転職理由ランキング2026【最新版】1位は5年連続「給与が低い」36.6%・20代は「労働時間」44.6%・急浮上した「成果で評価されない」・年代別/男女別TOP10・本音と建前の伝え方・ベンチャーに追い風な理由を高野秀敏が解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップ・CxO転職の支援をしているキープレイヤーズの高野秀敏です。27年、経営者・CxO・幹部人材の転職を1,000人以上、面接前後で伴走してきました。

この記事は、もともと2018年に「転職理由ランキング2018——ベンチャー・スタートアップに追い風!?」として書いたものです。当時のランキング1位は「ほかにやりたい仕事がある」でした。それから8年。2026年の転職理由ランキングは、顔ぶれも順位もまったく違うものになっています。1位は5年連続で「給与が低い・昇給が見込めない」、そして前回18位だった「個人の成果で評価されない」が一気に3位まで上がってきました。

私がキャリア面談で最初に聞くのは、必ず「どうして転職したいんですか?」です。この答えが曖昧なまま動くと、転職先で同じ不満を繰り返します。逆に、自分の転職理由をランキングの中に位置づけて「この不満はどこに行けば解消されるのか」を構造で理解した人は、転職で失敗しません。

この記事では、doda「転職理由ランキング2025年版」(2026年2月発表)、厚生労働省「令和6年雇用動向調査」、マイナビ「転職動向調査2026年版」、エン転職の2025年調査を横並びにして、総合・年代別・男女別のTOP10、この5年で何が変わったのか、本音と建前のギャップ、面接での伝え方、そして「評価されない」「尊敬できる人がいない」という不満がなぜベンチャー・スタートアップへの追い風なのかまで解説します。

転職理由を面接でどう伝えるかは面接でネガティブな退職理由を伝える方法、辞めるタイミングの判断は「石の上にも3年」はもう古い?、転職全体の進め方はベンチャー転職完全ガイドもあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • 転職理由ランキング2026【総合TOP10】と前年からの順位変動(doda調査、n=978)
  • 20代・30代・40代・50代の年代別TOP10と、男女別TOP10
  • doda・マイナビ・エン転職・厚労省の4調査を横並びにした比較表
  • 厚労省「雇用動向調査」に見る男女別・年齢別の離職理由と、転職で賃金が増えた人40.5%という事実
  • 本当の転職理由を上司に伝えた人は47.0%——本音と建前のギャップと、転職理由別の転職後満足度
  • 転職理由TOP10それぞれの「面接での言い換え表」
  • 「成果で評価されない」「尊敬できる人がいない」「スキルアップしたい」がベンチャー・スタートアップへの追い風である理由と、逆に向かない理由
  • 転職理由をキャリア戦略に変える5ステップ、理由別の向いている転職先、年代別アドバイス、失敗パターン7つ、FAQ 10問
目次

転職理由ランキング2026【総合TOP10】

まず最新の総合ランキングです。転職サービス「doda」(パーソルキャリア)が2026年2月に発表した「転職理由ランキング2025年版」で、2025年8月に20〜59歳の正社員978人を対象にインターネット調査を行い、地域・年代・性別でウエイトバックしたものです。複数回答なので合計は100%になりません。

順位 転職理由 割合 前回順位 前回比
1位 給与が低い・昇給が見込めない 36.6% 1位 +3.0pt
2位 労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある) 26.3% 4位 +6.0pt
3位 個人の成果で評価されない 22.8% 18位 +11.9pt
4位 尊敬できる人がいない 20.9% 9位 +3.7pt
5位 社内の雰囲気が悪い 20.7% 3位 -0.4pt
6位 人間関係が悪い/うまくいかない 20.2% 2位 -2.5pt
7位 会社の評価方法に不満があった 19.7% 7位 +1.6pt
8位 肉体的または精神的につらい 19.2% 6位 -0.3pt
9位 業界・会社の先行きが不安 19.0% 8位 +1.6pt
10位 昇進・キャリアアップが望めない 18.7% 5位 -0.9pt
10位 スキルアップしたい 18.7% 10位 +2.6pt

