的から考える。優秀な人は、作業に入る前に「この仕事は何のためにあるのか」を考えます。目的がわかっているので、途中で状況が変わっても判断を誤りません。
2. 地頭がいい。ここでいう地頭は偏差値のことではありません。複雑な状況を整理し、本質を抜き出し、相手にわかる言葉で伝える力です。面接で話が長い人より、結論から短く話せる人のほうが、ほぼ例外なく仕事ができます。
3. 自分の実力を正しく把握している。できないことを「できない」と言えるのは、実は優秀さの証拠です。自分の弱みを知っているから、得意な人の力を借りられる。できないことまで抱え込む人は、最後に大きな事故を起こします。
4. 学び続ける。生成AIの普及で、仕事のやり方は数年単位で変わるようになりました。優秀な人は、新しいツールや知識を「面倒」ではなく「武器」ととらえ、真っ先に試します。
行動編:やり切る力・スピード・優先順位・失敗からの学習
5. やり切る力(グリット)。グリット、貫徹力、コミットメント。呼び方はいろいろですが、要は「最後までやり切る力」です。ニデック(旧日本電産)創業者の永守重信さんの「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」、楽天の「スピード!!スピード!!スピード!!」「Get Things Done」——言っていることは皆同じです。
ただ、ここは2026年の視点で補足させてください。ニデックは2025年に不適切会計の疑いが発覚し、永守さんは同年12月に代表取締役を、2026年2月には名誉会長も辞任しました。「やり切る」ことは大事ですが、結果を出すことと、結果の出し方が健全であることは別です。数字を「作る」ことと「出す」ことは違う。私が優秀さの条件に「信頼」を入れているのは、まさにこのためです。
6. スピードが速い。優秀な人はレスポンスが速い。メールの返信、日程調整、宿題の提出——私が支援する中でも、内定が出る人ほど動きが速いのは間違いありません。転職活動中の印象管理は転職活動のスピード感と印象管理完全ガイドでも詳しく書いています。
7. 優先順位をつけられる。全部やろうとする人は、結局どれも中途半端になります。優秀な人は「やらないこと」を決めるのがうまい。
8. 失敗から学べる。失敗しない人はいません。違いは、失敗を他人や環境のせいにするか、自分の学びに変えるかです。他責思考の人が転職を繰り返しても、結局同じ壁にぶつかります(転職・キャリアで成功する人と失敗する人の特徴)。
対人編:チームプレー・巻き込み・信頼・聞く力
9. チームプレーができる。仕事の多くはチームでやるものです。Googleが2012年から社内で行った調査「プロジェクト・アリストテレス」では、180のチームを分析した結果、高い成果を出すチームの最大の共通点は、メンバーの能力の高さではなく「心理的安全性」——ミスや疑問を安心して口に出せる雰囲気——だったと報告されています。優秀な人は、自分が成果を出すだけでなく、チームが成果を出せる空気をつくれる人です。
10. 周りを巻き込める。ベンチャーでは特に重要です。人も予算も足りない中で結果を出すには、他部署・社外・経営陣を動かす力が要ります。
11. 約束を守る。地味ですが、これが「信頼」の正体です。小さな約束を守り続けた人だけが、大きな仕事を任されます。
12. 聞く力がある。話がうまい人より、質問の意図を正確につかめる人のほうが仕事ができます。面接官が何を見ているかは転職面接で面接官は何を見ている?にまとめています。
「優秀な人」と「優秀そうな人」の違い
転職市場には「優秀そうに見える人」がたくさんいます。職務経歴書が立派、話がうまい、学歴や社名が強い。でも、入社してみたら結果が出ない。採用側が一番恐れるのが、このパターンです。
| 観点 | 優秀な人 | 優秀そうな人 |
|---|---|---|
| 実績の語り方 | 自分の役割・工夫・数字を具体的に話す | チームや会社の実績を自分のことのように話す |
| 失敗談 | 率直に話し、学びを言語化している | 失敗談が出てこない、または他責 |
| 話の長さ | 結論から短い | 長く、専門用語が多い |
| リファレンス | 「凄くできる」「また一緒に働きたい」と即答 | 「悪い人ではない」「いい人だと思います」 |
