自分の市場価値とは?測り方と高め方の完全ガイド【2026年最新】社内価値とのズレ・4ステップ診断・年代別戦略を高野秀敏が徹底解説

執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、キープレイヤーズの高野です。ヘッドハンター・転職エージェントとして27年、のべ数千名のキャリア相談に乗ってきました。

「自分の市場価値って、いくらくらいなんでしょうか」——面談の冒頭で、これを聞かれない月はありません。25年前からずっと同じです。そしてこの質問に対する私の答えは、いつも同じ順番で始まります。「いま会社からもらっている年収は、市場価値ではありません」

厳しい言い方に聞こえるかもしれませんが、これは上下どちらにも振れる話です。年収700万円の方の市場価値が400万円だったこともあれば、年収500万円の方に1,200万円のオファーが出たこともある。社内での評価と市場での評価は、そもそも測っている物差しが違うのです。

総務省の労働力調査によれば、2025年の転職等希望者は1,023万人と前年から23万人増えて2年ぶりの増加となった一方、実際に転職した人は330万人と1万人減り、4年ぶりの減少でした(2026年2月13日公表)。「動きたい人」は増え続け、「動いた人」は減っている。この差の多くは、自分の市場価値がわからないまま止まっている人だと私は見ています。

この記事では、市場価値の正体を構造から分解し、実際に測る4ステップ診断ツールの使い分けと限界高めるための6つの打ち手、そして私が現場で何度も見てきた7つの失敗パターンまでまとめました。金額に換算した先の話は年収・手取りガイド、年代ごとの動き方は年齢別転職ガイドにまとめてあります。

目次

結論:市場価値は「4つの掛け算」で決まる

# 要素 問われること 効きやすい年代 変えやすさ
1 技術資産(できること) 職種としての専門性・再現性のあるスキル 20代〜30代 中(1〜3年)
2 実績(出した結果) 数字で語れる成果と、その成果の再現条件 全年代 中(半年〜2年)
3 希少性(他にいない度) スキルの組み合わせ・経験のレア度 30代〜50代 低(3年〜)
4 市場性(その椅子の需給) いまその経験を欲しがっている会社が何社あるか 全年代 高(移るだけで変わる)

この4つは足し算ではなく掛け算です。だからどれか1つがゼロに近いと、他が高くても全体が伸びません。逆に言えば、いちばん低い要素を1つ引き上げるのが、市場価値を上げる最短ルートになります。

そして4つのなかでいちばん動かしやすいのは4番の市場性です。スキルも実績も一切変えずに、需要のある場所へ移るだけで市場価値は変わる。逆に、縮んでいる市場で1〜3をどれだけ磨いても、値段はつきにくい。この構造を先に理解しておくと、この後の話がすべて繋がります。

データで見る、2026年の「市場価値」の相場観

指標 数値 出典・時点 読み解き
転職等希望者 1,023万人(+23万人) 総務省 労働力調査/2025年平均 2年ぶりの増加。母集団は過去最大級
実際に転職した人 330万人(−1万人) 同上 4年ぶりの減少。希望と実行の差が広がった
転職して賃金が「増加」した人 40.5% 厚労省 雇用動向調査/2024年 前年比+3.3ポイント。「減少」は29.4%
同(直近) 39.4% 同/2025年上半期 前年同期比−0.6ポイントで高止まり
一般労働者の賃金月額 34万600円(過去最高) 厚労省 賃金構造基本統計調査/令和7年 男女差は過去最少
男性の賃金ピーク年齢 55〜59歳で44万5,600円 同上 その後は下降。60代前半で大きく落ちる

この表でいちばん重く受け止めてほしいのは、転職して賃金が増えた人は4割で、3割は減っているという事実です。「転職=年収アップ」ではありません。上がった4割と下がった3割を分けているものが、まさに市場価値の理解度です。自分の値段を知らないまま動いた人が、下の3割に入りやすい。

もう1つ。男性の賃金ピークが55〜59歳で、その後は下降するというカーブは、市場価値を考えるうえで決定的に重要です。多くの日本企業の給与テーブルは、後半で伸びが止まるどころか下がる設計になっている。50代で「いまの年収が自分の実力」と思い込んでいると、社外に出た瞬間に評価が合わなくなるのは、この構造が原因です。