出典:doda「転職理由ランキング2025年版」(パーソルキャリア、2026年2月16日発表。調査期間2025年8月1日〜8日、正社員978人、複数回答、ウエイトバック集計)

2018年版と2026年版で何が変わったのか

私が8年前にこの記事を書いたときの1位は「ほかにやりたい仕事がある」、2位「会社の将来性が不安」、3位「給与に不満がある」でした。当時は「やりたいことベース」のポジティブな理由がトップで、私はそれを「スキルアップ系の理由が増えていてベンチャーに追い風」と書きました。

2026年版は構造が変わっています。ポイントは3つです。

  • 「給与」が5年連続1位、しかも上昇中(33.6%→36.6%)。2021年以降ずっとトップです。物価上昇に賃上げが追いつかない期間が続き、「給与への不満」が転職の第一動機として定着しました。
  • 「労働時間」が4位→2位(+6.0pt)。20代では44.6%で1位です。働き方改革以降、むしろ労働時間への感度は上がっています。
  • 「個人の成果で評価されない」が18位→3位(+11.9pt)。これが今回最大の変化です。「会社の評価方法に不満」(7位)と合わせると、評価に関する不満がTOP10に2つ入りました。頑張っているのに報われない、年功で決まる、という不満が一気に表面化しています。

一方で、2018年に2位だった「会社の将来性が不安」は9位(19.0%)まで下がっています。将来不安で動く人より、「今の待遇と評価に納得できない」から動く人が増えたということです。27年この仕事をしている実感としても、面談で「将来が不安で」と言う人は減り、「正当に評価されていない」「上が詰まっていて昇給の見込みがない」と具体的に言う人が明らかに増えました。

年代別ランキング——20代は「労働時間」、30代以上は「給与」が1位

総合ランキングより、年代別のほうが自分の状況に近い数字が出ます。同じdoda調査の年代別TOP5を並べました。

順位 20代 30代 40代 50代
1位 労働時間に不満 44.6% 給与が低い 36.9% 給与が低い 39.6% 給与が低い 31.9%
2位 成果で評価されない 40.7% 尊敬できる人がいない 23.0% 社内の雰囲気が悪い 32.1% 人間関係が悪い 24.7%
3位 給与が低い 37.0% スキルアップしたい 22.8% 尊敬できる人がいない 28.4% 肉体的・精神的につらい 22.7%
4位 スキルアップしたい 19.7% 評価方法に不満 21.6% 先行きが不安 26.5% 社内の雰囲気が悪い 22.1%
5位 昇進・キャリアアップが望めない 14.1% 肉体的・精神的につらい/社内の雰囲気が悪い 21.1% 昇進・キャリアアップが望めない 26.4% 尊敬できる人がいない 21.1%

出典:doda「転職理由ランキング2025年版」年代別

20代:「労働時間」44.6%と「成果で評価されない」40.7%が突出

20代は他の年代と明確に違います。「労働時間に不満」が44.6%(前回27.5%から+17.1pt)で1位、「個人の成果で評価されない」が40.7%で圏外から2位に飛び込みました。逆に前回2位だった「人間関係」は13.3%(-15.8pt)まで下がっています。

私の解釈は、20代は「時間の使い方」と「評価の公平さ」に対して、上の世代よりはるかにシビアだということです。長時間働くこと自体より、「その時間が自分の成長と評価に結びついているか」を見ています。年功序列で若手の成果が給与に反映されない会社から、成果と報酬が直結する会社へ動く——この流れは20代の転職で成功する人の特徴でも書いた通り、2026年も続いています。

30代:「尊敬できる人がいない」「スキルアップしたい」が上位

30代は給与に加えて、「尊敬できる人がいない」(23.0%)、「スキルアップしたい」(22.8%)が2位・3位です。30代は自分のキャリアの天井が見え始める時期で、「この会社の上司のようになりたいか」という問いに「NO」と答えた人が動く。私は30代の転職相談で「5年後の自分の理想像に近い人が社内にいますか?」と必ず聞きます。いないなら、それは転職を考える十分な理由です。詳しくは30代で大手からベンチャーに転職する方法にまとめています。