| 環境が変わったとき | やり方を変えて結果を出す | 「前の会社ではこうだった」と言い続ける |
| 知らないこと | 「知りません、調べます」と言える | 知ったかぶりをする |
| 成果の源泉 | 自分の工夫・行動 | 会社のブランド・仕組み・上司 |
私が面談で必ず聞くのは「その成果のうち、あなたがいなかったら出なかった部分はどこですか?」という質問です。優秀な人は迷わず答えます。優秀そうな人は、ここで言葉に詰まります。
転職市場で評価される「優秀さ」とは——企業が求める人材の2026年の変化
2026年の中途採用市場は、ひとことで言うと「量より質」です。マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(中途採用担当者1,500名、2025年12月調査)では、次のような結果が出ています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 2026年の中途採用に積極的な企業 | 91.1% |
| 経験者採用に積極的な企業 | 74.2% |
| 採用要件に満たない人材は「採用しないことが多かった」 | 62.1%(前年比+7.7pt) |
| 高スキル人材・即戦力が足りない(質的な不足) | 55.6%(前年比+6.7pt) |
| 退職者のうち「勤続5年以上の中堅社員」が占める割合 | 81.9% |
出典:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2026年3月発表)
採用意欲は旺盛なのに、要件に満たない人は採らない。つまり、企業は「誰でもいいから人が欲しい」のではなく、「結果を出せる人」を探しているということです。dodaの転職求人倍率も2026年8月時点で2.86倍と高水準ですが、倍率が高いからといって誰でも受かるわけではありません。
転職市場で「優秀」と評価される人の条件を整理すると、次のようになります。
- 職務経歴書で「自分の貢献」を数字で書ける。売上○億円のチームにいた、ではなく、自分が何をして何がどう変わったか。
- 再現性を説明できる。なぜその結果が出たのか、同じことを新しい会社でもできる根拠は何か。
- リファレンスで「また一緒に働きたい」と言われる。幹部採用ではほぼ必ず確認されます。
- ポータブルスキルがある。業界が変わっても通用する課題解決力、巻き込み力、マネジメント力。
企業側が具体的にどんなスキルを求めているかは企業が求めるスキルとは?、ベンチャー経営者目線での条件は経営者が喉から手が出るほど欲しい人材10条件、即戦力の要件は中途採用で即戦力に求められる5つの能力で詳しく解説しています。
「優秀な人がいる会社で働きたい」は正しい転職理由か?
面談でよく聞く転職理由に「優秀な人がいる会社で働きたい」「優秀な人に囲まれて成長したい」があります。実は私自身も、就職活動のときはまったく同じことを考えていました。自分が最も優秀だと思った人たちがいる会社を探して、新卒で入社したのがインテリジェンスでした。
新卒なら正しい。転職なら「自分が活躍できるか」が一番大事
新卒のように、まだ何も武器を持っていない段階では、優秀な人の中で揉まれることに大きな価値があります。
でも、転職となると話は違います。働いてみて気づいたのは、転職で一番大事なのは「転職後に活躍できるか」だということです。周りが優秀かどうかより、自分が活躍できるかどうか。周りが優秀だから自分が成長する、という単純な話ではありません。
例えば、営業が強い会社で開発が弱いなら、エンジニアのあなたが入れば開発のトップに立てる。デザインが弱い会社なら、デザイナーのあなたが入ればすぐに評価される。会社の「凹」と自分の「凸」がかみ合うと、転職はうまくいきます。逆に、優秀な人が揃っている会社に、同じ強みを持った人として入ると、埋もれてしまうことも多いのです。
優秀な人が集まる会社に転職するメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 仕事の基準(スピード・質)が一気に上がる | 同じ強みの人が多く、埋もれやすい |
| 優秀な人との人脈がその後のキャリアの資産になる | 任される範囲が狭く、打席に立つ機会が少ない |