社内価値と市場価値は、まったく別のものである

同じ実績が、社内と社外でこう読まれる

ここが本題です。私が27年やってきて、最も多くの方が誤解しているのがこの点です。具体例で説明します。

ある営業職の方の実績が、こうだったとします。

  • 年収600万円
  • 年間販売高2億円、粗利8,000万円、取引先数15社

社内では文句なしの評価でしょう。ところが採用側の人事や事業責任者は、この数字を見て真っ先にこう考えます

  • もともとあった優良かつ安定的な取引先を、引き継いだだけではないか
  • 自社の商材がすでに市場で不可欠な地位を築いているから売れているのではないか
  • この人が別の会社の別の商材を持って、同じ数字を出せるのか

採用側が知りたいのは「いくら売ったか」ではなく「なぜ売れたか」、そして「その理由はうちでも成り立つか」です。これが再現性という言葉の中身です。同じ2億円でも、既存顧客の深耕で積み上げた2億円と、新規開拓でゼロから作った2億円では、市場での値札がまったく違います。

職種別:社内価値になりやすいもの/市場価値になるもの

職種 社内価値になりやすい(持ち出せない) 市場価値になる(持ち出せる)
営業 既存顧客の引き継ぎ実績、社内の根回し力、自社商材の深い知識 法人の新規開拓実績、競合の多い市場での勝率、営業組織のマネジメント実績
エンジニア 自社独自フレームワークの習熟、レガシー社内システムの仕様知識 技術選定の意思決定経験、OSSコミット・登壇、負荷や規模を伴う設計経験
管理部門(経理・人事・法務) 自社の稟議ルート、社内規程の運用ノウハウ 制度をゼロから作った経験、上場・監査・M&Aなどイベント対応の経験
企画・マーケ 社内調整で通した企画本数 予算規模と成果の因果、チャネル横断の再現性、失敗の言語化
マネジメント その組織文化の中でのまとめ役としての信頼 採用・育成・撤退判断の実績、組織を作り替えた経験

誤解してほしくないのですが、左側の列は「価値がない」のではありません。むしろ社内で成果を出すには不可欠です。ただし会社を出た瞬間に値札がつかない、というだけの話です。左側だけで年収が上がってきた方ほど、社外の評価とのギャップが大きくなります。

人脈は、市場価値としてきちんと値札がつく

意外に見落とされがちですが、人脈は市場価値そのものです。ただし条件があります。ここでいう人脈とは、いまの会社の肩書きを外しても付き合える人のことです。名刺交換した数ではありません。

エンジニアであれば、OSSのコミッター経験があったり、勉強会を主宰していたりする方は、自分のスキルに加えて相談できるブレーンが周囲にいることが推測でき、高く評価されます。法務であれば、国際法務の部署にいながら実務経験はなくても、自分の名前で国際法務の法律事務所にすぐ話を通せる人なら、未経験というデメリットをカバーできる可能性があります。

採用側から見ると、人脈のある人を採ることは「その人の後ろにいる人たちにアクセスできる」ことを意味します。だから値段がつく。特に経営幹部クラスではこの比重が非常に大きくなります。詳しくはCXO転職ガイドにまとめました。

自分の市場価値を測る4ステップ

ステップ1:実績を「数字+条件」の形に棚卸しする

まず、直近5年の実績を書き出します。このとき数字だけを書いても意味がありません。必ず「条件」とセットで書いてください

  • 悪い例:売上2億円を達成した
  • 良い例:競合5社が入札する市場で、新規開拓比率6割・平均商談期間4か月の条件下で、年間2億円(粗利8,000万円)を達成。前任者比1.4倍

この差が、そのまま値段の差になります。条件が書けない実績は、採用側から見ると「たまたま」に見える。逆に条件を書けると、採用側は自社に置き換えて計算できるようになります。書き方の型はわかりやすい履歴書・職務経歴書の作り方に整理しています。

ステップ2:客観的な相場データに当てる

次に、外部データで相場を当てます。ここは無料でかなりのところまで分かります。

  • 上場企業の有価証券報告書——従業員の平均年間給与と平均年齢が必ず開示されています。企業名+「有価証券報告書」で検索すれば誰でも見られます
  • 賃金構造基本統計調査(厚労省)——職種別・年齢別・企業規模別の賃金が公開されています。令和7年調査で一般労働者の賃金月額は34万600円と過去最高
  • 求人票の提示レンジ——同職種・同等級の募集を20件も見れば、レンジの上限と下限が体感で掴めます