40代:全項目が上昇、「社内の雰囲気」「先行き不安」が急伸

40代は目立った特徴があります。TOP10のほぼ全項目で割合が前回から大きく上がり、「社内の雰囲気が悪い」(21.3%→32.1%)、「尊敬できる人がいない」(17.6%→28.4%)、「先行きが不安」(17.4%→26.5%)がいずれも+9〜11ptです。「社員を育てる環境がない」(23.3%)が圏外から8位に入ったのも40代だけ。会社の中で最も長く働いてきた層が、最も会社に失望していると読めます。40代のベンチャー転職の実態は40代のベンチャー転職は遅い?を参照してください。

50代:「倒産/リストラ/契約満了」「離職率が高い」が新たにランクイン

50代は「倒産/リストラ/契約期間満了」(20.3%)が6位、「離職率が高い」(16.6%)が10位に入っています。自発的な理由だけでなく、会社側の事情で動かざるを得ないケースが増えている年代です。役職定年や早期退職募集の実態は50代の転職完全ガイド役職定年とは?で詳しく解説しています。年代ごとの戦略全体は年齢別転職ガイドにまとめています。

男女別ランキング——女性は「労働時間」35.8%、男性は「スキルアップ」24.1%が2位

順位 男性 女性
1位 給与が低い 37.0% 給与が低い 36.1%
2位 スキルアップしたい 24.1%(10位→2位) 労働時間に不満 35.8%(+15.3pt)
3位 人間関係が悪い 22.5% 成果で評価されない 27.8%(圏外→3位)
4位 肉体的・精神的につらい 22.2% 尊敬できる人がいない 22.9%
5位 評価方法に不満 21.8% 社内の雰囲気が悪い 20.7%

出典:doda「転職理由ランキング2025年版」男女別

1位はどちらも給与ですが、2位以下が違います。男性は「スキルアップしたい」が10位から2位へ急上昇(15.1%→24.1%)。女性は「労働時間」が35.8%で、男性の19.2%とほぼ倍の差があります。厚労省の雇用動向調査でも、女性の離職理由で最も多いのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(12.8%)で、この傾向は一貫しています。女性がベンチャー転職で働き方をどう設計するかは女性のベンチャー・スタートアップ転職ガイドを参照してください。

4つの調査を横並びにする——どの調査でも1位は「給与」

転職理由の調査は各社が出しており、質問の仕方が違うので数字は一致しません。ただ、どの調査でも1位は「給与」です。主要4調査を比較します。

調査 対象 1位 2位 3位
doda 転職理由ランキング2025年版(2026年2月発表) 正社員978人(転職意向者含む) 給与が低い・昇給が見込めない 36.6% 労働時間に不満 26.3% 個人の成果で評価されない 22.8%
マイナビ 転職動向調査2026年版(2025年実績) 2025年に転職した正社員1,446人 給与が低かった 23.2% 仕事内容に不満があった 21.0% 職場の人間関係が悪かった 20.0%
エン転職「転職を考え始めたきっかけ」(2025年) エン転職ユーザー3,107人 給与が低い・昇給が見込めない 44% やりがい・達成感がない 32%
厚労省 令和6年雇用動向調査(2024年) 転職入職者(全国の事業所調査) 男性:給料等収入が少なかった 10.1%
女性:労働時間・休日等の労働条件 12.8%
男性:職場の人間関係 9.0%
女性:職場の人間関係 11.7%
男性:労働時間・休日等 8.6%
女性:給料等収入 8.3%

※厚労省調査は単一回答で「その他の個人的理由」「定年・契約期間の満了」を除いた順位。dodaとマイナビの数字の差は、dodaが「転職を考えている人」を含む複数回答、マイナビが「実際に転職した人」の回答であることによる。