| 学べる手本が身近に多い | 評価競争が激しく、疲弊しやすい |
| 社名が次の転職でのシグナルになる | 「優秀な人がいたから成果が出た」と見られ、自分の実績が説明しにくい |
向いている人・向いていない人
| 優秀な人が集まる会社が向いている人 | 「自分が活躍できる会社」を優先すべき人 |
|---|---|
| 20代前半〜中盤で、まだ専門性が固まっていない | 30代以降で、すでに明確な強みがある |
| 厳しい環境で揉まれることにやりがいを感じる | 裁量と打席の数を重視したい |
| いずれ起業したく、優秀な仲間と出会いたい | 早くマネジメントや事業責任者を経験したい |
| 比較されてもモチベーションが下がらない | 年収やポジションを上げる転職をしたい |
ベンチャー企業の選び方全体についてはベンチャー転職 完全ガイド、自分の強みの見つけ方は転職で自分の強みを見つける・活かす完全ガイドを参考にしてください。
優秀な人ほど会社を辞めるのはなぜか
「優秀な人ほど辞める」というのは、多くの経営者が実感していることだと思います。先ほどのマイナビの調査でも、2025年に退職者が出た企業のうち、退職者の81.9%が勤続5年以上の中堅社員でした。
理由1:転職活動をしていなくても、スカウトが来る
優秀な人は、自分から転職活動をしていなくても声がかかります。ビズリーチやLinkedInなどのスカウト、ヘッドハンター、前職の上司や取引先からのリファラル。年収アップ・ポジションアップの話が常に来ている状態です。社外から見える「市場価値」と、社内での処遇にギャップがあれば、辞めるのは自然なことです。スカウトされる人の特徴は転職市場で評価・スカウトされる人と、されない人で解説しています。
理由2:起業・フリーランスのハードルが下がった
もう一つは、起業やフリーランス化です。昔は起業するにも資金調達にも高いハードルがありましたが、今は支援制度や情報が充実し、起業の仕方は検索すればすぐに出てきます。スタートアップ専門の税理士や、副業・業務委託の案件も増えました。優秀な人ほど「会社に属さなくても食べていける」ので、会社を辞めやすいのです。
理由3:評価と報酬が結果に見合っていない
これは私の実感として付け加えます。優秀な人が辞めるとき、口では「新しい挑戦がしたい」と言いますが、本音をよく聞くと「頑張っても頑張らなくても評価が同じ」「年功序列で上が詰まっている」という不満があることが多い。結果を出す人ほど、結果で報われない環境に耐えられません。
会社側が優秀な人に働き続けてもらうには
ここからは企業側、特に経営者・人事の方向けの話です。
「大きなチャンスが会社の中にある」と思ってもらう
転職や起業を考えている優秀な人を、引き止めで確実に残すのは難しいです。カウンターオファー(退職時の条件提示)は一時的には効いても、根本の不満が解消されなければ、多くの場合また辞めていきます(カウンターオファー完全ガイド)。
本当に効くのは、辞める前から「この会社にいたほうが、外に出るより大きなチャンスがある」と思ってもらうことです。具体的には次の3つです。
- その会社でしかできない大きな仕事がある。新規事業、海外展開、M&A後の統合など。
- 報酬が市場のフェアバリュー以上にある。社内の相場ではなく、転職市場の相場と比べて遜色ないこと(優秀な人材の離職を防ぐ年収査定)。
- やる気のある人には、CxOになる道が見えている。ポジションの天井が見えると、優秀な人は外に機会を探します。
複線型のキャリアパスをつくる
やる気のベクトルは人によって違います。「早く帰りたい」人もいれば、「フルリモートがいい」人もいる。全員の要望には応えられません。だからこそ、画一的な社内キャリア制度ではなく、ゼネラリスト(マネジメント)とスペシャリスト(専門職)の複線的なキャリアパスを用意すると、人が辞めにくくなります。
ベンチャー・スタートアップは上場前にストックオプション設計を
ベンチャー・スタートアップの場合、上場後は株価が上がり、新しく入る人に魅力的なストックオプションを出しにくくなります。だからこそ、上場前の段階からストックオプションの設計をしておくことが、採用とリテンションの両方に効きます。