ここで大事なのは、平均年収は必ず平均年齢とセットで見ることです。平均年収800万円でも平均年齢48歳の会社なら、30代の実額は600万円台であることが普通にあります。

ステップ3:第三者の評価に当てる(ここを飛ばさない)

データだけでは、自分の実績がその相場のどこに位置するかが分かりません。ここで第三者を使います。手段は3つです。

  • 診断ツール——15分〜30分。手軽だが精度は粗い
  • スカウトの実オファー——実際に届いた提示額は、最も信頼できる一次情報
  • エージェントとの面談——最も精度が高いが、担当者の質に大きく左右される

私が強くおすすめするのはスカウトの実オファーです。なぜなら、実際にお金を出す意思がある人が付けた値段だから。診断ツールの想定年収とは情報の重みがまったく違います。転職する気がなくても、スカウト媒体に登録して半年間の提示額を眺めるだけで、自分の相場は相当わかります。

ステップ4:ズレの「向き」を読む

最後に、社内価値と市場価値のズレを読みます。ズレには2つの向きがあり、取るべき行動は正反対です。

ズレの向き よくある原因 取るべき行動
市場価値 > 社内価値
(市場のほうが高い)
給与テーブルの上限/年功で頭打ち/伸びない業界にいる 動く価値が高い。ただし残留条件も必ず数字にしてから比較する
市場価値 < 社内価値
(社内のほうが高い)
社内固有スキルで年収が上がってきた/会社の看板の効果が大きい すぐ動かない。持ち出せる実績を1〜2年かけて作ってから動く

後者の方に「あなたはいま動かないほうがいい」と正直にお伝えすることが、私は年に何十回もあります。エージェントとしては転職していただいたほうが売上になりますが、それで相談者が損をするなら意味がありません。市場価値を測る目的は転職することではなく、動くべきか留まるべきかを事実で判断することです。

市場価値診断ツールの使い分けと、その限界

手段 所要時間 費用 分かること 限界
ミイダス 約15分 無料 想定年収、スカウト受信、思考の特性診断 同社に登録している企業の需要が母集団。職種によって精度に差
doda 年収・市場価値診断 約5〜15分 無料 大規模データに基づく適正年収、今後の年収推移の予測グラフ 統計的な平均に寄る。個別の実績の質は反映されにくい
ポータブルスキル見える化ツール(厚労省) 約15分 無料・登録不要 9つのポータブルスキルの強み弱み、活かせる職務・職位 年収は出ない。ミドルシニアのホワイトカラー向け設計
スカウト媒体の実オファー 登録後、継続的に 無料 実際の提示額・提示ポジション 母集団はその媒体を使う企業に限られる
エージェント面談 1〜1.5時間 無料 相場のどこに位置するか、具体的な打ち手 担当者の力量差が大きい。案件を売りたい動機も入る

率直に申し上げると、診断ツールの想定年収は「当たり」ではなく「目安」です。ツールは職種・年齢・経験年数といった属性から統計的に推定しているので、同じ属性なら誰でも似た数字が出ます。市場価値の本体である「実績の質」と「再現性」は、そもそもツールが読み取れる情報ではありません

ですから使い方はこうです。ツールで大まかなレンジを掴む(30分)→ スカウトの実オファーで補正する(数か月)→ エージェント面談で解釈する(1時間)。この順に精度が上がります。無料の30分から始めればいいので、まずやってみてください。エージェントの見極め方は転職エージェントの選び方 完全ガイドに詳しく書きました。職種別の相場感は人事の年収査定エンジニアの年収査定営業職の年収査定もあわせてどうぞ。

市場価値が高い人/低く見られてしまう人の共通点

市場価値が高い人の共通点 実力はあるのに低く見られる人の共通点
実績を「条件つきの数字」で語れる 実績を「頑張った」「大変だった」で語る
成功だけでなく失敗も言語化できている うまくいった話しかしない
スキルの掛け算がある(例:営業×SaaS×英語) 単一スキルのみで、他に代替がいる
需要が伸びている領域に身を置いている 縮む市場で相対評価だけを気にしている
肩書きを外しても続く社外の関係がある 人間関係が社内で完結している
自分の値段を定期的に外部で確認している 10年以上、社外の評価を受けていない