注目したいのは、マイナビ調査で「今後の昇進や昇給が見込めない」が15.4%(前年比+1.5pt)で、30代・50代では約4pt増えていること。doda調査の「成果で評価されない」の急上昇と合わせて、「今の給与」だけでなく「これからの伸びしろ」への不満が2026年の転職動機の中心になっています。

厚労省データで見る「転職して給与は上がったのか」

転職理由の1位が給与なら、実際に転職して給与は上がるのか。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」の転職入職者の賃金変動状況を見ると、答えは「上がる人のほうが多い」です。

年齢 増加 うち1割以上増加 変わらない 減少 増加−減少
全体 40.5% 29.4% 28.4% 29.4% +11.1pt
20〜24歳 50.5% 38.5% 31.5% 16.8% +33.7pt
25〜29歳 46.3% 37.9% 23.1% 29.2% +17.1pt
30〜34歳 46.1% 36.0% 29.1% 24.2% +21.9pt
35〜39歳 45.5% 35.3% 28.0% 24.3% +21.2pt
40〜44歳 45.9% 33.2% 23.7% 29.0% +16.9pt
45〜49歳 46.4% 29.1% 26.9% 23.8% +22.6pt
50〜54歳 39.0% 26.3% 31.7% 28.2% +10.8pt
55〜59歳 27.4% 17.3% 33.6% 36.6% -9.2pt

出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」転職入職者の賃金変動状況(2024年、前職雇用者で調査時在籍者)

2024年に転職した人のうち、賃金が「増加」した人は40.5%で、前年から3.3pt上昇。「1割以上の増加」は29.4%です。「減少」は29.4%で3.0pt低下。増加が減少を11.1pt上回っており、これは過去10年で最も大きな差です(2015年時点では増加35.6%・減少33.5%でほぼ拮抗)。マイナビの調査でも、2025年に転職した人の平均年収は転職前514.5万円→転職後533.7万円(+19.2万円)で、30代は+32.4万円と最も大きく増えています。

ただし、55歳以上は減少が増加を上回ります。「給与が低い」を理由に50代後半で転職する場合は、年収を上げにいく転職ではなく、年収を維持しつつ働く期間を延ばす転職として設計するのが現実的です。年収の考え方全般は年収・手取りガイド、交渉の具体策は年収交渉の方法と注意点を参照してください。

本音と建前——本当の転職理由を上司に伝えた人は47.0%

ランキングの数字は「本音」です。しかし、実際に会社に伝えている理由は違います。dodaが20〜30代の転職者298人に行った「退職理由・交渉のホンネ調査」では、本当の退職理由を上司に伝えた人は47.0%、人事担当者に伝えた人は35.9%。半数以上が本音を言わずに辞めています。エン・ジャパンが転職コンサルタント118人に聞いた調査でも、「転職者の2人に1人は本当の理由を企業に伝えていない」と回答したコンサルタントが多数でした。

私の実感でも、退職時に「一身上の都合」「家庭の事情」「やりたいことが見つかった」と言って辞めた人の本音は、8割がた「給与」「上司」「評価」のどれかです。これは悪いことではありません。辞める会社に本音を言っても得るものは少なく、円満に去るほうが後々のリファレンスにも効きます。

問題は、転職先の面接でも建前で通そうとすることです。面接官は転職理由のプロで、「一身上の都合」で通る中途面接はありません。建前をそのまま言えば「本音を隠す人」と見られ、本音をそのまま言えば「不満で動く人」と見られる。必要なのは、本音を「次の会社で実現したいこと」に変換することです。