なお、2023年に書いた旧記事では「信託型ストックオプション」を推奨していましたが、これは現在の税務とは合わなくなっているので、ここで訂正します。国税庁は2023年5月に公表したQ&Aで、信託型ストックオプションは権利行使時に給与所得として課税されるという見解を示しました。給与所得は最高税率55%です。
代わりに現在主流なのは税制適格ストックオプションです。令和6年度税制改正(2024年4月施行)で、年間の権利行使価額の上限が従来の一律1,200万円から、設立5年未満の会社で2,400万円、設立5年以上20年未満の会社(未上場、または上場後5年未満)で3,600万円に引き上げられました。スタートアップの人材獲得力を高める目的の改正です。具体的な設計は必ず税理士・弁護士に相談してください。制度の考え方はストックオプションを考える、報酬全体の設計は年収・手取りガイド、採用戦略全体はスタートアップ採用ガイドを参考にしてください。
優秀な人になる・評価されるための5ステップ
「自分は優秀ではない」と思っている方へ。優秀さは才能ではなく、習慣でつくれる部分が大きいです。私が見てきた中で、市場価値を上げていった人がやっていたことを5つのステップにまとめます。
- STEP1:自分の結果を棚卸しする。過去3年の仕事で、自分がいなかったら出なかった結果を3つ書き出す。数字にできないものは、「何が・どう変わったか」を言語化する。
- STEP2:周りの評価を確かめる。信頼できる元上司・同僚に「私の強みと弱みは何だと思いますか」と聞く。リファレンスの予行演習になります。
- STEP3:再現性を説明できるようにする。その結果が出た理由を「環境」「仕組み」「自分の工夫」に分解し、自分の工夫の部分を明確にする。
- STEP4:打席に立つ回数を増やす。手を挙げて新しいプロジェクトを取りに行く。社内で機会がなければ、副業や社外プロジェクトで経験を積む。
- STEP5:市場で自分を試す。スカウトサービスに登録する、エージェントに相談する。社外からの評価を知ることで、自分の現在地がわかります。
STEP5の「市場で自分を試す」方法は、新しく書いた自分の市場価値の調べ方完全ガイドで詳しく解説しています。
年代別:求められる「優秀さ」はこう変わる
| 年代 | 企業が見ている優秀さ | やっておくべきこと |
|---|---|---|
| 20代 | 素直さ・吸収力・スピード・やり切った経験 | 厳しい環境で打席に立つ。小さくても「自分が出した結果」を積む |
| 30代 | 専門性+再現性。チームを率いた経験 | 強みを1つに絞り、数字で語れる実績をつくる。マネジメントにも挑戦 |
| 40代 | 事業や組織を動かした実績。経営視点 | 部門を超えた成果、組織づくりの実績を言語化する |
| 50代以上 | 経営経験・業界ネットワーク・後進育成 | CxO・顧問・社外取締役など、経験を経営に還元できる形を探す |
20代は「伸びしろ」、30代は「専門性と再現性」、40代以降は「組織と事業を動かす力」。年齢によって、同じ「優秀」でも中身が変わります。年代ごとの転職戦略は年齢別転職ガイドで、経営幹部としてのキャリアはCXO転職ガイドでまとめています。
「優秀な人」を目指す人・採りたい人の失敗パターン7選
個人側の失敗
- 学歴・社名・資格を「優秀さ」と勘違いする。転職市場で見られるのは結果と再現性です。資格の位置づけは転職に有利な資格は本当にある?を参照。
- チームの実績を自分の実績として語る。面接やリファレンスで必ずバレます。
- 「優秀な人がいる会社」だけを基準に転職先を選ぶ。入社後に埋もれて、結果が出ないまま短期離職するケースを何度も見ました。
- 結果のために手段を選ばない。数字は出ても、信頼を失えば次のキャリアで必ず響きます。
企業側の失敗
- 面接での話のうまさで「優秀」と判断する。優秀そうな人を採ってしまう典型です。リファレンスや実務課題で確かめましょう(採用ミスマッチが起こる7つの原因)。
- 自社より優秀な人を採らない。経営者や面接官が自分より優秀な人を無意識に避けると、組織はそれ以上伸びません。
- 優秀な人に仕事を集中させすぎる。評価と報酬が伴わないまま仕事だけが増えると、真っ先に辞めていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 優秀な人とは、一言でいうとどんな人ですか?