右側の最後の行、「10年以上、社外の評価を受けていない」が最も危険です。市場は毎年変わります。10年前に高値だったスキルが、いま同じ値段とは限らない。転職しなくても、2〜3年に一度は外の評価を受けておくことを、私はすべての方に強くおすすめしています。健康診断と同じで、悪くなってから受けるものではありません。

市場価値を高める6つの打ち手

1. 需要が伸びている場所へ移る(最も即効性がある)

4要素のうち市場性は、移るだけで変わります。同じスキル・同じ実績でも、業界が違えば値段は倍違う。これは能力の差ではなく、1人あたりが生む粗利の差です。どの領域が伸びているかはこれから伸びる業界・成長産業にまとめました。

2. スキルを掛け算にする(希少性をつくる)

1つの領域で上位1%になるのは大変ですが、上位20%を3つ持てば、単純計算で125人に1人の希少性になります。しかも掛け算のほうが現実的に到達しやすい。営業×SaaS×英語、経理×IPO準備×英文財務、エンジニア×採用といった組み合わせは、実際に高値がつきます。

3. 「ゼロから作った経験」を1つ持つ

運用より構築のほうが、市場では圧倒的に高く評価されます。制度を作った、チームを立ち上げた、新規事業をゼロから当てた——この種の経験は、会社が変わっても持ち出せます。いまの会社で手を挙げられる立ち上げ案件があるなら、多少しんどくても取りにいく価値があります。

4. 意思決定の経験を積む

やらないと決めた経験、撤退を判断した経験は、成功体験と同じかそれ以上に評価されます。特に管理職以上では、判断の質そのものが商品です。詳しくは管理職・マネージャーの転職完全ガイドを。

5. 社外に出て、名前で仕事が来る状態をつくる

登壇、執筆、コミュニティ運営、副業。肩書きを外したときに残る関係を、意識的に作る。いきなり大きなことをする必要はなく、社外の勉強会に月1回出るだけでも数年で変わります。副業・業務委託からの転職ガイドも参考にしてください。

6. 職務が値段を決める市場へ移る(ジョブ型)

ジョブ型では「誰が」ではなく「どの職務か」で報酬が決まるため、年齢や勤続年数による自動昇給が弱まり、職務の市場価値がそのまま年収になります。実力のある方には追い風です。仕組みはジョブ型雇用とは?転職者のための完全ガイドに整理しました。

市場価値を知ることのメリット・デメリット

メリット デメリット・注意点
動くか留まるかを、感情でなく事実で判断できる 思ったより低くて自信を失うことがある
年収交渉の根拠が持てる 高く出た数字を鵜呑みにして、強気になりすぎる
いま何を埋めるべきかが具体的に見える 短期的な市場の需給に振り回されやすくなる
会社が傾いたときの選択肢を事前に持てる 現職への不満が可視化され、モチベーションが落ちることがある
キャリアの意思決定が前倒しできる 数字だけを追い、やりたいことを見失うことがある

デメリット欄の1行目について、正直に書きます。測ってみたら想像より低かった、という結果は普通に起こります。ただ、それは「あなたの価値が低い」のではなく、「いまの持ち駒の並べ方では、この市場で高く見えない」というだけです。並べ方を変える、あるいは市場を変えれば数字は動きます。低い数字が出たときこそ、その中身を分解する意味があります。

いま市場価値を測るべき人・急がなくていい人

いま測るべき人 急がなくていい人(測っても行動は変えない)
同じ会社に5年以上いて、社外の評価を受けていない 直近1年以内に転職・スカウト面談を経験した
年収が3年以上ほぼ横ばい 来期の昇格・昇給がすでに内定している
会社や事業の先行きに不安がある いま担当している立ち上げ案件が佳境
40代以降で、今後の選択肢を確保しておきたい 資格取得や大型プロジェクトが半年以内に完了する
社内固有のスキルで年収が上がってきた自覚がある 育休・介護など、生活側の制約が大きい時期にある