転職理由TOP10の「面接での言い換え表」

本音(ランキング項目) NGな伝え方 OKな伝え方の型
給与が低い・昇給が見込めない 「給料が安いので」 「成果に応じた報酬体系の会社で、〇〇の実績を評価軸に乗せたい」+実績の数字
労働時間に不満 「残業が多くて」 「生産性で評価される環境で、限られた時間で成果を最大化する働き方をしたい」
個人の成果で評価されない 「頑張っても評価されない」 「個人の成果が明確に評価される仕組みの会社で、〇〇を実現したい」+具体的な成果
尊敬できる人がいない 「上司が尊敬できない」 「〇〇の領域で自分より先を行く人と働き、△△のスキルを伸ばしたい」
社内の雰囲気が悪い/人間関係 「人間関係が悪い」 「チームで成果を出す文化の会社に行きたい」+自分がチームに貢献した具体例
会社の評価方法に不満 「評価制度が納得できない」 「事業への貢献が直接見える規模・フェーズの会社で働きたい」
肉体的または精神的につらい 「体調を崩したので」 「持続的に成果を出せる環境を選び直したい」+現在は問題なく働ける旨
業界・会社の先行きが不安 「業界が斜陽で」 「〇〇という成長市場で、自分の△△の経験を活かしたい」
昇進・キャリアアップが望めない 「上が詰まっていて」 「〇年後に△△のポジションを担いたい。そのために□□の経験を積みたい」
スキルアップしたい 「勉強させてほしい」 「〇〇のスキルを、△△の事業に貢献する形で伸ばしたい」(学ぶ側ではなく貢献側の言い方)

共通する型は「不満(過去)」ではなく「実現したいこと(未来)」+「そのための根拠(実績)」で語ることです。具体的なNG例と回答例は面接でネガティブな退職理由を伝える方法、志望動機との接続は転職の志望動機完全ガイドで詳しく解説しています。

転職理由によって、転職後の満足度は変わる

エン・ジャパンの転職コンサルタント調査で興味深いのは、「転職理由によって転職後の満足度に差が出る」と答えたコンサルタントが8割を超えたことです。満足度が低くなりやすい理由は「上司と合わない」42%、「職場の人間関係が合わない」40%。人間関係を理由に転職した人は、転職先でも人間関係でつまずきやすい。一方、「やりたい仕事がある」「スキルアップしたい」「事業の成長に関わりたい」で動いた人は満足度が高い傾向です。

これは私の経験とも一致します。1,000人以上の転職を見てきて、「〇〇から逃げる転職」は次でも同じ壁にぶつかり、「〇〇を取りにいく転職」は多少の環境の悪さがあっても乗り越えます。転職理由が人間関係の場合は、「その人間関係の何が問題だったのか」(評価の不公平か、コミュニケーションのスタイルか、組織の構造か)まで分解して、構造として解決できる転職先を選ぶことが重要です。

「評価されない」「尊敬できる人がいない」はベンチャー・スタートアップへの追い風

8年前にこの記事で「ベンチャーに追い風」と書いた理由は「スキルアップ系の理由が増えたから」でした。2026年版のランキングを見ると、追い風はむしろ強くなっています。ただし、逆風になる項目もあります。正直に両方書きます。

転職理由 ベンチャー・スタートアップで解消されるか 理由
個人の成果で評価されない(3位) ◎ 解消されやすい 人数が少なく、誰が何をやったかが経営者に直接見える。年功で決まる余地がない
尊敬できる人がいない(4位) ◎ 解消されやすい 創業者・CxOと日常的に働ける。ただし経営者の質を見極める必要あり
スキルアップしたい(10位) ◎ 解消されやすい 担当範囲が広く、意思決定の場数が圧倒的に多い
昇進・キャリアアップが望めない(10位) ○ 解消されやすい 組織拡大に伴いポストが生まれる。入社2〜3年で部長・執行役員は珍しくない
会社の評価方法に不満(7位) ○ 解消されやすい 評価制度がシンプルで、事業貢献との連動が強い。制度未整備のリスクはある
給与が低い・昇給が見込めない(1位) △ 会社とフェーズによる シリーズB以降の資金調達済み企業なら大手と同等以上も可能。アーリーは一時的に下がることが多く、SOで補う設計になる
業界・会社の先行きが不安(9位) △ 業界による 成長市場のスタートアップなら解消。ただし会社単体の倒産リスクは大手より高い
労働時間に不満(2位) × 悪化することもある 裁量は大きいが、事業の立ち上げ期は労働時間が長くなりやすい。「時間を減らしたい」が第一理由なら向かない
肉体的または精神的につらい(8位) × 慎重に 変化が激しく不確実性が高い。回復を優先すべき時期にベンチャーは勧めない