結果を出せる人です。ただし転職市場では、周りから信頼されていること、環境が変わっても同じように結果を出せる再現性があることもセットで評価されます。私は「結果×信頼×再現性」と表現しています。
Q2. 仕事ができる人かどうかは、どこでわかりますか?
一番わかりやすいのはリファレンス(周囲の評判)です。仕事ができる人は「凄くできますよ」と即答され、そうでない人は「悪い人ではない」という枕詞がつきます。面接では、自分の貢献を数字で具体的に話せるか、失敗を他責にせず語れるかに表れます。
Q3. 「優秀な人がいる会社で働きたい」という転職理由はNGですか?
NGではありませんが、面接でそのまま言うと「受け身」に聞こえます。転職で大事なのは「自分が活躍できるか」です。「御社の○○の領域に、自分の△△の強みを活かして貢献したい」と、自分が提供できる価値とセットで伝えましょう。
Q4. 優秀な人ほど辞めるのはなぜですか?
社外に選択肢があるからです。スカウトで年収・ポジションアップの話が常に来ていること、起業やフリーランスのハードルが下がったこと、そして社内の評価・報酬が結果に見合っていないことが主な理由です。
Q5. 会社として優秀な人を引き止めるには、何が効きますか?
辞めると言われてからの引き止めより、日頃から「社内に大きなチャンスがある」状態をつくることです。その会社でしかできない仕事、市場相場以上の報酬、CxOへの道、複線型のキャリアパス。スタートアップなら上場前からの税制適格ストックオプションの設計も有効です。
Q6. 信託型ストックオプションはまだ使えますか?
国税庁は2023年に、信託型ストックオプションは権利行使時に給与所得として課税されるという見解を示しています。現在は、令和6年度税制改正で権利行使価額の上限が最大3,600万円まで引き上げられた税制適格ストックオプションを検討する会社が多いです。制度設計は必ず専門家に相談してください。
Q7. 自分が優秀かどうか、客観的に知る方法はありますか?
社外の評価を知るのが一番です。スカウトサービスに登録してどんな企業から声がかかるかを見る、転職エージェントに年収の相場を聞く、信頼できる元上司に強み・弱みを聞く。具体的な方法は自分の市場価値の調べ方完全ガイドにまとめています。
Q8. 地頭が良くないと優秀にはなれませんか?
そんなことはありません。私が見てきた「結果を出す人」の多くは、地頭より、やり切る力・スピード・約束を守る姿勢で評価されています。12の特徴のうち、行動と対人の8つは習慣で身につけられます。
キープレイヤーズ高野のコメント
27年間、優秀な人の転職を見てきて思うのは、本当に優秀な人ほど「自分はまだまだ」と言う、ということです。謙虚だからではなく、自分の実力と、上には上がいることを正確に知っているからです。
そして、優秀な人ほど「どこで働くか」より「何をやるか」「自分がどこで活きるか」で転職先を選びます。周りが優秀かどうかは、あくまで二次的な条件です。
ご自身が今の会社で正当に評価されているか、他の会社ならもっと活躍できるのか。社外の情報を得るだけで見えてくることがたくさんあります。キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職やCxO・経営幹部のキャリアについて、私自身がご相談に乗っています。企業側の方も、優秀な人材の採用・リテンションでお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