右側の方は「測るな」ということではありません。測っても半年は行動が変わらないので、その半年で持ち駒を増やしてから測ったほうが、良い数字が出るというだけです。

私が現場で見てきた、市場価値の誤解と失敗パターン7つ

1. 現年収を市場価値だと思い込む

いちばん多い誤解です。現年収は「いまの会社の給与テーブルの、いまの等級の値段」でしかありません。市場価値とは別物です。上にも下にもズレます。

2. 「年収は下がってもいい」と言いながら、実は下限を持っている

「700万円だけど、勤務時間が短くなるなら600万円でもいい」とおっしゃる方。ところが実際の市場価値が400万円だった場合、この方は600万円の提示が出ないことに納得できません。下げる覚悟をする前に、まず実額を知ってください。順番が逆になっている方が本当に多い。

3. 「環境と上司が変われば、自分はもっとできる」と考える

気持ちはよく分かります。ただし転職して、自分が適切だと思える評価をしてくれる保証はどこにもありません。むしろ新しい環境では、慣れるまでのハンデがつきます。環境のせいにしている限り、市場価値の話は前に進みません。

4. 資格の数で測ろうとする

資格そのものに値段がつくのは、業務独占資格などごく一部です。市場が見ているのは資格ではなく、その資格を使って何をやったかの実績です。資格取得に1年かけるより、実務で使える経験を1つ作るほうが、ほとんどのケースで効率が良い。

5. 診断ツールの数字を、そのまま希望年収にする

ツールの想定年収は統計的な推定値です。それを根拠に面接で強気の希望額を出すと、根拠のない自己申告として扱われます。数字ではなく、その数字の裏づけとなる実績を語ってください。交渉の実技は年収交渉の進め方にまとめています。

6. 高く出た数字を信じて、短期間で何度も動く

市場価値が高いと分かると、動きたくなります。ただし2年ごとに動くと、5年後には「なぜこの人はどこにも定着しないのか」と問われる。上げ幅の合計より、選択肢が狭まるコストのほうが大きくなる分岐点があります。目安は転職回数が多いと不利?完全ガイドを。

7. 市場価値だけで会社を選び、続かない

相場より2割以上高い提示には、たいてい理由があります。1年半で辞めることになれば、その年収アップは帳消しどころかマイナスです。見極め方はベンチャー転職の失敗・後悔ガイドに整理しました。

年代別:市場価値との向き合い方

20代:値段より「値段が上がる場所」を選ぶ

20代の市場価値は、正直まだほとんど差がつきません。実績の蓄積が浅いからです。この年代で50万円の差を取りにいくより、30代で300万円差がつく職種・業界に入るほうが期待値は圧倒的に高い。市場価値を測る目的も、いまの値段の確認より「どこにいれば上がるか」の把握に置いてください。

30代:社内価値と市場価値のズレが最も大きくなる

実績が固まり、まだ職種転換の余地もある。この10年が、ズレを使って最も動かしやすい時期です。同時に、社内固有のスキルで評価されてきた方は、ここでズレが逆向きに開き始めます。30代前半のうちに一度測っておくことを強くおすすめします。

40代:希少性で勝負する年代に切り替わる

40代で未経験職種に移ると、多くの場合いったん下がります。この年代の市場価値は「できること」より「他にいないこと」で決まる。スキルの掛け算と、ゼロから作った経験がそのまま値段になります。40代のベンチャー・スタートアップ転職ガイドに具体例をまとめました。

50代:賃金カーブが下がる前提で設計する

統計上、男性の賃金は55〜59歳の44万5,600円をピークに下降します。50代の市場価値は「年収をいくら維持できるか」より「何歳まで働ける場所を確保できるか」で測ったほうが、生涯収入では合理的なことが多い。年収を1割下げても働ける期間が5年延びるなら、そちらが得です。50代の転職完全ガイドで詳しく整理しています。勤務先から早期・希望退職の募集が出たときの判断基準は、希望退職・早期退職に応じるべきか完全ガイドにまとめました。

よくある質問(FAQ)

Q1. 市場価値と年収は同じものですか?

いいえ。年収は市場価値が「金額として現れた結果の一部」にすぎません。同じ市場価値でも、業界の粗利構造や会社の給与テーブルで金額は変わります。逆に年収が高くても、それが会社の看板や年功で作られたものなら、市場価値としては値札がつきません。

Q2. 市場価値が低いと分かったら、転職はあきらめるべきですか?