特に「個人の成果で評価されない」が3位に急浮上したことは、ベンチャー・スタートアップにとって大きな追い風です。成果で評価されたい人にとって、社員30人の会社で自分の成果が売上の何%かが見える環境は、大手では得られません。私が2026年に面談で「ベンチャーが向いている」と判断する最大のシグナルは、「評価されない」という不満を具体的な成果の数字とセットで語れるかです。

逆に、「労働時間」が第一理由の人には、私は率直にベンチャーを勧めません。成長フェーズのスタートアップで残業がゼロになることはまずない。ベンチャー転職のリアルなメリット・デメリットはベンチャー転職のメリット・デメリット、失敗のパターンはベンチャー転職 失敗・後悔ガイドを必ず読んでから判断してください。年収面の現実はスタートアップ転職で年収は下がる?にまとめています。

転職理由をキャリア戦略に変える5ステップ

ランキングを眺めるだけでは転職は成功しません。自分の転職理由を「戦略」に変える手順を5ステップで示します。

ステップ1:転職理由を3つまで書き出し、ランキングに位置づける

不満は1つではないはずです。「給与」「評価」「上司」のように3つまで書き、上のランキングの項目に当てはめます。3つのうち「これが解消されなければ転職する意味がない」という1つに丸をつける。これが軸です。

ステップ2:「逃げる理由」か「取りにいく理由」かを判定する

「〇〇が嫌だから」は逃げる理由、「〇〇を得たいから」は取りにいく理由です。逃げる理由しかない場合、いったん「その不満が解消された状態」を言語化してください。「評価されない」→「自分の成果が四半期ごとに報酬に反映される状態」のように。これができると取りにいく理由に変わります。

ステップ3:今の会社で解消できないかを1回だけ試す

給与・評価・配属の不満は、転職しなくても解消されることがあります。上司や人事に一度は正面から相談する。それで変わらなければ、転職理由としての説得力が増します。面接で「社内で〇〇を試みたが構造的に難しかった」と言えるのは強い。ただし、退職を告げた後の引き止め(カウンターオファー)で残るのは別問題です。これはカウンターオファーを受けるべきかで詳しく書きました。

ステップ4:転職理由から「転職先の条件」を逆算する

「成果で評価されたい」なら、評価制度と昇給実績を面接で聞ける会社。「尊敬できる人と働きたい」なら、経営陣の経歴とカジュアル面談で会える会社。「給与」なら、資金調達状況と給与テーブルを開示できる会社。転職理由ごとに確認すべき質問を用意し、それに答えられない会社は候補から外します。

ステップ5:本音を「未来形」に変換して面接に臨む

上の言い換え表を使って、本音を「実現したいこと+根拠」に変えます。ここまでできていれば、転職理由は面接の弱点ではなく、志望動機と一貫した最強の武器になります。転職活動全体の進め方は転職に成功するコツ完全ガイドを参照してください。

転職理由別・向いている転職先と向いていない転職先

転職理由 向いている転職先 向いていない転職先
給与が低い 成長産業の中堅〜大手、資金調達済みのレイターステージ、外資、成果連動の営業職 アーリーステージのスタートアップ(現金給与は下がりやすい)、斜陽産業の大手
労働時間に不満 労働時間を開示し実績がある大手・メガベンチャー、リモート前提の企業 立ち上げ期のスタートアップ、コンサル、投資銀行
成果で評価されない スタートアップ、メガベンチャー、成果主義の外資 年功序列の残るJTC、公的機関
尊敬できる人がいない 経営陣の経歴が公開されているスタートアップ、業界トップ企業 経営者に会わずに入れる規模の会社
先行きが不安 成長市場(AI・SaaS・ヘルスケア等)の企業。詳細はこれから伸びる業界11選 同じ業界の同規模の競合(不安は解消されない)
スキルアップしたい 担当範囲が広いスタートアップ、専門性を深められる専門企業 分業が進んだ大企業の同じ職種

年代別アドバイス——転職理由の「使い方」は年代で変わる

20代:「労働時間」「評価」を理由に動くなら、次で「何を得るか」を明確に

20代の転職理由は「労働時間」と「評価」が突出しています。動くこと自体は正しい。ただ、面接では「残業が嫌」ではなく「限られた時間で〇〇の成果を出した、それを評価する会社で働きたい」と言えるかが分かれ目です。第二新卒〜20代後半は転職で賃金が増える割合が46〜50%と最も高く、動くなら今です。短期離職への不安は短期離職しても転職できる?を参照してください。

30代:「尊敬できる人」「スキルアップ」は転職の正当な理由。ただし年収は妥協しない

30代は転職で年収が最も上がる年代(マイナビ調査で+32.4万円、厚労省で増加46%)。「スキルアップしたい」を理由にする場合でも、年収を下げてまで行く必要はありません。「学ぶために年収を下げる」のは20代までで、30代は「貢献するから年収を維持・向上させる」交渉が可能です。

40代:「社内の雰囲気」「先行き不安」で動くなら、マネジメント実績を軸に

40代は全項目の不満が上がっている年代です。会社への失望から動く場合、面接では「失望」を一切出さず、マネジメント実績と事業成果で語ります。40代は「何ができるか」より「何を任せられるか」で採用される。CxO・幹部ポジションを狙うならCXO転職ガイドを参照してください。

50代:「リストラ」「離職率」など会社都合の理由は隠さず、次の10年の設計を語る

50代は会社都合の理由が上位に入ります。これは隠す必要がありません。むしろ「役職定年で〇〇の役割から外れたが、△△の経験を必要とする会社で10年働きたい」と設計を語れる人が採用されます。年収は「維持」が現実的な目標です。

転職理由で失敗する7つのパターン

  1. 「給与が低い」だけで動き、次も給与テーブルを確認せずに入る。1年後に「思ったより上がらない」となる。対策:オファー面談で昇給実績と評価制度を必ず聞く。
  2. 人間関係が理由なのに、人間関係の何が問題だったかを分解していない。転職先でも同じタイプの上司にあたる。対策:「評価の不公平」「マイクロマネジメント」「価値観の相違」のどれかまで特定する。
  3. 「労働時間を減らしたい」が本音なのにスタートアップに行く。裁量は増えるが時間は減らない。対策:労働時間が第一理由ならフェーズと業種を選ぶ。
  4. 面接で建前の転職理由を言い、志望動機と矛盾する。「一身上の都合」と「御社で成長したい」はつながらない。対策:本音を未来形に変換する。
  5. 「先行きが不安」で同じ業界の同規模の競合に移る。不安の原因は解消されない。対策:業界ごと変えるか、業界内でも成長領域に移る。
  6. 転職理由を上司に本音で言い、退職交渉がこじれる。本音を言わない53%は正しい面もある。対策:会社には「前向きな理由」で円満に、面接では「変換した本音」で。
  7. 「尊敬できる人がいない」で動いたのに、転職先の経営者に会わずに入社する。入ってみたら同じだった。対策:カジュアル面談や最終面接で経営者と必ず話す。

失敗を繰り返さないためのチェックリストはベンチャー転職が失敗に終わる人の共通点、転職回数への不安は転職回数が多いと不利?を参照してください。

転職理由ランキングに関するFAQ

Q1. 転職理由ランキングの1位は何ですか?

doda「転職理由ランキング2025年版」(2026年2月発表)の総合1位は「給与が低い・昇給が見込めない」で36.6%。2021年から5年連続の1位です。マイナビ、エン転職、厚労省(男性)の調査でも1位は給与です。

Q2. 転職理由ランキングで最近急上昇した項目は?