まったく違います。低い数字は「いまの持ち駒の並べ方では、この市場で高く見えない」という情報にすぎません。並べ方を変える(実績の書き方)、市場を変える(業界・職種)、持ち駒を増やす(1〜2年の投資)。この3つで数字は動きます。むしろ低く出たときのほうが、打ち手が明確になります。

Q3. 診断ツールの結果はどれくらい信用できますか?

レンジの目安としては有用ですが、実績の質と再現性は反映されません。ツールは属性から統計的に推定しているため、同じ年齢・職種・経験年数なら誰でも似た数字が出ます。実際に届いたスカウトの提示額のほうが、はるかに信頼できる一次情報です。

Q4. 転職する気がなくても、市場価値は測るべきですか?

はい、強くおすすめします。健康診断と同じで、悪くなってから受けるものではありません。2〜3年に一度、外の評価を受けておく。会社が傾いたとき、家庭の事情が変わったとき、選択肢を持っている人と持っていない人の差は決定的です。

Q5. 大企業にいると市場価値は下がるのでしょうか?

会社の規模の問題ではなく、担っている役割が持ち出せるものかどうかの問題です。大企業でも、規模の大きい意思決定や仕組みの構築を担っていれば市場価値は高い。逆にベンチャーでも、社内の属人的な作業だけをしていれば持ち出せません。ただし大企業では分業が細かく、社内固有の仕事が増えやすいという構造的な傾向はあります。

Q6. 副業をすると市場価値は上がりますか?

上がることが多いです。理由は2つ。社外の基準で成果を求められるので、実績が持ち出せる形になること。そして肩書きなしで仕事が来るかどうかを実地で検証できることです。ただし本業がおろそかになれば逆効果です。副業・業務委託からの転職ガイドを参考にしてください。

Q7. コンサル出身は市場価値が高いと聞きますが本当ですか?

問題解決の型と資料化のスピードは、どこでも通用する強い持ち出し可能スキルです。一方で「提案はできるが、自分で実行してやり切った経験がない」と見られると、事業会社では値段が伸びません。実行と成果の当事者経験が1つあるかどうかで評価が大きく変わります。詳しくはコンサルからの転職ガイドを。

Q8. ベンチャーに移ると市場価値は上がりますか?

役割の幅が広がるので、上がりやすいのは事実です。ただしフェーズを間違えると、何でも屋になっただけで持ち出せる実績が残らないことがあります。何の責任者として入るのかを、入社前に文書で確認してください。全体像はベンチャー転職 完全ガイドにまとめました。

まとめ:値段を知らないまま、値段の交渉はできない

もう一度、市場価値の4要素を並べます。

  1. 技術資産——できること。職種としての専門性
  2. 実績——出した結果と、その結果が出た条件
  3. 希少性——他にいない度。掛け算で作れる
  4. 市場性——その椅子の需給。移るだけで変わる

そして測り方は4ステップ。実績を条件つきの数字に棚卸しし、外部データで相場を当て、第三者の評価に当て、ズレの向きを読む。ここまでやって初めて、動くべきか留まるべきかが事実で判断できます。

2025年の転職等希望者は1,023万人で2年ぶりに増加した一方、実際に転職した人は330万人と4年ぶりに減りました。動きたいのに動けない人が、これだけいる。その多くは、自分の値段を知らないから最初の一歩が踏み出せないのだと思います。

最後に、27年やってきて確信していることを1つだけ。市場価値は「あなたの偉さ」ではありません。いまの市場が、あなたの持ち駒にいくら払うかという、それだけの話です。だから低く出ても人格が否定されたわけではないし、高く出ても偉くなったわけではない。数字を冷静に情報として扱えた人から、キャリアの選択肢が広がっていきます。

キープレイヤーズでは、私自身が経営者と直接お会いしている企業を中心に、転職支援とキャリアのご相談を承っています。「自分の市場価値はいまいくらなのか」「上げるとしたら何を埋めるべきか」——こうした率直なご質問にこそ、27年分の相場観でお答えできると思います。転職するかどうか決めていない段階でも構いません。お気軽にご相談ください。

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東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、文部科学省アントレプレナーシップ推進大使。1万2000件以上のキャリア面談、4,000名以上の経営者と採用相談にのる。80社以上のエンジェル投資、投資して上場は9社。うち2社は役員として上場(クラウドワークス、メドレー)。178社以上の上場支援実績。顧問・社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数300回以上。「ベンチャーの作法」(ダイヤモンド社)5万部を超えるベストセラー

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