「個人の成果で評価されない」が前回18位(10.9%)から3位(22.8%)に上がりました。20代では40.7%で2位、女性でも27.8%で3位です。「頑張りが報酬に反映されない」という不満が転職動機として定着しつつあります。

Q3. 20代の転職理由1位は?

「労働時間に不満(残業が多い/休日出勤がある)」で44.6%。前回の27.5%から17.1pt上がり、他の年代(30代以上はすべて給与が1位)と明確に異なります。

Q4. 転職理由は本音で言うべきですか?

辞める会社には円満退職を優先して本音を言わない人が多く(本当の理由を上司に伝えた人は47.0%)、それは問題ありません。転職先の面接では、本音を「実現したいこと」に変換して伝えます。嘘は必要ありませんが、不満をそのまま言う必要もありません。

Q5. 「給与が低い」を面接で転職理由にしていいですか?

言い方次第です。「給料が安いので」はNG。「成果に応じた報酬体系の会社で、〇〇の実績を評価軸に乗せたい」と実績の数字を添えれば、むしろ成果志向として評価されます。

Q6. 転職すると本当に給与は上がりますか?

厚労省の令和6年雇用動向調査では、転職で賃金が「増加」した人は40.5%、「減少」は29.4%で、増加が11.1pt上回っています。20〜40代は増加が45〜50%。ただし55歳以上は減少が上回ります。

Q7. 人間関係を理由に転職しても大丈夫ですか?

転職理由としては一般的(総合6位、20.2%)ですが、転職コンサルタント調査では「上司と合わない」「人間関係が合わない」を理由にした転職は転職後の満足度が低くなりやすいという結果が出ています。人間関係の何が問題だったかを分解し、構造的に解決できる転職先を選ぶことが重要です。

Q8. 転職理由が複数ある場合、面接ではどう伝えますか?

1つに絞ります。複数並べると「不満が多い人」に見えます。「これが解消されなければ転職する意味がない」という軸を1つ選び、それを未来形で語り、他の理由は聞かれたら補足する程度にします。

Q9. 「尊敬できる人がいない」を理由に転職するのはワガママですか?

ワガママではありません。総合4位(20.9%)、30代では2位の一般的な理由です。ただし面接では「上司が尊敬できない」ではなく「〇〇の領域で自分より先を行く人と働きたい」と言い換えます。そしてその転職先の経営者・上司に、入社前に必ず会ってください。

Q10. 転職理由がベンチャー向きかどうかはどう判断しますか?

「成果で評価されたい」「経営に近いところで働きたい」「スキルアップしたい」「昇進の機会がほしい」が第一理由ならベンチャー向き。「労働時間を減らしたい」「安定した給与がほしい」「精神的に休みたい」が第一理由なら、少なくとも今はベンチャー向きではありません。

まとめ——転職理由は「不満のリスト」ではなく「次の会社の条件」

2026年の転職理由ランキングは、1位「給与」36.6%、2位「労働時間」26.3%、3位「成果で評価されない」22.8%。8年前の1位「やりたい仕事がある」の時代から、「待遇と評価の納得感」で動く時代に変わりました。20代は労働時間と評価、30代は尊敬できる人とスキルアップ、40代は会社への失望、50代は会社都合——年代ごとに転職理由の顔ぶれは違います。

そして、転職して賃金が上がった人は40.5%で過去10年で最も多く、「評価されない」「尊敬できる人がいない」「スキルアップしたい」という理由は、ベンチャー・スタートアップで解消されやすい。8年前に書いた「ベンチャーに追い風」は、2026年にはさらに強い追い風になっています。ただし「労働時間」が第一理由なら、私はベンチャーを勧めません。

大事なのは、ランキングの中に自分を位置づけて、「この不満はどこに行けば構造的に解消されるのか」を考えることです。転職理由は不満のリストではなく、次の会社を選ぶ条件表です。

キープレイヤーズでは、「転職理由がまだ整理できていない」という段階から、理由の分解、転職先の条件の逆算、面接での伝え方、条件交渉まで一緒に設計しています。ベンチャー・スタートアップが本当に向いているかどうかも率直にお伝えしますので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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